こしょーさん令和に突入して7年目になる今、ファッションや音楽などの分野で平成リバイバルが巻き起こっています。
中でも、90年代から最盛期を迎えた”ギャル文化”が勢いを増し、SNSではパラパラを踊る人やY2Kファッションをまとう若者の姿が見られるようになりました。
そんな中で、全国で数人ほどしか残っていない絶滅危惧種の“ギャル男”が、東北に存在していることが話題を呼んでいます。今回は、CMやPV出演で注目を集めている東北唯一のギャル男・こしょーさんにお話を伺いました。
◆「車の大会で勝ちたくて」ギャル男スタイルに
ーーこしょーさんがギャル男になったきっかけを教えてください。
こしょーさん:もともと、中・高生のときにギャル男で、派手な格好をずっと続けてきました。
でも一回、ギャルがあまりにも女の子にモテない時代がやってきたときに“悪羅悪羅(オラオラ)系”っていうEXILEっぽいジャンルにシフトしたんです。ちょっとやんちゃな感じで、短髪にして体を鍛えて、みたいな。
ーー再びギャル男になったきっかけというのは、何だったのでしょうか?
こしょーさん:僕、車が趣味で、外装や内装を競うドレスアップカーの大会とか出ててるんですよ。参加者はみんなお金をかけて車をカスタムするので、大会で勝つのって結構大変で。
手強いライバルたちの中でどう目立とうかって思ったときに、自分の内なるギャルらしさを出していこうと考えたんです。
平成に流行った改造車を作って、トランクにスピーカーを組んでパラパラ系の音楽を流して踊ったら目立つんじゃないかなって。で、踊るんだったらやっぱ見た目もギャルがいいじゃんみたいなノリでやったら、SNSでめちゃくちゃバズって。そこから、もうちょっと本格的にギャルやろうと思って復活させたんです。
ギャルってマジで全国見ても誰もいなくねって思ったのが、きっかけでしたね。
ーーじゃあ、東北ではこしょーさんが唯一のギャル男になるのでしょうか。
こしょーさん:そうですね!日本規模で見ると、今のところ5人くらいです。でも、最近僕のSNSを見てくれた10代20代の子で、ギャル男に憧れてくれる子もいます。
新宿のクラブで遊んでたときにインスタにその様子をあげたら、少しの手がかりを頼りに僕たちのことを探して会いに来てくれた若い子もいましたよ。
◆夜行バスで通う仙台と東京の二拠点生活
ーー今は仙台に住んでいらっしゃるそうですが、お仕事するにあたっては東京のほうが便利なんじゃないですか?
こしょーさん:そうですね。もともと出身は岩手なんですが、高校卒業後に友だち5、6人くらいで急に「仙台に行こうぜ」みたいなノリになって、そこからずっと仙台住んでますね。
都内の方に引っ越そうかと思ったこともあるんですけど、結局一番優先したいのが車なんですよね。あの派手な車を都会に持っていくとなると、ちょっと心配で。
東京はバスですぐ行けちゃうので、ずっと仙台に住んでいます。
ーーこしょーさんって、ここまで稼ぐようになっても東京までバスで通っていらっしゃるんですか!?
こしょーさん:僕、ケチなんですよ(笑)仕事で呼ばれるときは新幹線に乗りますが、遊びに行くときは基本、夜行バスで行ってます。新幹線とバスで差額8,000円くらいあるので、だったら車とか服とかにお金使いたいなっていう。
◆毎月5万円かけてギャル男を維持
ーー夜行バスに乗るときも、ずっとギャルの見た目なんですか?
こしょーさん:寝て起きたらこの形になるようにしてますね。最近、近所のコンビニに行っても、店員さんに声かけてもらえるようになったし。
ギャルって、とんでもないお金と手間がかかるんですよ。メンズの自分でも、毎月5万はかかっちゃうくらいなんで、維持費が足りなくてギャルを諦めてしまう子も多いです。
今年2月に仙台でオープンしたギャルバーでは、そういったギャルスタッフの悩みに応えるべく、ギャルの維持費を福利厚生として支給しています。
僕は、最近はもう髪のセットはプロにお任せしています。自分で身なりを整えるのに2時間かかるので、その時間を仕事する時間に使っていますね。
ーーほかに、ギャルとして気を遣わないといけないところってありますか?
