94号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ) 2026年WEC第4戦サンパウロ 7月10日から12日にかけて、南米のブラジルでWEC世界耐久選手権第4戦『サンパウロ6時間レース』が開催される。ここでは2026年シーズン前半戦最後の舞台となるアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス・サーキット)のパドックから、走行前日のトピックスをお届けする。
■3人全員がインテルラゴス未経験
ル・マン24時間レースから4週間後、WECに参戦するチームとドライバーたちは、シーズン第4戦の開催地であるインテルラゴス・サーキットに向かうため、地球の裏側へと旅立った。このレースはシリーズの夏休み前最後のイベントであり、当初予定されていたカタールでの開幕戦が延期されたため、今季初のヨーロッパ以外での開催となる。
しかし、3人のドライバーはこの南米への遠征に参加していない。キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAの12号車キャデラックVシリーズ.Rは、ルイ・デレトラズを欠いた2名体制でブラジルに臨む。ル・マンとその前哨戦スパで12号車をドライブしたデレトラズは、今週末のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FOS)でチームとメーカーを代表し、ハイパーカークラスの車両でヒルクライムに出走する予定だ。
昨年その役を務めたリッキー・テイラーは、カナディアンタイヤ・モータースポーツ・パーク(CTMP)で開催されるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権にLMP2カーで出場する。
今週末はウェザーテック選手権との今季2度目かつ最後の日程重複となるが、CTMPのレースには最高峰カテゴリーであるGTPクラスが含まれないため、影響はかなり限定的と言えるだろう。
影響を受けるのはハート・オブ・レーシング・チームとTFスポーツの2チームのみだ。23号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボでは、エドゥアルド・バリチェロに代わってふたたびコービー・パウエルが、LMGT3クラス首位の33号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rでは、ニッキー・キャツバーグに代わってニコ・バローネが合流する。
IMSA GTDのポイントリーダーであるバリチェロは地元レースを欠場するが、彼の父で元F1スターのルーベンスが、愛息“ドゥドゥ(エドゥアルドの愛称)”の所属チームであるハート・オブ・レーシングをサポートするためにサーキットを訪れている。
パウエルは、バリチェロの代役として2度目の招集を受けたことを「光栄」だと述べ、とくにチームには強力なシルバードライバーが多数いたことを考えると、なおさらそう感じたという。パウエルもチームメイトのジョニー・アダムとグレイ・ニューウェルと同様に、これまでインテルラゴスでレースをしたことがないため、彼はバリチェロの知識に感謝している。
トラックウォーク中、とくに第1コーナーの高低差の大きさに驚いたというパウエルは、Sportscar365に対し次のように語った。「ドゥドゥは昨年、ここで素晴らしい仕事(ポールポジションと3位表彰台の獲得)をした。幸いなことに彼はまだチームにいるので、WhatsAppでかなりのメッセージを送っている。彼は明らかにこのトラックを熟知しているからね。彼はいくつかのヒントやコツを教えてくれた。それが今週末、すべてのライバルに勝つのに充分であることを願っているよ」
■限定カラー継続の理由
日程の重複に関して言えば、最近発表されたFIA ABBフォーミュラE世界選手権の2026-27年カレンダーには、2027年のWECスケジュールと重なるイベントがふたつある。5月15〜16日のフォーミュラEモナコ大会はスパ6時間と重なり、7月10〜11日の上海大会はサンパウロ6時間と同じ週末になる。
しかし、Sportscar365が入手した情報によると、スパとの重複を緩和するためにモナコE-Prixの日程変更が検討されている可能性がある。ル・マン24時間レースの前哨戦となるスパのほうが、WECチームが契約上の優先権を持つ可能性が高いため、ふたつのうちモナコのほうがより問題が大きいからだ。少なくとも5人の現役WECハイパカードライバーが、この重複の影響を受ける可能性がある。
WECではトヨタ、フォーミュラEではエンヴィジョン・レーシングでドライブするセバスチャン・ブエミは、Sportscar365からこの変更の可能性について問われると、それを「良いニュース」と表現したが、それがダブルプログラムの継続を可能にするとまでは明言しなかった。
「まだ何も決まっていないので、様子を見る必要がある。それで充分かどうかはわからない」
