2025年度の国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)見通しが黒字転換から一転、赤字となった。自民・公明両党が少数与党となり、野党の要求を受け入れざるを得ず、今後も歳出増圧力は強まる一方だ。政局次第でPBがさらに悪化する可能性があり、財政健全化の道筋は見通せない。
25年度のPB悪化は、所得税の最低課税ライン「年収103万円の壁」の見直しで、所得税の基礎控除と給与所得控除の合計額を123万円に引き上げることに伴う税収減も一因だ。「壁」見直しを訴えて先の衆院選で躍進した国民民主党は178万円への引き上げを主張。日本維新の会は高校の授業料無償化を求める。与党は25年度当初予算の成立に野党の協力を不可欠としており、これらの要求に応じればPBは一層悪化する。
コロナ禍で膨張した歳出構造の「平時化」も課題だ。石破政権の支持率が低迷したまま参院選が近づけば、ばらまき的な経済財政運営を求める声が与党内から強まる可能性がある。歳出改革なしには26年度のPB黒字化もおぼつかない。
日本の名目GDP(国内総生産)に対する債務残高比率は先進7カ国で最悪の水準だ。日銀の政策転換で「金利のある世界」が到来し、国債の利払い費増も見込まれる。
17日の経済財政諮問会議で、民間議員は「(25年度PBが赤字予想となった)結果の検証・反省を次につなげ、財政の信認を確保することが重要だ」と指摘。経済財政運営の基本指針「骨太の方針」の策定過程で、早期のPB黒字化を含む財政健全化への取り組みを議論するよう求めた。