こしょーさん:一番気を遣わなきゃいけないことが、体型維持です。中学の頃、先輩に「ギャル服はデブの着るもんじゃない」ってずっと言われてて。ギャル服って素材が伸びないし形がキレイに決まっているので、着る人を選ぶんです。
ただ細いだけじゃかっこ悪いんで、食事管理しながらトレーニングしてます。あとは、肌が黒いこと。白いとV系と間違われちゃうんで、色黒はマストです。
◆中学の先輩から受け継いだギャル男の美学
ーー中学校のギャルの先輩って、ただやんちゃをする仲間なだけだと思っていました。先輩たちは、ギャルの心得まで教えてくれる存在だったんですか?
こしょーさん:たぶん、マウント的な意味もあったと思いますが(笑)中学のギャルやってた先輩たちって、めちゃくちゃイケメンだったんですよ。カッコいい人たちに言われた言葉が今でも刺さってて、体型に関してはすごく意識してますね。
ーー私もこしょーさんと同世代・同郷なので分かるのですが、当時って田舎のカッコいい・かわいい先輩は、みんなギャルでしたよね(笑)だから自然と、ギャルに憧れるというか。
こしょーさん:そうですね。ガラケーで前略プロフィール作って、どこ中の誰々先輩かっこいい、とかやってました。仲間とよく「ギャルナンパしに行こーぜ」って言って電車に乗って、別な街にある映画館があるビルで遊んだりもしました。そうしてると、自然とネットで見たことあるギャルに出会うみたいな(笑)。
地元の盛岡は2007〜2012年頃、ものすごくギャルが多い場所でした。田舎って都会で流行った文化が遅れてくるみたいなところがあるじゃないですか。自分が中高生の頃は、全然ギャルが全盛期みたいな時代でしたね。
◆“スパルタ教育”の反動がギャル男のきっかけに
ーー現在はSNS収入や出演のギャラが収入源だと思いますが、それまではどのような仕事をされてきたんですか?
こしょーさん:18歳で仙台に出てからは、キャバクラのボーイやホストとかをしてましたね。その後、運転を上手くなりたくて、大型の免許を取ってトラックに乗ったりとか。そして最近少しずつSNSの収入が増えてきて、今年からお店を出したっていう感じですね。
ーーこしょーさんがギャルであることを、ご家族はどのようにお考えなんですか?
こしょーさん:やっぱり最初は、いい反応はされませんでしたね。けど、最近はお金を稼ぐようになって応援してくれるようになりました。
僕の実家は硬い家庭で、幼少期からスパルタ教育を受けていました。その反動で中学からやんちゃするようになって、家に帰らなくなるみたいな。実は、大人になって5年くらい話してなくて、ようやく今年の正月に会いました。
今も昔もギャルであることには変わりないですが、中学の頃のやんちゃとは違って、ちゃんとやってるところは見せられていると思います。ただ、父親とは敬語でしゃべりますけどね。昔の職場の上司に会ってるような感じです。
◆収集したギャル服は500着以上。いつかアパレルをやりたい
ーーこしょーさんとしては、いつまでギャルをやっていきたいですか?
こしょーさん:ギャルに卒業とかはないけど、ブームがなくなっても目立ってはいたいですね。GACKTさんみたいな、かっこいいおじさんになれればいいな。
ーーギャルに限らず、カルチャーって次世代に継ぐ人がいなければ衰退していくじゃないですか。今後、文化を醸成していくようなお考えはあるんですか?
こしょーさん:ギャル服のアパレルはやりたいです。今もギャル服ブランドってなくはないんですけど、当時流行っていたブランドは撤退しちゃって。だから、僕が今着ている服も当時集めたギャル服ばかりで500着以上を大切に保管しています。
ギャル服屋で働いてたこともあり、現存するギャルの中では誰よりも詳しいはずです。だから、アパレルをやるんだったら俺しかいないかな、と思って計画はしてますね。
ーーこれからギャルを再開したり、始める方にとっては嬉しいお話ですね。こしょーさんは、日本の一つのカルチャーを背負っている、世の中で一番ギャルが好きな男性だと感じました!
こしょーInstagram:@kstjzx100
<取材・文/松浦聡美>
【松浦聡美】
韓国のじめっとしたアングラ情報を嗅ぎ回ることに生きがいを感じるライター。新卒入社した会社を4年で辞め、コロナ禍で唯一国境が開かれていた韓国へ留学し、韓国の魅力に気づく。珍スポットやオタク文化、韓国のリアルを探るのが趣味。X:@bleu_perfume