駅構内を歩く旅行客=2025年1月、東京都内(AFP時事) 新幹線代の補助や施設入館料免除など、自治体による訪日客誘致策が「炎上」する例が出ている。地域経済活性化が狙いだが、「不公平では」との批判も寄せられ、担当者は「施策の趣旨を丁寧に説明するしかない」と厳しい表情を見せる。
鹿児島県は2026年度、海外から来る県内宿泊者数がコロナ禍前の水準に戻らないとして、訪日外国人誘客促進事業をスタートさせた。県内の宿泊と新幹線の乗車券をセットにした旅行商品に対し、福岡・博多駅から県北部の出水駅や鹿児島市の鹿児島中央駅までの片道運賃(1万円前後)を全額補助するのが目玉だ。
福岡から新幹線で鹿児島を訪問できることを周知し、飛行機の直行便がない国からの訪日客誘致が目的。だが、2月の施策発表から約1カ月で「外国人優遇ではないか」「税金を使ってまで外国人に来てほしくない」などの批判が600件ほど寄せられた。
担当者は「日本人向け誘致も進めるが、訪日客向け事業だけ切り取られてしまった」と分析。「丁寧に説明しながら、国内外の観光客誘致を進めたい」と話す。
訪日客向け施策を見直した例もある。奈良県は県立美術館など4施設の入館料を08年から免除していたが、24年4月に廃止した。SNSで「外国人だけを優遇するのはおかしい」といった声が上がり、山下真知事は「窓口に来て初めて無料と知る場合が多い。誘客につながっておらず、県民の理解が得られない」と説明した。
島根県では19年度時点で、国宝・松江城や県立美術館など33施設で外国人割引が行われていたが、23年以降、廃止の動きが広がる。訪日客数把握のため制度を推奨してきた県などは、円安を背景に富裕層の来日が増えたため方針を転換。一部の施設は、実際に寄せられた「外国人優遇」との批判も考慮して割引をやめた。
ただ、訪日客に人気の足立美術館(安来市)や石見銀山世界遺産センター(大田市)など11施設は割引を続ける。昨年の大阪・関西万博を受け、県は大阪と県内を結ぶ高速バスでは運賃を半額未満の2000円にする事業も展開。担当者は「利用状況を踏まえ継続の可否を判断する」と話している。