「起業=大金」は思い込み? 会社員のまま小さく始めた人たちのリアルなお金事情

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2026年07月11日 07:30  JIJICO

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起業と聞くと、まとまった開業資金や借金を思い浮かべる人が多いかもしれません。ところが、実際のデータは、その印象とはかなり違います。日本政策金融公庫の2025年度調査によると、週の労働時間が35時間未満で小さく事業を営む「パートタイム起業家」のうち、53.2%が「起業に費用はかからなかった」と答え、91.6%は金融機関からの借り入れをしていません(日本政策金融公庫総合研究所「2025年度 起業と起業意識に関する調査」2026年2月10日 )。つまり、少なくとも会社員を続けながら小さく起業する人たちの間では、大金も借金もいらないケースが主流になりつつあると言えそうです。「お金がないから起業できない」という思い込みは、いったん手放してよさそうです。


なぜ、お金をかけずに始められるのでしょうか。理由はシンプルで、パソコンとスマートフォンがあれば、発信も受注もできる仕事が増えたからです。文章を書く、相談に乗る、教える、あるいは誰かの作業を代わりに引き受ける――こうした自分の経験や知識を生かすタイプの仕事は、在庫も店舗も要りません。週の労働時間が35時間未満という定義からも分かる通り、パートタイム起業家の売上規模は決して大きくないと考えられます。派手にもうけるためではなく、本業のかたわらで少しずつ試す。その気軽さが、費用の低さにつながっています。


たとえば、長年の経理の経験を生かして、近所の個人商店の帳簿づけを月に数千円で引き受ける人がいます。あるいは、子育ての経験をまとめて、同じ悩みを持つ人の相談に乗る人も。得意な料理や片づけを、休日に人へ教えるという形もあるでしょう。どれも、特別な資格や大きな設備がなくても始められます。共通しているのは、すでに自分が持っているものを、少しだけ人の役に立つ形に変えている点です。ゼロから何かを生み出すのではなく、自分の棚卸しから入る。それが、費用のかからない小さな起業の入り口になります。


会社員のまま小さく始めることには、はっきりした利点があります。毎月の給料という土台がある分、あわてて売上を出す必要がなく、じっくり試せます。うまくいかなければ畳めばよいですし、手応えがあれば少しずつ広げればよい。いきなり会社を辞めて退路を断つより、ずっと現実的です。大切なのは、大きく賭けないことです。最初の一歩は、名刺を作ることでも、事務所を借りることでもなく、身近な人に「こんなことができますよ」と伝えてみることかもしれません。


始める順序も大事です。よくあるのは、道具や講座にお金をかけてから動き出すことです。けれど、費用をかけずに始めた人たちの話を聞くと、最初に手をつけたのは「一人の相手に試してもらうこと」だったというケースが多いようです。無料でも、身内が相手でもかまいません。まず一度、自分のサービスを受け取ってもらい、率直な感想を聞く。その手応えを確かめてから、必要な分だけお金をかける。この順番なら、大きな無駄は生まれません。


もちろん、気をつけたい点もあります。会社員が副業として始めるなら、まず勤め先の就業規則で副業が認められているかを確認しましょう。そして、利益が出てくれば税金の話も出てきます。本業以外の所得が年間20万円を超えると、原則として確定申告が必要になります(国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」 )。とはいえ、これは「もうかってきた」といううれしい悩みです。最初から完璧な準備をそろえる必要はありません。


起業というと、特別な才能や覚悟が要るように感じます。けれど数字が示しているのは、もっと地に足のついた姿です。お金をかけず、借金もせず、会社員を続けながら、小さく試している人たちが確かにいます。それは「起業」というより、「収入の入り口をもう一つ持っておく」という感覚に近いのかもしれません。先の読みにくい時代に、選択肢を一つ増やしておく。その第一歩は、思っているよりずっと軽いところにあります。



(新井 一・起業コンサルタント)

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