年末年始の帰省。コロナ禍に思うように帰省できなかった時期を経て、家族や親戚と笑顔で年越しできるようになったのは喜ばしいことですよね。とはいえ帰省にはあれこれ面倒がつきもの。憂うつなポイントがある方も多いのではないでしょうか。
斉藤幸子さん(仮名・39歳)は、秋田県の実家から東京の大学に進学し、そのままIT系の会社に就職。順調に昇進を重ね、今では営業企画部のマネージャーとして忙しい日々を送っています。休みの日には同世代の友人とリゾートに旅行するなど、プライベートも充実。東京での生活を満喫しています。
◆憂うつな帰省、そのワケは?
そんな斉藤さんですが、年末年始の帰省は、実はものすごく憂鬱なのだとか。
「わたしは長女で、4人の弟妹がいます。そしてみな地元の秋田に住んでいます。長男が同居しており、両親の面倒を見ることなどを考えなくていいのはとてもラクなのですが、ひとつだけ困ったことがあるんです」
地元で暮らす4人の弟妹は、次々に結婚。お祝いにかけつけてはご祝儀をはずみ、4人とも結婚したときには素直に「おめでたい」と思いました。そこからは出産ラッシュがスタート。最初の姪が生まれたのを皮切りに、おめでたが続きます。
「姪っ子が初めて生まれたときは、本当にかわいいなぁと幸せを感じました。出産祝いもはずんで、一緒にベビー服を買いに行ったりしました。ですが本当に毎年のように甥や姪が生まれるんです」
まだ赤ん坊のころは良かったものの、徐々に子どもたちが大きくなってくると、帰省の際にはクリスマスプレゼントやお年玉を用意するようになった斉藤さん。初めは気前よくプレゼントしていましたが、徐々に負担に感じるようになりました。
◆待ち受けていた「地獄」とは?
「一人にあげれば、他にも同等に……。と思い、あれこれプレゼントを買うことになります。そしてお年玉も、子どもが徐々に大きくなると、それなりの金額をあげなければいけない気がして……」
そうしてズルズルとクリスマスプレゼントやお年玉をはずむ年末年始を繰り返し、気づけば4家族に3人ずつの子どもが生まれ、合計12人にもなっていました。
「兄弟の中で独身はわたしだけ。弟妹の家同士は、お下がりをあげたりもらったり、プレゼントも交換したり、今回はなしにしようなどの取り決めがあるようですが、わたしは普段東京にいるので『なしにしよう』とも言いにくく……。12人分のプレゼントとお年玉地獄。そして交通費で結構な出費になっています」
さらに、兄弟たちはひとり都会で働く斉藤さんに「東京の会社勤めって収入いいもんね〜?」と少しせびるような口調で言ってくるのもモヤモヤの原因。収入が良いといっても都会暮らしにはお金がかかります。
家族がいなくても自分に投資してお金はそれなりに出ていくもの。年に1〜2回しか会わない甥や姪にお金をばらまけるほどリッチではありません。ですが両親のそばにいてくれることを考えると、あまり嫌な顔もできず、モヤモヤしたまま毎年帰省しているという斉藤さんですが、不満はたまる一方のようです。
「最近は弟妹たちもプレゼントやお年玉をもらえるのが当たり前のようにふるまうこともあり、『わたしは金づるか!?』と思うこともあります」
◆もうひとつ憂うつのタネが…
さらに斉藤さんの気分を憂うつにさせるのが、両親や親戚の何気ないひとこと。親戚が集まる場で独身なのは斉藤さんひとりだけ。周りも気を使ってくれてはいるようですが、ふとした一言に敏感に反応してしまうこともあるそう。
「なにしろ4家族と子ども12人集まるだけでもすごいのに、叔母や叔父も集まる大宴会が開かれると、どうしても話題は子どもたちの話になります。わたしもある程度合わせて聞いているのですが、習い事や塾の話など、まったくついていけないし、興味もないので疲れます。そのうえ叔母などが『東京は習い事も種類もいっぱいあるんだってねぇ』なんて悪気なく話を振ってから『しまった』という顔をするので、ゲンナリしますね」
都会生活では独身の友人に囲まれて寂しさも息苦しさも感じることがない斉藤さんですが、帰省した時だけは心が疲れてしまうそう。
◆帰省のたびに揺れる気持ち
「やっぱり自分も結婚したほうが良いのかな、とか、子どもを産むべきなのかな、とか揺れますね。ちょうど微妙な年齢ですし。けれど東京に戻って日常生活をしていると、やはり居心地が良いです。
弟妹からしたらわたしは一人大学を出て『東京に出た勝ち組』みたいに見えるのでしょう。期待を背負っている分、帰省時ぐらいは良い顔をしようかなと最近は半ばあきらめています」
子どもたちが大きくなってしまえばこの「金づる地獄」から解放されるだろうと期待しつつも、まだ一番下の子は4歳。まだまだ先は長いとため息をつきつつ、今年も帰省を決めたそうです。
<文/塩辛いか乃>
【塩辛いか乃】
世の中の当たり前を疑うアラフィフ主婦ライター。同志社大学文学部英文学科卒。中3繊細マイペース息子と20歳年上の旦那と3人暮らし。乳がんサバイバー(乳房全摘手術・抗がん剤)。趣味はフラメンコ。ラクするための情熱は誰にも負けない効率モンスター。晩酌のお供はイオンのバーリアル。不眠症。note/Twitter:@yukaikayukako