限定公開( 21 )
関東甲信と東北地方で2月、記録的な大雪が降った。東京都心で積雪25cmを記録したのは、実に45年ぶりだったという。まとまって降る雪は珍しいということで、外へ出て子どもや友だち、恋人らと遊んだ人も多かっただろう。家の玄関や店の軒先、公園などには、いくつもの雪だるまが作られた。
【関連記事:第1志望の大学に合格したから「滑り止め」は辞退! 納めた「入学金」は返ってくる?】
雪だるまは、道路脇にたたずんでいることも多いが、近くを通りかかった人に蹴られたり殴られたりして、破壊されることがある。いずれ解ける運命だとわかっていても、作った人にとっては、悲しいものだろう。「犯人」を見つけたら、文句の一つも言いたくなるのではないか。
|
|
では、雪だるまを壊した「犯人」は、物を勝手に壊したとして「器物損壊罪」に問われるのだろうか。加藤英典弁護士に話を聞いた。
「刑法上の器物損壊罪として罪に問われる場合は、限られてくると思います」
|
|
加藤弁護士はこのように指摘する。なぜだろうか。
「器物損壊罪に問うには、雪だるまが『他人の物』であることが必要です(刑法261条)。
ところが、空から降って地面に積もっている雪は、誰の物でもありません。雪だるまを自分の物にするには、雪だるまを作り、それを『所有の意思をもって占有すること』が必要です(民法239条)。
|
|
一般的には、遊びで雪だるまを作り、そのうち解けてなくなってしまう状態で放置していた場合、それを『所有の意思をもって占有』したとはいえないでしょう。したがって、雪だるまが壊されたとしても、その『犯人』を器物損壊罪に問うことは難しいでしょう」
裏返すと、雪だるまが「他人の物」と言える状況なら、話は変わってくるのだろうか。
「そうですね。事情によっては話が変ってきます。
2010年の旭川市で、地元の商店街等が作って公園に置いていた雪だるまが何者かに壊された、という事件がありました。その際には、警察が器物損害罪の容疑で捜査したようです。
報道によれば、イベントでの雪だるま展示を目的とし、そうそう簡単には解けたり壊れたりしないように制作していたという事情があったようです。
このように特別な事情があれば、雪だるまが『他人の物』であるとして、『犯人』が器物損壊罪に問われることも、なくはないとは思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
加藤 英典(かとう・ひでのり)弁護士
埼玉県出身。都内法律事務所勤務を経て埼玉県所沢市で開業。一般民事(倒産、消費者、離婚、相続など)と刑事事件を中心に取り扱う。袴田事件などの弁護団事件でも活動。
事務所名:所沢りぼん法律事務所
事務所URL:http://ribbon-law.jp
|
|
|
|
Copyright(C) 2024 bengo4.com 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。