あのサッカー監督がワイナリー経営者に! 来日のトルシエ氏をフランス料理界の巨匠が究極の"おもてなし"

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2026年06月13日 12:10  週プレNEWS

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28年の親交がある元サッカー日本代表監督のトルシエ氏(左)と、フランス料理界の巨匠コルビ氏(右)

2002年のサッカーW杯日韓大会で、日本代表を初のベスト16に導いた名将フィリップ・トルシエ氏は、現在フランス・ボルドーでワイナリーを経営している。その来日に際し、45年のキャリアを誇るフランス料理界の巨匠ドミニク・コルビ氏が、人生の師と仰ぐトルシエ氏をもてなした。

今回コルビ氏は、日本の特定地域で生まれる「GI産品」を使った特別のメニューを用意。28年の親交があるふたりが、トルシエ氏が造るワインも傾けながら、食材、料理、ワイン造りについて語り合った。


28年の親交がある元サッカー日本代表監督のトルシエ氏(左)と、フランス料理界の巨匠コルビ氏(右)

――まず、おふたりの出会いからお教えいただけますか?

コルビ 初めてお会いしたのは1998年でした。トルシエさんが日本代表監督に就任されたばかりのタイミングで、私が来日後にエグゼクティブシェフを務めた「トゥールダルジャン東京」でお食事をご一緒させていただきました。テーブルに着くなりサッカーの話で盛り上がって、すぐ仲良くなりましたね。

サッカー監督・ワイナリー経営者のトルシエ氏、フランス料理界の巨匠・コルビ氏の会食対談、調理に使用した「GI産品」

トルシエ あの日の光景は、今でも鮮明に覚えています。

コルビ そこからの28年間で、食事をしながら語り合った時間は私の財産です。一緒に日本の街を歩いていると、「トルシエさん!」と多くの方が声をかけてくるので、私がボディーガードを務める場面もありましたね(笑)。

トルシエ 私にとっても、コルビシェフと食事を共にした時間は特別です。サッカーの監督として過密スケジュールの中にあっても、彼と食卓を囲む時間はまるで別世界のように穏やかで、自分を取り戻せる場所でした。

コルビ 私はトルシエさんと同じフランス・パリ出身。少年時代にサッカーのクラブチームでプレーし、今ではパリ・サンジェルマンの試合を欠かさず観戦するほど、サッカーは私の人生に深く根ざしています。トルシエさんとは料理の話もサッカーの話も尽きません。

――今回はコルビシェフとも縁がある服部栄養専門学校のスペースをお借りし、会食をしながらの対談となりました。

トルシエ 今回、コルビシェフは日本の特定地域でのみ生まれる「GI産品」の食材(以下、GI食材)を調理していますね。フランスには日本よりも古くから「AOC」という認証制度があり、国が厳格な審査をし、地域を代表する特産物を国家ブランドとして法的に保護しています。


コルビ氏(左)の料理の仕上げを待つトルシエ氏

コルビ GI食材は、特定の地域で生まれ、農林水産省のGI(地理的表示)保護制度によって地域の知的財産として保護された産品です。日本では現在、「飛騨牛」「北海道米」「小笹うるい」など、国内167産品が希少ブランドとして登録されています(※2026年3月25日時点)。

今回ご用意したのは、私が厳選した9品のGI食材のうま味を最大限に引き出した料理です。メニューはこちらです。

【メイン料理】「和牛ロースト、うるいソテー」

1.飛騨牛(岐阜県)2.鹿児島の壺造り黒酢(鹿児島県) 3.青森の黒にんにく(青森県) 4.小笹うるい(山形県)

【付け合わせ】「リゾット 白味噌の鮮やかなアクセント」

5.北海道米(北海道) 6.サヌキ白みそ(香川県)7.豊橋花穂(愛知県)

【デザート】「干し柿 黒糖シロップ、白みそクリーム添え」

8.市田柿(長野県) 9.沖縄黒糖(沖縄県) ※2.鹿児島の壺造り黒酢、6.サヌキ白みそも使用。

――調理のポイントは?

コルビ メインは「飛騨牛」のローストと「小笹うるい」のソテーです。飛騨牛は私が飛騨高山大使を務めたご縁もあって、特別な思い入れがある食材です。肉質が非常に柔らかく、口いっぱいに豊かなうま味が広がります。

トルシエ 和牛はどう仕上げましたか?

