衆院本会議に出席した江藤拓農林水産相=20日午後、国会内 石破茂首相が江藤拓農林水産相を更迭させる方向となったのは、立憲民主党など5野党がそろって交代を求め、続投は困難な情勢になったためだ。一度は続投を指示しており、後手に回った形。政権維持が懸かる夏の参院選を控え、与党内からは首相の判断の遅れに批判の声が出ている。
立民、日本維新の会、国民民主、れいわ新選組、共産の5党国対委員長は20日、国会内で会談。立民の野田佳彦代表が21日の党首討論で、首相に更迭を直接要求し、応じなければ農水相不信任決議案の提出に向けて検討に入ることで一致した。
立民の笠浩史国対委員長は会談後、「資質が問われる発言だ。続投は許されない」と記者団に強調。5党は現在、衆院で230議席を有し、過半数の233に迫っている。立民は党首討論後、参政党などにも参加を呼び掛け、野党国対委員長会談を開く考えも示した。
立民は、幹部が19日に「今の段階で不信任提出はない」と語るなど推移を見極める構えだった。コメ対策の陣頭指揮に当たる江藤氏更迭を訴えれば、世論の非難が「ブーメラン」として返ってくることも懸念したとみられる。
潮目が変わったのは20日だ。SNSでは江藤氏への批判が収まらず、テレビ各社も集中的に報道。立民は江藤氏更迭要求にかじを切った。
これに対し、首相は19日夜、首相官邸に江藤氏を呼び厳重注意した上で、引き続き職責を果たすよう指示。20日の衆院本会議でも「国民の理解が得られるよう職務にまい進し、農政の課題の解決に全力を尽くさせたい」と立民議員の更迭要求を拒否した。江藤氏も参院農水委員会で「苦しくとも批判を浴びても、歯を食い縛って最後までやり遂げる」と述べた。
ただ、公明党の西田実仁幹事長は20日午前、自民の森山裕幹事長と東京都内で会談し、「発言は極めて不適切。国民にしっかり寄り添うべきだ」と苦言。与党内では米価高騰に苦しむ国民を逆なでする発言に、当初から続投を危ぶむ声が出ていた。自民重鎮は「19日に官邸に呼んだ時点で判断できた」と指摘した。

江藤拓農林水産相の発言について陳謝する石破茂首相=20日午前、首相官邸