東京拘置所=2023年12月28日、東京都葛飾区 オウム真理教の元代表、松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚=執行時(63)=の遺骨と遺髪を巡り、元死刑囚の次女が国に引き渡しを求めた訴訟が続いている。東京地裁は次女の訴えを認め、引き渡しを命令。国は不服として控訴し、最終的な決着には時間がかかると見込まれる。
元死刑囚は地下鉄サリン事件などに関与したと裁判で認定され、2018年7月に東京拘置所で刑を執行された。火葬後、遺骨などは国が保管を続けている。
引き取りができる「取得者」に誰がなるかについて、次女は他の家族と家事審判で争った。東京家裁が20年に次女を取得者と決定。21年に最高裁で確定した。
しかし、国は遺骨などが崇拝対象となり、教団の後継団体の信者が集まることが予想されると懸念。次女側の適切な管理、保管も期待できないと、引き渡しを拒んだ。
一方、次女側は父だった元死刑囚を悼みたいだけなのに国が応じないとして、引き渡しを求め22年に提訴した。一審東京地裁は24年、関係法令に拒める根拠規定はないと指摘した上で、「次女が後継団体と関係を有していることや、遺骨を悪用する意図があると立証されていない」と判断し、国に引き渡しを命じた。
現在は、東京高裁で審理が継続している。刑執行から6年以上経過してもなお、元死刑囚の影響力は色濃く残り、事件の余波は収束していない。