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テレビで見ない日はないほどの人気を誇るアイドルグループ・嵐。そんな彼らを熱心に追いかけるファンの日常風景や、メンバーの立ち振る舞いの“あるあるネタ”をまとめたのが『嵐ヲタ絶好調超!!!!』(大和書房)だ。ファンの熱量やメンバーのおもしろみが感じられる一冊となっている。
同書には、著者・青井サンマ氏が嵐の楽曲について解説した「嵐の聴き方」も収録。もともとは青井氏が自身のTwitterに投稿していたもので、Togetterでのまとめは100万PVを突破(2013年10月12日現在)。櫻井翔のボーカルを「『上手くないのにミュージカル風』なおもしろ声」と評するなど、愛に溢れつつもときに辛口な、熱心なファンならではの語り口が話題を集めている。
青井氏は同書において、「ジャニーズアイドルは、その巧拙の差はあるもののほとんどが「歌手」であり、その他の役者やテレビタレントなどの仕事をしていても、中心の仕事は歌手なのだと私は思っています」と記している。そこで今回は、“ファンの視点から見た、歌手としての嵐の魅力”を青井氏に訊いた。
――嵐はなぜ国民的ともいえる人気を得たのだと思いますか?
嵐は歌手や俳優としての活動、またバラエティへの出演で、あらゆる側面をさらけ出しています。そのため、「かっこいい」「かわいい」「ダサい」「笑える」など、とっかかりが多い。万人にいろんな角度からの関わり方を提供する、「お好きなところを見てください」というスタンスは国民的という文脈に当てはまると思います。また、1億総ツッコミ時代において、ツッコまれるほうの役割を平気で担うことができることも強みではないでしょうか。友人の言葉を借りれば「ツッコマレビリティ」が高い(笑)。
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――楽曲のリリースも活発です。歌手としては、どんな点が強みなのでしょうか。
彼らは歌がすごくうまいわけではありませんが、曲に込められたドラマや情報を伝える力を持っていると思います。また、歌以外の活動で見せるキャラクター込みで歌っているし、聞き手もそこを加味しながら楽しむことができる。これは彼らの楽曲のおもしろみだと思います。
また、嵐に限ったことではありませんが、アイドルの楽曲は制作陣が豪華ですよね。松田聖子さんの時代から、アイドルというのは“一流のクリエイターを紹介するプラットフォーム”のような役割もあるのではないかと思っています。
ジャニーズで言うと、例えばSMAPは、凛として時雨やサカナクションなど、既にロックシーンで知名度のあるバンドを起用していますが、嵐は新進気鋭の人を起用することが多い。これも魅力のひとつだと思います。
――楽曲提供している人の中で、青井さんのイチオシは?
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みんな大好きなので難しいのですが、強いて言えば、2008年頃からアレンジや作曲で制作に参加している佐々木博史さん。もともとはコナミの「Bemani」シリーズに楽曲を提供していた方なので、サウンドが厚く、今までの嵐にはなかった“ゴリゴリ感”を与えてくれているんです。とくに好きなのは、シングルだと、相葉くん主演のドラマ『バーテンダー』の主題歌だった「Lotus」(2011年)、二宮くん主演の映画『プラチナデータ』の主題歌の「Breathless」。『迷宮ラブソング』のカップリング曲「together, forever」、『Beautiful World』収録の「morning light」もおすすめです。曲調も歌詞も、総合的に見てカッコイイ楽曲です。
――嵐は“爽やか”という印象が強いと思いますが、楽曲的には”カッコイイ”路線であると。
デビュー曲の「A・RA・SHI」など若々しい曲もあり、ファンクやラップまで様々なジャンルの楽曲を歌っていますが、基本はずっとカッコイイ路線だったと思います。転機となったのは、嵐がブレイクする直前のアルバム『TIME』(2007年)。爽やか路線の曲が増え始めて、とっつきやすくなりました。ブレイク前の嵐は、ちょっと通好みというか、いわゆるロキノン系を好む女子にウケていたようです。
方向性が変わったのは恐らく、下の世代のグループ(関ジャニ∞、NEWS、KAT-TUN)が勢力をつけてきたことが理由ではないかと思います。関ジャニ∞はお笑い路線、NEWSは大学生〜社会人1年目くらいの若いお兄ちゃん系、KAT-TUNがやんちゃな不良っぽさというカラーを出してきたので、食い合わないために爽やか路線を打ち出したのかな、と。今はある程度の地位も築きましたし、メンバーの年齢も高くなったので、再びカッコイイ感じの曲が増えました。わりと硬派な作品のタイアップだったという理由もありますが、今年に入ってからのシングルはどれもゴリゴリ路線。また、次のアルバムにPVが収録される「P・A・R・A・D・O・X」は、ニューヨークまで出向いて、ビヨンセも担当するジャクエル・ナイト氏に振り付けをお願いしたようです。
――「嵐の聴き方」の中でも紹介されている「COOL&SOUL」は「アイドル界のトップを獲る」という野心が見える作品で、こちらも“好青年”というパブリックイメージとはズレがあります。こうした作品は、他にもありますか?
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「COOL&SOUL」の前には、櫻井くんのソロで「Anti-Anti」という楽曲があります。嵐をdisる人たちのセリフからスタートし、櫻井くんが「ならアイドルがどれほどのもんか見せてやるよ!」と叫んだのちに本編に入るという曲。そのあとにも、「Hip Pop Boogie」、「Re(mark)able」、「Attack it!」など、一連に繋がっている曲があるので、それを聞けば「こんなこと考えているんだ」という発見があるかもしれないですね。
櫻井くんのラップ=サクラップは、ちょっと馬鹿にされている雰囲気もありますが、本当に真面目に書いているし、すごくメッセージ性が強いんです。また、一般的に彼は“優等生キャラ”で通っていますが、もともとは勝ち気でやんちゃというか、ちょっととんがった感じのところがあって。サクラップではそういう部分もけっこう出していて、知的と言うと少し違うんですけど、自分の伝えたいことをしっかり整理して書いている印象を受けます。
――「嵐の聴き方」では、「ラブソングの代表曲がまだ出ていない」と書かれています。「Love so sweet」というヒット作があるので、意外な気がしました。
「Love so sweet」の作詞を務めたSPINさんは、はっきりとした言葉を使わない傾向があるんです。行間を読ませるというか、パーツを集めて空気感を立ち上げて、それぞれの解釈ができるような手法をとる。かわいくていい曲だとは思うんですが“ド定番になる”という観点では、もう少しストレートなものなのではと思います。ストレートなラブソングといえば「One Love」もあるのですが、こちらは語りが足りないような……。個人的な願望としては、SMAPで言うと「らいおんハート」のような、聞いていて身悶えしてしまう恥ずかしいラブソングが聞いてみたいですね。(リアルサウンド編集部)
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