
男性が育休を取るようになるなど、この数十年で性別役割分業についての考えは徐々に変わったように感じる。しかし40代男性(サービス・販売・外食/年収650万円)が子育てをする時期には、まだ周囲の理解を得るのも難しかったようだ。
25歳で調理師学校を卒業してレストランに就職した男性。在職中に結婚をし、子どもが生まれるタイミングで退職を決めた。退職後は、約1年間「調理場という環境から離れ、アルバイト等で収入を得ながら」奥さんと共に育児に専念していた。
「その期間の収入は十分ではありませんでしたが育児をすることを目的に妻と共に貯めた貯蓄を切り崩しながら生活していました」
育休を終えて再就職のため面接に訪れると、
「男が育児?笑えるんだけど」
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などと嘲笑されたというのだ。(文:長田コウ)
「この時点で多少違和感を感じつつも…」
今から約15年前の当時について、こう明かす。
「まだまだ時代的にも職種的にも男性の育児休暇を取ることも難しく、当時はそのような制度のことも知らなかったため退職という形で育児休暇をとっていました」
育児も落ち着いた1年後、男性は就職活動をし始めた。家族が増え、使うお金も多くなったためか、「個人のレストランではなく外資系のホテルのレストラン」に応募したという。幸い、2つのホテルから面接の案内が来た。偶然にも2日連続で2件の面接をすることになったのだが、衝撃を受けた面接は1件目の方だった。
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場所がホテルであるため、「エントランスからの案内等はホテルの従業員の方が丁寧に案内」してくれ、面接を行う会議室に入った。そして、「厨房の責任者」から分かりやすい説明と10分ほどの質疑を受けたそう。
「当時、個人店でしか働いたことがなかったのでホテルの料理人の方の丁寧で落ち着いた雰囲気にとても好印象でした」
と振り返っている。問題は、その後の人事部長との面接だった。
「経歴等の本格的な面接に入った時でした。明らかに面倒といった態度で椅子に勢いよく座りネクタイを緩め、この時点で多少違和感を感じつつも面接が始まり自己紹介を終えるくらいで食い気味に、無職の間の一年についても話になりました」
外資系のホテルだったが、人事部長は「日本的な考えの強い方」だったそう。冒頭の通り
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「『男が育児?笑えるんだけど』と言われてニタニタしながら質問され、当時まだまだ少数だったこともあり冷静に受け答えしていました」
大人の対応をした男性に、人事部長の非難は止まらなかった。
子どもの運動会は「仕事で成功してないやつが行くもの」
「若いのに1年も出遅れてるんじゃうちのホテルでは使えないな。お子さんも苦労するな」
この一言には、さすがの男性も我慢できず「失礼ですが、育児の経験は?」と質問すると
「子ども2人で育児は女の仕事、男は稼ぐのが仕事。運動会も、参観日も行くもんじゃない」
と返されてしまった。さらに、「ああいうのは仕事で成功してないやつが行くもの」だと誇らしげに話していたようで、男性からしてみれば貶された気になるだろう。そこで、負けじとこんな反論をした。
「育児の大変さもわからず、奥さんに押し付けて悪気もなく、学校行事に参加してもらえない子どもたちの方がかわいそうではないでしょうか?」
すると、驚くことに「そこから10分ほど『男とは』といった内容のこと」を永遠語りだしたのだ。もちろん話はこれで終わらない。ここから約10年後、驚くことがあったという。【後編へ続く】
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