
小学生向けの付録付き総合学習誌『学研の学習』(Gakken)が7月に復刊する。
【画像】『学研の学習 はにわの大国宝展』の付録をじっくり見る
1946年に創刊された『学研の学習』は、社会、算数、国語、図工など教科を横断して学べる学習誌として、子どもたちに親しまれてきた。兄弟誌の『学研の科学』と併せ、最盛期には月間670万部を発行。子どもたちの知的好奇心を刺激する雑誌として存在感を示していた。しかし、少子化や教育環境の変化などを背景に発行部数が減少し、いずれも2010年に休刊した。
今回、16年ぶりに『学研の学習』が復刊する。2022年に復刊し、不定期で現在第9弾まで発売している『学研の科学』に続いた。
4月28日に予約販売を開始した『学研の学習 はにわの大国宝展』(4290円、7月9日発売)は、想定を上回る予約が集まり、発売前増刷が決定した。発行部数は増刷分を含めて3万部となる見込みだ。今後は年1回程度の発行を計画しているという。
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●復刊号の付録は「はにわ」の組み立てキット
復刊第1弾となる『学研の学習 はにわの大国宝展』は、古代の「はにわ」や「勾玉」など国宝がテーマだ。東京国立博物館が監修し、工作や観察を通じて歴史を学べる内容とした。本誌は84ページで、付録の組み立てキット、小学生に人気の学習漫画「ひみつシリーズ」の『頭をよくするひみつ』を同梱する。
本誌では、考古学研究者の仕事紹介や、読者の子どもたちと古墳作り体験をした様子のレポート記事、歴史学者の磯田道史氏から子どもたちへのメッセージなどを特集する。
付録の目玉として、約1500年前の古墳時代に作られた国宝のはにわ「挂甲の武人」(けいこうのぶじん)を復元する、組み立てキットを用意した。日本で初めて国宝に認定されたはにわとして知られており、現在は東京国立博物館に所蔵されている。
キットは、実物を計測した研究用の3Dデータを基に、本物の6分の1である約20センチの大きさで再現した。石の粉を含んだ素材を採用し、素焼きのような質感や重みを表現。表面の装飾や汚れまで再現されており、パーツをのりで付けて組み立てる仕組みだ。
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加えて、勾玉作りキットも用意した。柔らかい天然石「滑石」を紙やすりで削って磨き上げることで、古代のアクセサリーを制作できる。
とじ込み付録には、自宅で「はにわの大国宝展」を開ける立体工作セットも付けた。馬や犬のはにわ、土偶、古代の鏡や耳飾りなど、東京国立博物館の研究者が選んだ文化財を紙工作で再現。博物館のような解説パネルもついており、自分で見どころや発見したことを書き込める。各パネルにはQRコードを掲載し、研究者による音声解説を聞きながら学べるようにした。完成後は、はにわ「挂甲の武人」と並べて自宅で展示できる。
●子どもたちにとって話題の中心だった『学研の学習』
『学研の学習』は1946年に創刊した雑誌で、教科を限定せず幅広いテーマを扱っていた。1963年には兄弟誌『学研の科学』が創刊。実験や観察を通じて学ぶ科学雑誌として人気を集めた。
両誌は当時のGakkenを代表する看板雑誌だった。小学1〜6年生向けに学年別のシリーズを展開し、計12誌を毎月発行。毎号付属する組み立て式の付録が目玉だった。学研の科学/学習統括編集長を務める吉野敏弘氏は「当時の子どもたちにとっては『今月の科学の付録やった?』『今月の学習読んだ?』と学校で話題になるほど、人気の雑誌だった」と話す。
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もともとは、戦後の公教育では補いきれない学びを提供する目的で創刊された。学校の理科設備が十分ではなく、1クラスに顕微鏡が1台しかないような時代でも、付録として顕微鏡を付けるなど、子どもたちが自ら体験しながら学べる機会を生み出していた。
しかし、時代とともに教育環境は大きく変化した。学校の設備が充実し、学習塾や受験産業も拡大。教育市場では、子どもの興味や関心を広げる学びよりも、学力向上などの結果に直結する学習へのニーズが高まった。
こうした変化の中で『学研の学習』『学研の科学』が担っていた役割は次第に小さくなり、児童数の減少も重なって、発行部数は落ち込んだ。そして2010年、両誌は休刊した。