ジェネシス・マグマ・レーシングは、ル・マンで導入したオレンジと赤のマグマ・カラーを、今週末のブラジルでも継続して使用することを選択した。チームによれば、この決定は、以前採用していた大部分がグレーと黒のデザインに代わるこの配色に対し、「圧倒的に好意的な反応」があったことを受けたものだという。
今シーズンの他の6時間レース(イモラとスパ)と同様に、ハイパーカーチームは週末を通じて使用できるミシュランタイヤが合計30本(ハイパーポールに進出した場合は34本)に制限される。フリー走行と予選で計3セット、そして決勝レースでの4.5セットという内訳だ。今週末はミディアムとハードのコンパウンドが使用される。
ミシュランのエンデュランス・プログラム・マネージャー、ピエール・アルベスは次のように述べた。
「昨年、再舗装されたばかりのトラックのおかげで多くのことを学んだ。すべてのスティント、空気圧と温度の進化、そして各チームが採用したさまざまな戦略のパフォーマンスを分析した。複数のマニュファクチャラーが、一貫してダブルスティントを完遂できること、さらにはピットストップ中に右側のタイヤのみを交換することも可能であることを証明した。これは、我々のタイヤの一貫性と、長時間の走行でも高いパフォーマンスレベルを維持できる能力の両方を明確に示している」
■ミディアムタイヤが復活
もうひとつのタイヤサプライヤーであるグッドイヤーは、2025年のブラジル大会でハードタイヤを世界初投入した後、今年のLMGT3クラスではミディアムコンパウンドにふたたび使用する。このタイヤは昨年のローン・スター・ル・マン、シーズン最終戦のバーレーン8時間、そして今年のELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズ開幕戦バルセロナでも使用されたが、その後グッドイヤーのラインアップから外されていた。
グッドイヤー・エンデュランス・プログラム・マネージャーのスティーブン・ビックリーは次のように語った。「インテルラゴスにおけるグッドイヤー・レーシング・イーグル・ミディアムについては、非常によく理解している。2年前にインテルラゴスでこのタイヤを使用してレースをしたが、変化する路面温度や混在する気象条件下でも一貫したパフォーマンスを発揮した。これは今週末に持ち込むのに適切なコンパウンドだ」
LMGT3チームには、フリー走行セッション用として4セット、予選と決勝の間で6セットと、タイヤの割り当てが増やされている。また、ハイパーポールに進出した車両にはさらに1セットが追加される。
チームWRTの両クルーは5月下旬にインテルラゴスでテストを行っており、これを行ったのは彼らのみ、あるいは極めて少数であったと考えられている。ダレン・ラーンとアウグスト・ファーフスは、空輸されたラーン所有のパラダイン・コンペティションのBMW M4 GT3エボのうち1台で、エンデュランス・ブラジルのレースに出走した。チームメイトのアンソニー・マッキントッシュ、パーカー・トンプソン、ダン・ハーパーも現地チームが所有するシャシーを使用しテストに参加した。
マッキントッシュ、トンプソン、ハーパーは、今シーズンのWECカレンダーにあるすべてのサーキットで事前テストを行う計画を年初に立てており、マッキントッシュのアメリカの拠点にあるBMWシャシーで、すでにサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を走行したとみられている。
■相性は良くないが……
ハーパーは、イモラでの開幕戦優勝の後に苦しいレースが続いたことを受け、今週末は「巻き返し」を図りたいと考えている。しかし、タイヤのデグラデーション(摩耗による性能低下)がかなり大きいインテルラゴスは、BMWの強みが活きる場所ではないという。
WECデビューシーズンの最大の課題について問われたハーパーは、「タイヤが古くなるにつれて、他の多くのマニュファクチャラーに対してパフォーマンスを失い始める」とSportscar365に語った。
「BMWは重心が高いためタイヤへの攻撃性が高い。他の多くのクルマよりもロールが大きいため、このタイヤはおそらく他ほどそれに耐えられないのかもしれない。これは対処しなければならない問題であり、毎週末のように改善と学習に努めている」
マッキントッシュが継続しているカラースキームのローテーションのなかで、最新のデザインとしてブラジルをテーマにした特別なリバリーが7日に公開されたが、実際にはBMW M4 GT3エボの両車がこのリバリーを採用する。32号車にも、ファーフスの地元レースであるインテルラゴス大会に敬意を表し、同様のデザインが施される。
またWRTのBMWは、先週末に亡くなったマークVDSのチーム代表、マーク・ファン・デル・ストラテンを追悼する特別なステッカーを貼って走行する。彼のチームは、BMW Z4 GT3での2015年スパ24時間での総合優勝を含め、スポーツカーレースで多くの成功を収めた。
金曜日のトラックアクションは、2回の90分間のフリー走行セッションが予定されており、その最初のセッションは現地11時(日本時間23時)に開始される予定だ。
[オートスポーツweb 2026年07月10日]