MUCCが意図的にギャップを生み出す理由とは? 自由度の高い活動で新たなシーンを開拓

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2014年06月24日 11:50  リアルサウンド

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6月25日にアルバム『THE END OF THE WORLD』をリリースするMUCC

 MUCCほど激しい“ギャップ”を感じさせるバンドは他にいないと思う。


 まずは音楽性について。このバンドは時期によって音楽のスタイルを大きく変えている。90年代後半にダークで陰鬱な雰囲気を持ったビジュアル系バンドとしてシーンに登場。‘00年代はモダンヘビィロックに接近、会場でダイブ&モッシュが頻発するようになり、ライブの様子も一変する。その後はエレクトロ、テクノといったダンスミュージックの要素を大胆に取り入れるなど、ファンが混乱するほどの変貌を繰り返しているのだ。‘12年5月に幕張メッセで行われた15周年記念ライブ『MUCC vs ムック vs MUCC』では、「1997〜2002 -密室-」「2002〜2007 -死生-」「2007〜2012 -鼓動-」という3部構成によって、それまでのキャリアを総括。改めて、その音楽的なギャップの大きさを印象付けた。


 ライブに対するスタンスもきわめて個性的だ。現在彼らは、バンド史上規模となるツアー『SIX NINE WARS ―ぼくらの七ヶ月間戦争―』の真っ最中。毎月異なるコンセプトを掲げ、7カ月連続で行われるツアーなのだが、注目すべきはその内容。たとえば8月に行われる「Episode 6.ARMAGEDON」では公演ごとに異なるアーティストとの2マンツアーで、対バン相手は[Alexandros]、氣志團、GRANRODEO、BUCK-TICK、ゴールデンボンバーなど、まさに異種格闘技状態。ちなみに4月のツアーではthe telephones、THE BACK HORN、SEBASTIAN X、ストレイテナーなどと対バン。このふり幅の広さもまた、MUCCの魅力だろう。


 5月にリリースされたシングル『ENDER ENDER』のミュージックビデオでも、意外性のある仕掛けが施されていた。このビデオのスペシャル・バージョンに“ムック”と“ガチャピン”が参加。ライブに飛び入りしてオーディエンスを煽り、最終的には客席のサークルモッシュに巻き込まれるという映像を公開し、ネット上で大きな注目を集めたのだ。


 こういった企画性の高さもMUCCの大きな特徴。バンドのイメージを良い意味で裏切り続けることにより、活動における自由度の高さをキープしながら、より幅広いオーディエンスにアピールする。ビジュアル系は本来コアなファンを中心としたシーンだが、そこに伴う閉鎖性を打破し、常に新しいファンを獲得しているMUCCの存在はきわめて刺激的だ。過去のインタビューのなかでリーダーのミヤ(G)は、ザ・ローリング・ストーンズを例に出し、「(一般的には)ロックンロール・バンドっていうイメージですけど、じつはいろんなことチャレンジしてるじゃないですか。そういうバンドが好きなんですよ。作品ごとにガラッと変わって、ファンの意見も分かれるっていう。自分たちもそうありたいと思いますね」と発言しているが、そうやって意図的にギャップを生み出そうとする姿勢こそが、MUCCの活動の軸なのだと思う。


 そして6月25日にリリースされるニューアルバム『THE END OF THE WORLD』は、刺激的なギャップを生み出すMUCCの特徴がこれまで以上に反映された作品に仕上がっている。このアルバムの裏テーマとしてミヤは井上陽水の「氷の世界」を挙げている。じつはミヤとボーカルの逹瑯は70年代のフォーク・ミュージックに造詣が深く、本作にはその影響がダイレクトに出ているのだ。そのコンセプトは“強い言葉と強い音”。70年代フォークが持っていた強い批評性、メッセージ性を想起させる歌詞、そして、モダンヘビィロック、ダンスミュージックなどを融合させたバンドサウンドがぶつかり合い、強烈なオリジナリティを持ったロックへと結びつける――『THE END OF THE WORLD』によってMUCCの独自性、そこに伴うギャップのおもしろさは、さらに多くのリスナーに浸透していくことになりそうだ。(文=森朋之)



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  • よかったなぁ。ムック。すっごい好意的な記事。
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