命に関わる重篤な合併症リスクも……驚異的な感染力を持つ麻しん(はしか)のリスクと、取るべき対策法

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2026年06月01日 20:50  All About

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【医師が解説】1人の感染者から最大18人に広がる驚異的な感染力を持つ麻しん(はしか)。2026年はすでに昨年1年分の2倍超の感染者数を記録しています。重篤な合併症のリスクや、今なぜ感染が拡大しているのか、そして私たちが今すぐできる対策を分かりやすく解説します。(※画像:著者作成)
日本における麻しん(はしか)の流行状況2026 ⒸAKITANI METAL 無断転載を禁ズ

麻しん(はしか)が、日本国内のみならず世界的にも、急速な勢いで増加しています。ニュースで取り上げられても「不安をあおっているだけだろう」とあまり気にしていない方もいるかもしれません。しかし、そうした考えはすぐにやめましょう。

今回は、なぜこれほどまでに麻しんの感染が拡大しているのか、そして麻しんの本当の恐ろしさと私たちができる対策法について、最新のデータをもとに分かりやすく解説していきます。

トップクラスの感染力! 1人から12〜18人へ感染が拡大する麻しん

麻しんはさまざまな意味で注意すべき感染症ですが、なかでも特筆すべきはウイルスの驚異的な感染力です。感染症は、「感染源」「感染経路」「感受性宿主(かかりやすさ)」の三原則がそろって成立します。これらのどれか1つを取り除くことができれば、感染症は予防できます。

しかし麻しんは、数ある感染症の中でもトップクラスの感染力を持っています。1人の感染者が免疫のない人に感染させる人数の目安となる「基本再生産数(R0)」という数値がありますが、なんと12〜18です。1人の感染者から最大18人が感染するという意味です。

他の感染症を例にR0を挙げると、インフルエンザが1.2〜2。新型コロナウイルスでも2〜3です。恐れられた感染症と比べても格段に高い感染力ということが、お分かりいただけると思います。

麻しんの感染力がこれほど高い理由の1つが、飛沫感染や接触感染だけでなく「空気感染(飛沫核感染)」をすることです。どれほど広い場所でも、空間を共有しただけで感染する可能性があります。

家庭内などの密接な環境で、免疫のない人が感染者にさらされた場合には約90%が感染すると報告されています。

すれ違っただけでも感染する可能性があるうえ、換気の悪い室内やエレベーターなどの空間においては、感染者がその場から立ち去った後もウイルスが漂い、感染リスクが続いてしまうのです。

麻しんの症状と命に関わる重篤な合併症。「免疫で治る」と軽く考えてはいけない理由

「昔からある病気だから、かかっても自分の免疫で治るでしょう」と軽く考えるのは非常に危険です。麻しんは重篤な合併症を引き起こし、最悪の場合は命に関わることもある重大な感染症です。一般的な症状の経過とリスクを見てみましょう。

まず発症から1〜4日の「カタル期」には、38〜39度の発熱・鼻水・咳・結膜炎などが起こります。この時期が最も感染力が高いのですが、風邪と見分けがつきにくいのが厄介な点です。

続く発症から4〜5日の「発疹期」には、いったん熱が下がった後に再び40度前後の高熱が出るとともに、赤い発疹が顔から全身へと広がります。

さらに恐ろしいのが合併症のリスクです。免疫力が低下するため肺炎(麻しん肺炎)を合併して重症化しやすく、約1000人に1人の割合で脳炎(麻しん脳炎)を発症します。

また、感染から数年後に発症することもある致死的な脳炎「SSPE(亜急性硬化性全脳炎)」のリスクもあり、決して軽視できません。麻しんは数年にわたり後遺症が残る恐れがある感染症であることを、しっかりと認識しておく必要があります。

なぜ今、感染が拡大しているのか? 背景にあるワクチン接種率の低下と日本の現状

現在、日本国内でも麻しんは急速に広がっています。2024年の年間報告数は45例でしたが、2025年には265例となり、2026年は第18週(5月3日までの週)の時点ですでに462例に達しています。

たった4カ月ほどで、昨年1年間の2倍以上の感染者数となっているのです。海外からのウイルス流入に加え、東京都や愛知県など都市部を中心に成人(20歳以上)の感染流行も起きており、幅広い世代で注意が必要な状況です。

この感染拡大の大きな原因の1つが、「ワクチン接種率の低下」です。麻しんの流行を抑え込むには、社会全体のワクチン接種率を95%以上に維持することが必要といわれています。

日本では1978年10月に生後12〜72カ月を対象とした定期予防接種を開始し、2006年4月には定期接種を2回に変更することで世界標準に達しました。これにより、日本は2015年3月27日にWHO(世界保健機関)から麻しんの排除達成を認定されています。

しかし、2024年度の麻しん予防接種率を見ると、第1期(1歳児)で92.7%、第2期(小学校就学前の1年間)で91.0%にとどまっており、全ての都道府県で第2期の目標である95%を下回っている現状があります。

こうした状況を受け、2026年5月18日(月)には麻しん患者接触者へのワクチン緊急接種事業も開始されました。

なお、麻しんには特効薬(抗ウイルス薬)がなく対症療法が中心となるため、ワクチンによる予防が最善の対策です。2回接種者からは2次感染、3次感染がほとんど確認されていません。

2回接種によって感染時の重症化リスクを下げられることも分かっており、ワクチン接種の重要性はいくら強調してもし過ぎることはありません。

ご自身と大切な人の命を守るために

最後に、感染症の専門家として多くの麻しん患者を診療してきた筆者から、皆さんへのお願いです。麻しんは、MRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)を2回接種することで、ほぼ確実に予防できます。1回の接種で約93〜95%、2回の接種で97〜99%の予防効果が期待できます。

新型コロナウイルス感染症の流行において、ワクチンの予防効果への信頼が揺らいだ方もいるかもしれません。しかし、MRワクチンは長年の使用実績を持つ信頼性の高いワクチンです。まずは母子健康手帳などでご自身やご家族のワクチン接種歴を確認してみてください。

もし、「1回しか受けていない」「受けたかどうか分からない」という場合は、かかりつけの医師に相談し、抗体検査や追加接種を検討することをおすすめします。手洗いやマスクだけでは防げない恐ろしいウイルス、それが「麻しん」です。

正しい知識を持ち、できる対策から始めていきましょう。

■参考文献
1. 国立健康危機管理研究機構.感染症情報提供サイト.(2026年5月22日確認)
2. 厚生労働省感染症対策部感染症対策課. 麻しんの現状と対策について.(2026年5月22日確認)
3. 東京都保健医療局.麻しん(はしか)の更なる感染拡大を防ぐために 麻しん患者の接触者へのワクチン緊急接種事業を開始します.(2026年5月22日確認)
4. Chad R. Wells,Abhishek Pandey,Yang Ye,et al. The health and economic repercussions of declining MMR coverage in the United States.
5. 日本感染症学会.麻しん(はしか)が世界・国内で増加しています.(2026年5月22日確認)
6. 日本小児科学会.2026年における麻疹患者数増加に関する注意喚起.(2026年5月22日確認)

秋谷 進プロフィール

小児神経学・児童精神科を専門とする小児科医・救急救命士。プライベートでは4児の父。子どもの心と脳に寄り添う豊富な臨床経験を活かし、幅広い医療情報を発信中。
(文:秋谷 進(医師))

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