限定公開( 164 )
9月の終わりから半年以上にわたって日本全国絨毯爆撃中のマキシマム ザ ホルモン「予襲復讐TOUR」も中盤戦。どんなにビッグになってもツアーでは「ハコはライブハウスのみ」「対バン形式」といった鉄壁のルールを頑なに守り続けているホルモン。12月3日、新木場STUDIO COASTでの対バン相手は前日のCLUB CITTA’川崎に続いてSEKAI NO OWARI。フロアはこのツアー最大規模の約3.000人でビッシリだったが、言うまでもなく、今この組み合わせなら余裕でこの10倍のキャパでも埋まるだろう。10倍以上のチケット争奪戦を勝ち抜いた先鋭たちが、普段のライブの10倍以上に暴れまくる。その凝縮された圧力鍋のような空間こそがホルモンの現場なのだ。
表面的な音楽性は水と油にも思えるSEKAI NO OWARIとホルモンだが、実はSEKAI NO OWARIのインディーズ初期、まだ4人が地元の自作ライブハウスCLUB EARTHでやっていた時代から、ダイスケはんは彼らのライブに通っていたという。ポップをハードコアに突き詰めたSEKAI NO OWARIと、ハードコアをポップに突き詰めたホルモン。入口も出口もまったく違えど、その表現の強度において両者は拮抗し得る存在。ホルモンのオーディエンスもそんな彼らを、ダイブ&モッシュの洗礼とともに笑顔で迎え入れる。対バン形式のライブに出演すること自体が今回初めて(!)というSEAKAI NO OWARI。「ソープランド」や「乳首相撲」といったSEKAI NO OWARIらしからぬワードが飛び交うなど、MCではすっかりホルモンに感化されながらも、最終的にはホルモンTシャツに埋め尽くされた真っ黒なフロアを、自分たちの色で完璧に染め上げてしまった。
続いて、桁外れの重低音と大量破壊兵器級のギターリフがハコ全体を揺るがす“予襲復讐”で幕を開けたホルモンのステージ。「極上のファンタジーの世界から『実話ナックルズ』の世界にようこそ!」。そんなナヲの的確すぎるMCを掛け声に、「maximum the hormone」「シミ」「便所サンダルダンス」とキラーチューンの応酬が始まる。完全にリミッターが外れた阿鼻叫喚の風景が、ステージ上とフロアで繰り広げられていく。
今回とにかくステージを見ていて印象的だったのが、マキシマムザ亮君の滅法楽しそうな一挙一動。前々作『ロッキンポ殺し』と前作『ぶっ生き返す』で言いたいことは全部言い尽くしたと語り、アルバム『予襲復讐』に至るまでの6年以上に及ぶ過程で、一時期はかなり精神的に病んでいたという亮君。でも、マキシマム ザ ホルモンの「エピソード・ゼロ」を語るために中2の頃のマインドに戻った『予襲復讐』の製作と、その曲たちを毎日のようにステージ上で演奏するという現在の日常は、彼を完全に絶好調モードに引き戻していた。亮君が絶好調ということは、つまりホルモンが絶好調ということである。そして、絶好調のホルモンに敵うものなんて、この世界にはない。
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アンコール1曲目の「中2 ザ ビーム」。メンバー全員による執拗な「絶対にダイブするなよ!」という壮大なネタフリ後のフロアの景色は、まるで『ワールド・ウォーZ』でエルサレムの壁を乗り越えるゾンビの大群のような壮観。「これ、CGじゃなくて現実だよね」と、呆気にとられるしかなかった。さらにオーディエンスに「包茎のヤツだけステージに上がれ」と呼びかけ、ステージに上がってきた男子をその場でメンバー全員が肩を組んで包茎チェック。10数人の包茎ボーイズとともに、バンド初期のアンセム「握れっっ!!」で完全昇天。なんでもありにもほどがある、楽しすぎるにもほどがある、2時間弱に及ぶ圧巻のステージは終演を迎えた。
人気上昇とともにフェスへの出演をもったいぶるバンドも多い中、今年の夏のホルモンは全国各地のフェスにも積極的に出演してきた、とてもフェス・フレンドリーなバンドだった。おかげで自分も各地のフェスで、その雄姿とオーディエンスの熱狂ぶりを何度も体験することができた。でも、やっぱりフェスとツアーのライブではその濃度も密度もまったく違う。チケットの入手が非常に困難なので気軽には言えないが、それでも最後に敢えて言わせてもらおう。「フェスでホルモンを観た気になるなよ」と。(宇野維正)
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