「どう責任を取るんですか?」会社の受付に怒鳴り込んできた“見慣れない男女”の衝撃の正体

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2026年05月08日 09:30  日刊SPA!

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※写真はイメージです(写真/Adobe Stock)
 入社式では希望に満ちた表情を見せていた新入社員が、わずか数日、あるいは1か月足らずで姿を消す。厚生労働省が2025年10月に公表したデータでは、2022年3月卒の大学新卒者の3年以内の離職率は33.8%。新卒の早期離職は、もはや珍しい現象ではない。
 その背景には、職場の人間関係や労働条件だけでなく、「思っていた仕事と違った」という配属ミスマッチもある。実際、マイナビの2024年の調査では、勤務地・配属先がともに希望通りだった新入社員は59.9%にとどまった。

 近年は“退職代行”が話題になる機会も多いが、もしも“親”が本人に代わって無茶な要求を通すべく、怒鳴り込みに来たら……。中堅の製造業企業に勤める佐藤晴香さん(仮名)が、強烈なエピソードを話してくれた。

◆会社の受付に見慣れない中年の男女が…

「この業界は、納期に対する責任が極めて重く、現場の泥臭い努力が利益に直結する、実直で厳しい気風が根付いています。仕事に派手さはありませんが、与えられた持ち場で成果を積み上げることを善とする、そんな文化が組織の隅々まで浸透しています」

 毎年春、総合職の新入社員たちがこの会社にやってくる。

「彼らはまず1か月間、座学を中心とした研修を受けます。その期間中、人事担当者は新入社員たちの適性を見極め、本人たちの希望もヒアリングしますが、会社組織である以上、部署ごとの受け入れ枠や欠員状況という現実的な制約があるので、希望が100%通るわけではありません。それが総合職としての前提であると、誰もが疑っていなかったんですが……」

 その年の新入社員の中に、スマートな身のこなしが印象的なA君という青年がいた。彼の志望は就職活動の頃から一貫して「企画職」だった。最新の市場動向を分析し、華やかな新規事業の立ち上げに携わりたいという熱意を、研修期間中も繰り返し語っていたという。

 しかし、研修を経て言い渡された配属先は「営業」だった。泥臭い交渉が求められる、現場密着型の仕事である。そして、その日を境に、A君は二度と会社に姿を現すことはなかった。

 翌日からパタリと連絡が途絶え、人事担当者が何度電話をしても繋がらない。「配属がショックだったのだろうか」と上司たちが困惑し始めて3日目のことだ。会社の受付に、見慣れない中年の男女が現れた。A君の両親である。

「うちの子は、企画の仕事をするためにこの会社を選んだんです! 営業に配属なんて、本人も親も納得できません!」
「企画の部署に枠がないなら、今すぐ作るのが企業の誠意では?」

 静まり返ったオフィスに、母親の甲高い声が響いた。横に立つ父親も腕を組んで人事担当者を威圧する。息子から「騙された。あんな会社にはもう行きたくない」と泣きつかれたのだと、大声でまくし立てた。

「あの子は将来を真剣に考えているんです。やりたくない仕事で心を病んだら、会社はどう責任を取るんですか?」

 人事担当者は、総合職採用の仕組みや、現場経験の重要性を懸命に説明した。だが、両親は聞く耳を持たなかった。その後、人事担当者と両親の間で話し合いの場が数度設けられた。しかし、A君本人が顔を出すことは最後までなかった。数日後、郵送で届いた退職届には、事務的な理由だけが記されていたという。

◆「会社で働く」ということの前提が崩れていく

 佐藤さんは、深い徒労感とともに、自分たちが信じてきた「会社で働く」ということの前提が崩れ去るのを感じたと語る。

「現場で揉まれてきた世代にとって、仕事とは与えられた場所で成果を出すことなのかなと。配属先が必ずしも希望通りでなくとも、そこでまずは結果を出す。新人にとって、それが『会社で働く』ということの出発点だと、我々は疑いなく信じてきたので。

 今の時代には、自分の理想と異なる現実を“親を動員してでも拒絶すべき悪”と捉える層が存在するのだと驚きました」

 就職活動の現場では「配属ガチャ」という言葉が広まっている。総合職として入社した場合、どの部署に配属されるかは、会社側の判断に委ねられる。まるでガチャを引くように、自分の望む配属先に当たるかどうかは、まさに運次第——。

 この感覚は、ある意味で理解できる。就職活動において企業はブランドや事業内容で学生を惹きつけるが、実際にどの職種、どの現場に配属されるのかは、入社後になってみないと分からないものだ。

 前出のマイナビの調査によれば、半数近くの新入社員は希望とは異なる場所でファーストキャリアを歩んでいる。配属ガチャについて、「まずは配属されたところでできる限り頑張ることが大切」「幅広い分野を経験できるのでメリットが大きい」などの声があったとか。

 しかしながら、A君のケースは、もはや別次元の話である。

「本人は交渉の場にも現れず、親が代わりに乗り込み、枠がないなら作れと要求する。それは自立した社会人として生きていく上でいかがなものかと思いました。歪んだ親子関係の象徴として、今も私の記憶に強く刻まれているエピソードです」

<構成/藤山ムツキ>

―[すぐに辞めた新入社員]―

【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

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