前回からの続き。私(ナツキ)は、夫のトモヤと2人暮らしをしていました。トモヤとは高校の同級生。私たちは高校時代に一度、新しい命を授かりました。しかし、どうしても「産む」という選択をすることができなかったのです。それでも私たちは交際を続け、社会人になってから結婚。幸せに暮らしていましたが、どれだけ望んでも子どもを授かることはできませんでした。葛藤を乗り越えながら10年以上続けた妊活も、40歳を過ぎた頃に終止符を打ちました。これからは2人で生きていこう。そう思っていた矢先、トモヤから「好きな人ができたから離婚してほしい」と切り出され、さらに相手の女性の妊娠を告げられます。トモヤや義両親が幸せになるなんて絶対に許せない。自分の心と顔がどんどん憎しみに支配されて醜くなっていくのは分かっていましたが、それを止めることはできませんでした。
トモヤのことがあってから、食欲もないのでまともな食事をとっていませんでした。そのせいもあってか、職場でもボーっとして、仕事に身が入りません。
そんな私の様子を心配した、職場の先輩のユミさんが、お昼休みに公園へ誘ってくれました。
ユミさんのお子さんの話を聞いているうちに「私もあのとき産んでいたら……」という想いがあふれてきてしまいました。
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ここ数日、まともに食事をとっていませんでした。
職場の先輩であるユミさんはとても心配してくれていました。
お子さんのお弁当の残り物を詰めたユミさんのお弁当は、温度こそありませんでしたがとても温かい味がしました。
それは私が欲しくてたまらなかったものでした。
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過去の自分を悔やんでも、もう時間は戻りません。
そして自分の苦しみが大きければ大きいほど、そこから一抜けして幸せになろうとしているトモヤに対する恨みが募るばかり。
でも人の不幸を願うしかできない自分のことも、心底嫌いになっているのでした。
【第7話】へ続く。
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