ホンダF1第5期はバッテリーを日本で開発へ「エンジン本体と一緒にした方が有益」/渡辺康治HRC社長インタビュー(2)

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2023年07月07日 12:10  AUTOSPORT web

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2023年F1第10戦オーストリアGP 角田裕毅のアルファタウリAT04
 2023年F1第10戦オーストリアGPを訪れたホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長。ホンダは2026年からアストンマーティンにパワーユニット(PU)を供給するが、2025年まではレッドブルに対しこれまでと変わらないサポートをすることをお互いに確認しているという。今回は2026年からのバッテリー開発やスタッフの雇用、そして若手ドライバーの育成などについて訊いた。

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──2021年までヨーロッパの拠点となっていたミルトン・キーンズにあるHRD UKは、現在は大幅に縮小されました。第4期ではミルトン・キーンズでバッテリーの開発をしていましたが、今後はどうしていくつもりですか。

渡辺康治HRC社長(以下、渡辺社長):第5期に関しては、バッテリーのメインの仕事は日本(HRC Sakura)に戻そうと考えています。したがって、それまでヨーロッパでバッテリーの仕事をしていたスタッフに関しては、大幅に減ることになります。そうなった場合、ホンダが2026年以降にF1を戦っていく場合、ヨーロッパで何が必要なのかを精査しているところです。それを決めてから、それらのスタッフの仕事場となる箱(ファクトリー)を決めていくことになるでしょう。

──第4期にミルトン・キーンズでバッテリーの開発をしていたのは、輸送上の問題があったからだと聞いています。今後は日本から輸送できるのですか。

渡辺社長:いや、かつても日本から輸送できたのですが、デメリットのほうが大きかったので、そうしなかっただけです。しかし、第5期のバッテリーは容量が増えることで、エンジン本体と一緒に開発した方がメリットがあり、それがデメリットを上回ったということです。

──いままでは全体のパワーの約20%しかバッテリーから出力できなかったのが、今後は約50%となるということで、もっとエンジンと一緒に開発していかないとそれを活かすことができないというわけですね。

渡辺社長:その通りです。当然、レースで使用したパワーユニットのメンテナンスは必要で、ヨーロッパの拠点は必要なので、設けることにはなります。

──6月下旬にHRD Sakuraで行われた記者会見に参加できなかったのですが、そこで「年内にはパワーユニットを合体させたい」と語っていたと聞いています。その目的は?

渡辺社長:ライバルたちの動向を見ていますと、だいたいそこらへんで合体させるということなので、それに合わせているだけです。ただ、それができるかどうかはまだわかりません。

──ちなみにアストンマーティンの新しいファクトリーが5月から動き出しています。たとえば、そのなかに間借りするというのはひとつの選択肢としてあり得ますか。

渡辺社長:あると思いますよと言ってしまうと、あるみたいに書かれてしまうので、何も決めてしませんとしか、いまは言えません。もちろん、選択肢としては、自分たちで新しい場所を探す。またはアストンマーティンのなかに間借りする。そして、レッドブル・パワートレインズへ譲った場所を戻して使うの3つがあります。いずれにしても、それを決める前に、自分たちの業務を決めてからになります。

──箱に関しては、わかりました。では、そのなかに入る人についてはどうですか。たとえば、かつてHRD UKで仕事をしていて、2022年からレッドブル・パワートレインズへ転籍したスタッフに関しては、レッドブルとの間でどのような状況となっているのでしょうか。

渡辺社長:HRCがレッドブル・パワートレインズへ転籍したスタッフを引き抜くことはできないという契約になっています。ただ、彼らがホンダに戻りたいというケースはグレーゾーンになっているので、それに関しては慎重に進めたいです。

──冒頭におっしゃっていた、今後のドライバー育成に関してですが、クリスチャン・ホーナー代表にモナコGPで直接尋ねたところ、「2026年以降に一緒にやることは難しいだろう」と言っていました。渡辺社長も同じような見解ですか。

渡辺社長:基本的には難しいでしようね。ただし、2025年まではうまくコラボレーションしていくことは合意しています。

──ただ、2026年からホンダがアストンマーティンへパワーユニットを供給することがわかっていて、現在ホンダとともに育成している日本人ドライバーを2025年末まで真剣にサポートしていくのでしょうか。

渡辺社長:育成システムが別々になるのと、レッドブルが育成している日本人ドライバーの将来は切り離して考えたほうがいいと思います。というのも、彼は国籍ではなく、勝てるドライバーが欲しいからです。したがって、2026年以降もレッドブルがレッドブル・ドライバーとして活躍している日本人ドライバーを彼らが用意するシートに乗せてレースすることは可能です。というか、それを我々が拒否することは契約上できないと思います。

──2024年のアルファタウリのシートに関して、フランツ・トスト代表は岩佐歩夢を候補のひとりに挙げています。現在、アルファタウリには角田裕毅選手がいますが、もし日本人ドライバーがふたりになったとしても、F1に乗るチャンスがあれば、ふたりに金銭的な面でのサポートをする可能性はホンダにはありますか。

渡辺社長:ある程度、F1を走らせているドライバーに関しては、そういうサポートは必要ないと思いますが、新しいドライバーというのはクルマを痛めてしまうリスクが高いので、もしチャンスがあれば、検討することは十分あります。

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