「男同士が引っ張っているのは嫌」玉木雄一郎氏の発言を擁護する人々が見落としていること

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2024年11月02日 09:21  日刊SPA!

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記者団の取材に応じる国民民主党の玉木雄一郎代表 写真/産経新聞社
◆玉木雄一郎氏の発言に波紋
 衆院選で大躍進した国民民主党の玉木雄一郎代表の発言が波紋を広げています。10月29日放送の『ひるおび』に出演した際、自民党と立憲民主党からラブコールを受けて玉木氏が両腕を引っ張られる様子を描いたイラストが示されると、「これ、嫌ですね。この、男同士が引っ張っているのは。気持ち悪い絵ですね、これ」と、冗談交じりに語ったのです。

 さすがにこのご時世に、ちょっとワキが甘すぎやしないか。さぞかしネット上でも非難轟々か、と思いきやそうでもないようなのです。

 Yahooニュースのコメントには、“言葉狩りが過ぎる”とか“玉木さんに他意はない。同性愛が生理的に無理だと感じる感性すら否定されるのはおかしい”と、玉木氏を擁護する意見が大半を占めていました。

 自身が同性愛者だと公表している立憲民主党の石川大我参院議員は<仮に、女性2人から引っ張られていたらどうだろう? 『嬉しい悲鳴』などではないか? そう考えると、異性愛=良いこと、同性愛=気持ち悪い、との考えが透けて見える>と自身のXで指摘。

 筆者も石川議員の見解の通りだと考えます。たとえ玉木氏に悪意がなかったとしても、むしろ悪意ではなく軽いジョークで同性愛を連想させる状況に落とし込んでユーモアを発揮したと考える発想そのものが、やはり時代遅れなのです。

◆「内心の自由」は言い訳にならない

 とはいえ、玉木氏にも当然内心の自由は認められています。よって、いち個人として今回のイラストを気持ち悪いと感じること自体は何も悪くありません。

 しかしながら、日本はG7を構成する一国です。先進国として、性の選択の自由や多様性を認めるという立場にあります。そこで、将来的に首相になり得るポジションにまで上り詰めた政治家の発言として考えるなら、事情が変わってきます。

 それでも、“なんでも欧米の価値観に迎合する必要はない”と思う人もいるかもしれません。たとえば、玉木氏がトランプ前大統領のようなポジションを目指しているのだとしたら、同性愛を茶化すような言動を取るのもわかります。それが支持層にアピールする、効果的なメッセージとなるからです。

 しかし、それが玉木氏の目指すところなのでしょうか? 国民民主党の政策やPR動画からはそんな様子はうかがえません。むしろ、大平正芳元首相から連なる穏健保守を標榜する政治を目指すとの矜持を示しています。同性婚やジェンダーフリーに対して強硬な態度を取ってきた安倍晋三元首相的な“保守”とは明らかに異なる信念を持っている。実際、昨年5月26日には与党案を修正した「性多様性理解増進法案」を国民民主党として提出しています。

 そうした政策に加えて、現役世代の共感を得た景気対策案によって、政権を任せられる勢力であると評価され今回の躍進があったのですね。

 だから、今回の玉木氏のリアクションは、残念だったしうかつだったと言わざるを得ないのです。

◆問題は「擁護の声」が大きいこと

 もっとも、玉木氏も人間ですからミスもします。選挙のストレスから解放されてホッとする気持ちもわかります。むしろ、問題はこの玉木氏の発言を擁護する声が大きいということなのではないでしょうか。

 玉木氏の発言に理解を示すコメントを見ていると、“そんな揚げ足ばかり取るから息苦しい世の中なのだ”という空気があるように感じます。

 確かにそういう風潮はあるでしょう。トランプ氏が最初に大統領に当選したとき、彼を支持した俳優のクリント・イーストウッドは、「軟弱な時代だ。誰もが発言に細心の注意を払う」、「内心ではみんな、ポリティカルコレクトネスに媚びるのはうんざりしているんだ」(『ハフィントン・ポスト』2016年8月5日)と語り、社会の閉塞感を訴えました。

 けれども、イーストウッドは前回の大統領選ではトランプ支持を撤回。トランプ氏の手法を、下品だと断じたのです。(AFP通信2020年2月23日)

◆私人と公人の違い

 ここからうかがえるのは、私人と公人の違いということなのでしょう。同性愛に対する感想を思うように言うことは私人の領域であり、もしもそれを今の時代に公人として表明するのならば、それなりの信念と代償を払う覚悟がない限り、軽々にすべきことでないのです。

 つまり、ネット上の玉木氏の発言を大目に見ようという態度は、結果として玉木氏を私人の領域にとどめることになり、それは政治家、玉木雄一郎を支持することにはならないのです。

 だから、玉木氏にさらなる飛躍を望むのであれば、心を鬼にして厳しく批判しなければならないのです。

文/石黒隆之

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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  • 活動家の言い分はいつも「少数派の声も聞け」ではなく「少数派の声だけを聞け」なのだ。同性愛者を差別する民族性はないが学校で教える必要などない
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