●なぜ今『学研の学習』を復刊するのか
少子化や出版市場の縮小は現在も続いているが、なぜ復刊に踏み切ったのか。
吉野氏は「クオリティーの高い、良い商品だったが、時代のニーズと合わず休刊してしまった。世の中がもう一度必要とするなら、復刊する価値があると考えていた」と話す。
再び『学研の学習』や『学研の科学』が求められる環境になりつつあると判断した背景には、AIの進化がある。AIの性能が上がっている中、知識を得るだけでなく、自ら経験して考える力の重要性が改めて注目されているという。加えて、スマートフォンの普及やコロナ禍を経て、実際に手を動かして体験することの価値も見直されつつある。
こうした変化を受け、子どもたちが自ら作り、観察し、試行錯誤できる教材への需要が再び高まっていると判断。紙媒体を取り巻く環境は厳しさを増しているが、吉野氏は『学研の学習』にはデジタルでは代替できない価値があるとみている。
「デジタルで情報を得るだけでは、差は生まれにくい。手を動かして触れることで、感動し、自分ならではの視点が育まれる。デジタルが優勢な世の中だからこそ、リアルな体験が求められている」(吉野氏)
例えば、勾玉作りキットでは、粗さの異なる複数枚の紙やすりで四角い石を勾玉の形に削り、ぴかぴかに磨きながら時間をかけて完成させる。古代の人々と同じように手を動かして、現代の子どもたちは「昔の人もこうやって作っていたのか」と実感できる。
一方、体験価値を高める手段として、デジタルも積極的に活用している。『学研の科学』の復刊に合わせて開設した「あそぶんだ研究所」は、会員数6000人超の無料オンラインコミュニティーだ。
本誌と連動したオリジナル動画や記事を配信するほか、読者の子どもたちが好きなことや気になったことを投稿して、交流できる場としても機能している。編集部によるワークショップに読者が参加して実験や工作を一緒に楽しめるほか、ライブ配信を通じて編集部のメンバーや研究者とチャットで直接やりとりすることもできる。
狙いは、付録のキットを作って終わりにしないことだ。コミュニティー上で作品を共有したり、イベントやワークショップに参加したりすることで、子どもたちが商品に触れる時間を長くし、学びや発見をさらに広げてもらう考えだ。
●子どもたち以外の購入者も
予約販売は好調だ。復刊を発表するとSNSで話題となり、発売前増刷が決定した。
現在の親世代は、かつて『学研の学習』を読んで育った世代だ。だが、購入者は子どもを持つ親だけではなかった。歴史ファンや、子どもの頃読んだ懐かしさで注文する人もいたという。
ただし、Gakkenには実験や工作を楽しむ大人向けシリーズ『大人の科学マガジン』もあり、『学研の学習』はあくまで子ども向けという位置付けだ。吉野氏は「面白いという気持ちは、子どもも大人も変わらない。科学と学習は、子どもが面白いと思うものを追求している」と話した。
復刊号の価格は4290円と決して安くはなく、子どもがお小遣いで買える金額でもない。吉野氏は「クオリティーと値段は難しい問題だが、商品を作るときは振り切らないといけない。今の時代はクオリティーが大事だと思っている」と語る。
保護者は、子どもたちが本物に触れる時間・体験に、お金を払うという。雑誌を読んで、付録を作って終わりではなく、あそぶんだ研究所などを通じて商品に触れる時間を長くする取り組みを進めており、こうした考えに共感する家庭に支持されているそうだ。
商品開発で重視しているのは、子ども目線で面白いかどうかだ。吉野氏は「大人は『学びになる』『役に立つ』といった意味付けをしがちだが、子どもにとっては面白ければそれでいい」と話す。
編集部員は子どもと接することができるボランティア活動に参加したり、あそぶんだ研究所に寄せられる投稿を見たりしながら、今の子どもたちが何に興味を持っているのかをリサーチしているという。
今後は『学研の学習』『学研の科学』を主力商品として展開する一方、より手に取りやすい中価格帯商品の展開も検討する。
吉野氏は「人に認められることよりも、自分がのめり込んで好きになる経験の方が、その人を豊かにする。私たちの目的は、子どもたちが何かを好きになる種やきっかけを商品に埋め込むこと。歴史に詳しくなってほしいというよりも、知らなかった世界に触れることで『面白い』『好きかも』と思う子どもが少しでも生まれたら、大成功だ」と語った。
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