
ヤクルトが強い。ここまで(5月14日現在)多くの解説者による最下位予想を覆し、24勝15敗でセ・リーグ首位に立っている。結果だけでなく、試合内容も面白く、5月13日の阪神との首位攻防戦でも、8回裏に3点を奪って逆転勝ち。それは今季11度目の逆転勝利だった。
そうしてグラウンドで躍動する選手たちの姿を見ていると、昨年の松山秋季キャンプで池山隆寛監督が口にした言葉を思い出すのだった。
「チームの元気を取り戻さないことには、成績は上がりません。みんながそういう気持ちを持てば、チームはもっと元気になっていく。そのための雰囲気づくりこそ、監督1年目の自分の役割だと思っています。シーズンは山あり谷ありですが、大事な場面でどれだけ踏ん張れるかが重要になる。流れを変えるひと振りやプレーなど、そうした場面で目に見えない力を発揮してくれるのは、やはり元気だと思っています」
そこで快進撃を続けるスワローズの"元気の源"を探ってみた。
【快進撃を支える先発投手陣】
今シーズン、チームの勢いを支えているのが先発投手陣だ。昨年は試合序盤に複数失点を喫し、早い回でマウンドを降りるケースが目立った。しかし今年はしっかり試合をつくり、先発投手としての役割を果たしている。
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プロ6年目の山野太一は、すでに自己最多タイとなる5勝をマーク。先発陣の"元気"について聞くと、こんな答えが返ってきた。
「これまでは、みんなどこか一歩引いている感じがあったんですけど、今年はそれぞれが結果を出していることもあって、『次はオレが勝つ』みたいな、負けたくない意識がすごく強くなっています。チームとして先発陣の物足りなさを指摘され続けていたので、みんな今年に強い思いを持っているように見えます」
奥川恭伸にチームの雰囲気を聞くと、「去年ほど重くないです」と言った。4月18日の巨人戦で奥川は3失点したが、7回を投げきったことで、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。
「ピッチングとしては大反省でしたけど、今年は頑張って投げていれば、みんなが取り返してくれるという安心感があります。そういう意味で、元気が循環していると思いますし、みんなのテンションについていけるように頑張ります(笑)」
奥川自身、今シーズンはまだ1勝にとどまっているものの、「去年と違ってピッチングの内容はいいので、そこが元気の源になっていますね」と笑った。
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「フォームもそうですし、真っすぐがよくなったと感じています。それによって変化球が生きて、配球もうまくできている。この先、チームが苦しい時期を迎えるかもしれませんが、そういう時こそ力を発揮する、勝てるピッチャーになりたいと思います」
【新外国人が盛り上げるブルペン陣】
先発陣からバトンを受け継ぐリリーフ陣も、ヘスス・リランソ、ホセ・キハダといった新戦力の活躍もあり、活気にあふれている。
プロ2年目の廣澤優は、今季開幕前に育成選手から支配下登録を勝ち取った。最速159キロを誇る右腕は、「とにかく、ブルペンはリランソとキハダがめちゃくちゃ元気なんですよ(笑)」と教えてくれた。
「チームが劣勢の場面でも、率先して声を出してくれるんです。スペイン語なので、何を言っているのかわからないんですけど(笑)、その声が不思議と緊張感を和らげてくれるというか、自然とリラックスできる。みんないい雰囲気でマウンドに立てていると思います」
そのキハダは、「意識して声を出しているんだ」と明かした。
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「長年、野球選手としてプレーしてきた経験から言えば、どんな選手にも調子のいい日もあれば、悪い日もある。それでもプロである以上、求められる役割に応えなければいけない。だからこそ、ポジティブな言葉をかけたり、大きな声を出したりすることは、アメリカでもとても大事にされているんだ。自分も、チームのみんなにいい影響を与えられるように心がけているよ」
自身の元気の源については、次のように語った。
「神様が自分に与えてくれたものに感謝していますし、日本の平和さや治安のよさ、そして妻をはじめとする家族の支えが、今の好調につながっていると思います」
ここまでのキハダのピッチングは元気そのもので、14試合連続無失点を続け、12セーブをマーク。全投球の89.2%がストレートで、平均球速は150.1キロを記録している。
【いろんな元気が集まっている】