コルビ 飛騨牛は黒毛和牛A5等級のサーロインのブロック。肉の状態を見極めて焼き上げ、表面は香ばしく中はジューシー。肉の端材に「鹿児島の壺造り黒酢」や玉ねぎを加えた特製ソースが、和牛のうま味を引き立てます。


和牛を調理するコルビ氏

トルシエ 「小笹うるい」の調理も教えてください。

コルビ 新鮮なシャキシャキ感を活かして、生とバター炒めを織り交ぜています。そして、熟成された「青森の黒にんにく」と黒酢を練り込んだ黒いペーストも作りました。ソースにペーストを付け加えることで、肉とうるいのうま味が口の中で広がります。

トルシエ リゾットの調理は、どのように工夫を?

コルビ もちもち感と深い甘味がある「北海道米(ゆめぴりか)」を、贅沢なリゾット風に仕立てました。炊き立てのご飯に「サヌキ白みそ」や生クリームなどを加え、白みそのやさしい甘味でお米本来の美味しさを際立たせています。


メイン料理の「和牛ロースト、うるいソテー」と、付け合わせのリゾット

トルシエ リゾットの上に飾られた花穂に、和の美しさと瑞々しさを感じます。

コルビ こちらは「豊橋花穂」で、日本らしい料理の華やかさと繊細な美しさを表現しています。

トルシエ 柿のデザートも気になりますね。

コルビ 「市田柿」は、心地よい弾力と上質な甘みがあります。前日からシロップに浸して果肉に奥ゆかしいうま味を加えています。 このシロップは、ミネラル豊富な「沖縄黒糖」と「鹿児島の壺造り黒酢」を贅沢にブレンドしたもの。仕上げに、「サヌキ白みそ」で風味付けした生クリームを重ねました。


デザートの「干し柿 黒糖シロップ、白みそクリーム添え」

トルシエ 一貫したストーリーを感じますね。

コルビ トルシエさんのワイナリーのワインと一緒にお召し上がりください。

トルシエ (試食して)おぉ、これは......。和牛、うるいが口の中でとろけて絡み合い、優雅なうま味と香りが広がりますね。黒酢ソースと黒にんにくペーストの深みある酸味が、美味しさをぐっと放っています。

コルビ ぜひ、リゾットもご一緒に。

トルシエ マイルドですね。濃厚な食感と甘味があり、花穂の香りが奥深い余韻を響かせています。この計算された完璧なバランスが、コルビシェフの真髄ですね。

コルビ 最後に、デザートの干し柿を。

トルシエ 柿は、黒糖シロップ・白みそクリームの甘味と酸味がまろやかに溶け合っています。食材や白みその配置まで細やかに設計済みで、まるでサッカー名監督の采配を見ているかのようです。料理の「素材」とサッカーの「選手」。どちらも「個性を引き出して活かす」という本質は、共通していると思います。

コルビ ありがとうございます。私のシェフ歴45年の技術を結集させました。

――トルシエさんのワイナリーで製造するワインについてはいかがですか?

コルビ トルシエさんが造るワインは、私のお料理の美味しさを極限まで高めてくれる最高のパートナーです。

トルシエ ありがとうございます。私は2014年から、フランスの名産地ボルドーのサン・テミリオンにあるワイナリー「ラ・ベル・ガブリエル」でワインを製造しています。ワインというものは、料理を圧倒するものではなく、互いの魅力を引き立て合うものです。

コルビ 2016年頃にトルシエさんのワインをいただいた時に、「10年後にさらに素晴らしくなる」と確信していました。そして今回のこのワイン「ソル・ベニ」は、まさにその熟成のピークを迎えています。

トルシエ 「ソル・ベニ」は、異なる土壌で生まれた2種のブドウを組み合わせています。非常に美味しく、コルビシェフの料理との相性も抜群ですね。


ワインを口にするトルシエ氏

コルビ これほど贅沢な瞬間を、尊敬できる方と豊かな空間を共有できることに心から感謝しています。

トルシエ 服部栄養専門学校というこの神聖な場所、コルビシェフのお料理、私のワイン。友と過ごす時間、感動の記憶に深く刻んでおきたいと思います。

――トルシエさんがワイナリー経営を始めたきっかけは?

トルシエ 人生における、良い意味での新たなチャンスが訪れたんです。2014年にサン・テミリオンを訪れた時に、新聞の広告でワイナリーの売り出しを見つけ、直感的に「これだ!」と思いました。私の両親がパリで肉屋を営んでいたこと、つまり自然や家畜と関わる仕事をしていたことも影響しています。

コルビ 「自然に還る」という道を選んだわけですね。

トルシエ ワインは農業を通じてブドウという植物から生まれます。農業において人と自然の関係性は非常にデリケートで、実に深い。ワインを作るとは、大地と対話することでもあります。

コルビ トルシエさんがサッカーの戦術を組み立てるように、ワインにおいても細部まで計算してプロセスを大切にする。その哲学は私の料理の世界にも通じますね。

ライター/佐久間秀実 撮影/立松尚積

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