警察庁=東京都千代田区 警察と金融機関が協定を結び、口座のモニタリング情報を特殊詐欺対策に生かす取り組みは、既に多くの検知情報が警察に提供され、被害を直前で防ぐ成果が出ている。
警察庁は1月にゆうちょ銀行、2月にペイペイ銀行と協定を締結。他に43都道府県警が400余りの地銀や信金などと同種の協定を結ぶ。5月末までに計1866件の情報提供があり、うち1262件が実際の被害者、45件が加害者側の口座と判明した。関係者は「調査中のものもあり、精度は極めて高い」と話す。
精度を支えるのが、モニタリングの条件付けだ。警察と金融機関のやりとりで▽ATMから上限いっぱいの引き出しが続く▽投資利益と思わせる「見せ金」の入金後に高額の出金が始まる―など詐欺で多い特徴を反映させ、被害口座をあぶり出す。
5月に大阪であったケースでは、ゆうちょ銀行が被害例と似た資金移動をする口座を検知。これを基に警察が口座の保有者に連絡し、被害を防いだ。警察官をかたる手口で、被害者の80代女性は指示されて約1週間で計1600万円を引き出し、自宅に置いていた。警察の連絡がなければ、3日後に犯人側が受け取りに来る予定だったという。
また、埼玉県警は詐欺捜査で凍結した口座情報を、協定を結んだ金融機関と共有。入金記録を被害防止に生かしており、初回に振り込んだ数千円だけで被害が止まった例もあった。
捜査幹部は「迅速な対応で全額失う前に被害が止められる。連携を密にし、検知体制を強化したい」と話した。