2026年F1第10戦ベルギーGP ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームは2026年F1第11戦ハンガリーGPで車体の大規模なアップデートを予定しており、アストンマーティンにパワーユニット(PU)を供給するホンダは、その次の第12戦オランダGPでアップデートを行うことが決まっている。ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアは、アップデートを前に、他メーカーとの差やエンジンの変更点などについて語った。
────────────────────────────────
——第12戦オランダGPで新エンジンを投入する予定と聞いていますが、そのきっかけとなったのは、2026年からパワーユニットの開発に適用された新しい制度である『ADUO(Additional Development Upgrade Opportunities=追加開発アップグレードの機会)』だと思います。競合他社と比較して2〜4%以上性能が低いと判断された場合に、競合他社に遅れを取っているPUマニュファクチャラーに対して、自身の開発を加速させるための複数の措置を認めることができるようになるシステムですが、その通知を国際自動車連盟(FIA)から知らされたときはいかがでしたか? トップのエンジンと比べてこんなに馬力が出ていないのかと愕然としたのか? それともさまざまなデータから想定内だったのか?
折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア(以下、折原GM):「まあ、想定内でした。競争力に関しては我々もだいたい把握していたので、どれくらい負けてるかというのも理解していました。FIAからの数値も我々が把握していたものとほとんど同じでしたし、リーズナブルな数字だと思います」
——ホンダは新エンジンをオランダGPに投入しますが、アストンマーティンはその前の第11戦ハンガリーGPに大規模なアップデートを投入することになっています。それぞれのアップデートが同じタイミングでないのは、何か意味があるのでしょうか? たとえば、別々にアップデートを入れることで、それぞれの性能向上を独立して確認したいとか……。
折原GM:「意図的に分けたり、同じにしたりすることは、基本的に行いません。投入する準備ができているのに、もう一方のアップデートに待つ理由がありませんから。基本的にアップデートは準備ができ次第、投入していくということになっています。特に我々の今の状況を考えるとビハインドが大きいので、待っている余裕などありません。ただ、オランダGPまで時間を要したのは、大きなステップアップが必要で、それを実現するにはオランダGPまで時間を要したというわけです。チーム側は彼らのアップデートのアイテムの準備が完了するのがハンガリーGPで、わざわざそれをオランダGPまで待つ必要もないので、結果的にタイミングが異なったということです」
——オランダGPに投入するエンジンは、新しい仕様になるのですか?
折原GM:「シーズン中ですので、エンジンの外観など骨格は変わりません」
——何が変わるのですか?
折原GM:「燃焼にまつわる部分に手を加えました。たとえば、プレチャンバー(副室)あたりは変えました(スパークプラグの先に副室を設け、副室で着火した火炎が主室との間にある壁にある小さな孔から主室側に勢いよく噴き出し、主室の混合気を一気に燃焼させるシステム)。また、ピストンの形状も変えましたし、燃焼室の形も大きく変わります」
——燃焼室やピストンの形状を変えるのはかなり大きな変更ですね。
折原GM:「パフォーマンスを上げるために、ピストンの形状を変えるのは一般的です。 ただ、ピストンの形状を変えれば、信頼性の確認が大きな課題になります。信頼性をクリアするためには、やはりオランダGPまで時間を要するということです」
——ADUOは競合他社と比較して2%以上性能が低いと判断された場合に、競合他社に遅れを取っているPUマニュファクチャラーに対して、自身の開発を加速させるための複数の措置ですが、ADUOによって2%以上性能を向上させるのはどれくらい難しいことなのでしょうか?
折原GM:「たとえば、他のカテゴリーでは、2%の燃料流量を増やすという方法で性能差を調整しています。でもF1では、それはF1の精神に反する。だから、その代わりにADUOという制度で開発を許可しているわけです。ただ、燃料流量は増やせば、自動的に性能が上がりますが、ADUOでは性能を上げられるかどうかは自分たちの開発力次第となります」
——新エンジンが投入されるオランダGPを楽しみにしています。ありがとうございました。
[オートスポーツweb 2026年07月18日]