池山監督は「打ち勝つ野球」を旗印に掲げ、ここまで送りバントはわずか3個。本塁打は、主砲の村上宗隆(ホワイトソックス)がメジャー移籍で抜けたなかでもリーグ3位を記録し、盗塁数はリーグトップだ。
3月29日の横浜でのDeNA戦。チームは2点ビハインドの8回表に、宮本丈を代打に送り出した。
「あの時は『ただでは終わらないぞ』という空気をベンチから感じたんです。その雰囲気に背中を押されて、『これはいけるんじゃないか』と思いましたね」
宮本はレフト前安打で出塁すると、たたみかける攻撃で一挙5得点。開幕3連勝を飾り、チームは勢いに乗った。
「今は、逆転した経験がチームの自信になっていると思います。リードされても『まだいける』という感覚を持つ選手が増えたと思います。実際、塁に出るだけで、言葉では表せない空気感というか、相手にプレッシャーを与えているかどうかはわかりませんが、僕たちはそういう気持ちでやっています」
今季、1番を任されている長岡秀樹は攻守でチームの勝利に貢献。二軍の戸田球場で調整していた際には、自ら先頭に立って防護ネットを運ぶ姿も見られ、野球選手としてひと回り成長した印象を受けた。そんな若きリーダーの目に、チームの元気はどう映っているのだろうか。
「もちろん、元気があるから打てるとか、いいプレーができるというわけではありません。でも、活躍する選手って見た目から元気なタイプもいますし、クールに見えても内に強いものを秘めている選手もいる。そういう意味では、いろんな元気が集まって、チームは強くなれるんじゃないかと思います」
長岡に、個人としての"元気の源"を尋ねると、「パイナップルですね」と答えた。
「あれ以上、おいしい食べ物はないですね。1個買ってきて、切り方を調べながらタッパーいっぱいに詰めるんですけど、結局、一日で全部食べちゃいます(笑)」
赤羽由紘も「最初は元気がひとつ、ふたつくらいだったんですけど、今はどんどん増えてきた感じがあります」と話し、チーム全体に広がる勢いを実感している。
「劣勢の時も、今は『行くぞ』『この回で逆転するぞ』という声が、チーム全体から出ています。そういう雰囲気が逆転勝ちの多さにつながっているのかなと思いますし、僕たちが積極的にやっていけば、チーム全体の底上げにもなるはずです」
現在は、右脇腹の張りで二軍調整中の赤羽だが、「あの輪の中に戻って活躍したい」と語る。
「自分にとっては、オープン戦で結果が出ずに苦しんだ時間が元気の源です。あの経験があるので、それ以上に落ち込むことはないのかなって(笑)。ポジティブな気持ちになれています」
【下を向いている時間はない】
元気が新たな元気を生み出す好循環。その種火となっているのは、もちろん池山監督だ。武岡龍世は言う。
「やっぱり、監督とコーチだと思うんですよね。勝っても負けても『明日、明日』って、重い雰囲気がない感じがあります。(バントのサインが少ないことで)やるべきことがはっきりしているので、プレーもしやすいです。シンプルに思いきって打ちにいけるので。
僕自身の元気の源は練習です。自主トレから続けていることを毎日繰り返すだけだと思っていて、打てた日は『練習してきてよかった』と思いますし、ダメだった日は『また練習して頑張ろう』と」
前出の奥川、長岡、赤羽も「池山監督がチームに元気をくれます」と、口を揃える。
「勝っている時は当たり前ですが、ビハインドでも暗くならないのはさすがだなと。それに試合に負けた次の日も変わらないですし、そこは一貫しているので僕たちもやりやすいです」(奥川)
「楽しく野球をやりたいというのが、ほんとに伝わってくるんです。そのなかで壁を感じないというか、首脳陣を含めてみんながやりやすい環境をつくってくれています」(長岡)
「監督をはじめ、コーチの方が明るい雰囲気をつくってくれる。すごく背中を押してくれる感じがあります」(赤羽)
池山監督は、ベンチでうれしい時は素直に喜び、ピンチの場面では自らマウンドへ足を運んで的確な助言を送る。そして、投手がマウンドを降りる際には、その労をねぎらうように、やさしく肩を叩くこともある。池山監督は言う。
「まだシーズンの4分の1ほどですが、下を向いている時間はないと思っています。打てなかったり、ミスをしたりすると落ち込みがちになりますが、それをどう取り返すかがプロ野球選手にとって大事ですし、一流への道でもある。もちろん、ひとりの力だけで全員を前向きにすることはできません。だからこそ、選手たちが下を向かないように、コーチ陣にも『しっかり背中を押してあげてほしい』と伝えています」
これからチームが苦しい時期を迎えることもあるだろう。それでも、池山監督が生み出す"元気"の火種がある限り、ヤクルトは困難を乗り越えていくに違いない。
