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「大阪・関西万博2025」まで約1カ月というタイミングで持ち上がった“2億円トイレ”の問題に、そのトイレを設計した建築家本人がX上で反論した。実際は46基のトイレがある大規模なもので、建設費も2億円から約1億5000万円に引き下げられていたという。
一級建築士で米澤隆建築設計事務所を主宰する米澤隆さんは3月16日、自身のXアカウントで「部分的に切り取られた建築写真が流出し、安っぽい、工事金額を中抜きしているのではないかといった疑義」が起きていると報告した。ネットで話題になっている写真は建築物の一部であり、実際のトイレは大規模なものだという。
「安っぽい」という批判に対しては、大阪府の吉村洋文知事が2月21日にポストした「2箇所あり、平米単価は77万円と64万円です。建設物価調査会の調査では21〜22年の公共トイレ施設の平米単価は98万円です」という説明を引用しつつ、「このような大規模なトイレに対する予算としては公共の一般的なトイレの予算の基準を大きく下回っており、リッチなものをつくるほどの余裕はありません」と解説した。
また大阪・関西万博は、4月13日から10月13日までと会期は半年限り。米澤さんは、そのために多額の費用を掛けるのは経済や環境への負荷が大きいと考え、「閉会後を見据え移設転用の機構を備え、異なる場所でも形を変え長く使われ続ける仕組み」を提案した。
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様々な形や色のブロックでトイレを構成したのは、万博閉幕後に公園などに移設する際、利用者の数に合わせて柔軟に組み替えるため。「ひとつひとつのブロックや単体のトイレブースを見ると簡素なものではありますが、積み木がそうであるように、様々な形や色のブロックを組み合わせることにより、豊かな場を創り出すことを意図しました」。
●3度目の入札で約1億5000万円に
米澤さんは、工事費の中抜きといったSNS上に流れている憶測を完全に否定した。
問題のトイレは、2024年夏頃に2億円という金額が報じられ、必要以上にゴージャスなトイレを作るのではないかと批判を集めた。そのためか2度の入札までは不落不調(入札が成立しない状態)。3度目の入札では解体費用込み約1億5000万円(税抜き)まで減額されたという。このため「可能な限り仕様を下げるなどの減額検討」を行い、ようやく応札できたようだ。
「これが中抜きできるといったような経済的にうまみのある業務であるのならば、2度も不落不調をきたさないでしょうし、そもそもがそのようなことができない仕組みになっています」。万博の工事は「公共が定める厳正なプロセスにのっとって工事金額や施工者が選定されている」うえに、「予定金額を超えて実態に合わない高額な金額では工事ができない仕組み」という。
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しかし素材を質素なものに変えたことで、今度は疑いの目を向けられるようになった。3月上旬に完成したトイレの画像がネット上で拡散されると、トタンのようにも見える素材と金額の印象にギャップがあったためか、“中抜き”疑惑まで語られる事態に。投稿数はそれほど多くはないが、中には百万単位の閲覧数を集めた投稿も見受けられるなど注目を集めた。
ゴージャスどころか実際には質素な素材を使い、万博終了後の再利用も考慮していた万博のトイレ。吉村知事は2月21日のポストの中で「このトイレは若手建築家256点の中から公募で選ばれました。若手建築家が魂を込めたトイレです」と書いている。
「様々なご意見はあろうかと思いますが、もしよろしければ実際に万博会場に足をお運びいただいて実物をご高覧いただけましたら幸いです」(米澤さん)
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