水樹奈々、25年の感謝と進化——ニューアルバム『CONTEMPORARY EMOTION』が描く新たなステージ

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2025年03月20日 14:10  クランクイン!

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クランクイン!

水樹奈々  クランクイン! 写真:小川遼
 歌手デビュー25周年イヤーを迎えた水樹奈々が、約2年半ぶりとなるニューアルバム『CONTEMPORARY EMOTION』を3月19日にリリース。「今この瞬間に湧き上がる感情」をそのまま詰め込んだという本作には、彼女の歩んできた軌跡と、さらなる挑戦への想いが凝縮されている。アルバム制作の裏側や楽曲へのこだわり、ファンへの感謝、そして未来への決意まで──そのすべてを語ってもらった。

【動画】水樹奈々の“新しい扉”を開いたリード曲「拍動」MV

■挑戦の連続が生んだ“エモーション”

――2年半ぶりのアルバムとなる『CONTEMPORARY EMOTION』ですが、今回はどんな1枚になりましたか?

水樹:まさに「今この瞬間に湧き上がる感情」をそのまま詰め込んだ、濃厚なアルバムになりました。前作『DELIGHTED REVIVER』は、ちょうどコロナ禍の真っ只中のリリースで「停滞してしまったエンターテインメントをもう一度盛り上げたい」という想いを込めた1枚でした。ジャケット撮影も、自分にとってのホームとも言える秋葉原や池袋、キングレコードのある護国寺周辺で行い、改めて「ここからまた頑張るぞ!」という気持ちを込めたのを覚えています。

それから2年半が経ち、世の中も少しずつ回復しながら、新しいスタイルや表現が次々と生まれる時代になったなと感じます。一度分断された人とのつながりが、デジタルを通じて逆に強くなったり、様々な境界線がなくなりグラデーションが広がったり。良くも悪くも“何でもアリ”な時代に突入したなと。だからこそ、自分の軸はしっかり持ちつつ、新しいものをどんどん取り入れながら、融合を楽しんでいきたい。そんな決意表明を込めたアルバムになりました。

そして今回は、歌手デビュー25周年イヤーの中でのリリースでもあります。これまでの歩みを大切にしながらも、「まだまだ攻め続けるぞ!」という気持ちをぎっしり詰め込んだ1枚になっています。

――タイトルに“エモーション”という言葉が入っていますが、制作期間中、感情が揺さぶられた瞬間はありましたか?

水樹:実は前作を作り終えた直後から、今回のアルバムに向けてデモテープを集め始めていたんです。そんな中で「こんな表現がまだ自分の中に眠っていたんだ!」と驚かされる瞬間が何度もありました。

挑戦的な楽曲も多く、「うわっ、またとんでもないモンスター曲ができちゃった……!」と(笑)。どうやって乗りこなそうか試行錯誤しながら向き合う時間は大変でもありましたが、それ以上にすごく刺激的で。「まだまだ新しい自分に出会えるんだ」という喜びが大きかったですね。

――ご自身の中でとくに“新しさ”や“挑戦”を感じる楽曲は?

水樹:まず、リード曲の「拍動」はまさに“何でもアリ”な楽曲になっています。ダンス、ロック、ラップが融合し、さらにデジタルな要素も組み込まれているんですが、ベースには私の原点である歌謡メロディがしっかりあります。そこにさまざまなエッセンスを加えることで、新しい表現が生まれた1曲ですね。

MUSIC CLIPもこれまでにないテイストで、「原宿かわいい系」の要素を取り入れながら、着ぐるみを着てみたり、コミカルな要素を加えたり、メイクも奇抜にしてみたり……とかなり攻めていて、新しい扉を開いた感覚でした。

「Virtual Cruiser」も挑戦的な楽曲です。Aメロがいきなり英語から始まる構成になっていて、英語が苦手な私としてはドキドキでした(笑)。デジタルロックにエキゾティックな要素が加わっていて、新しいサプライズを届けられる楽曲になっています。

そして、私が作詞・作曲した「Awesome!」は、25周年をテーマにした特別な楽曲です。ファンのみなさんへの感謝の気持ちを込めて作りました。ぜひじっくり聴いていただきたいです。

――本当にさまざまな表現が詰まった1枚ですよね。水樹さんが作詞、吉木絵里子さんが作曲を担当されている「ツバサ」には、卒業ソングのような雰囲気を感じました。

水樹:まさにそうなんです。リリースされる3月は新しい環境に身を置く機会が多い時期でもあるので、そんな季節にぴったりな「出会いと別れ」をテーマにした曲を作れたらいいなと思いました。

吉木さんが手がけるバラードは私も大好きで、これまでもたくさんご一緒してきましたが、今回も温かく、聴く人の心にそっと寄り添うような1曲になっています。壮大でありながら、どこか身近に感じられるような音色に仕上がっていて、私自身とても気に入っています。

――今作を手に取るファンに向けて、「こんなふうに聴いてほしい!」というおすすめの楽しみ方があれば教えてください。

水樹:本当にどんなシチュエーションにもフィットする曲が揃っているので、ぜひいろんな場面で楽しんでいただきたいです。たとえば、「今日はなかなかスイッチが入らないな……」という朝に背中を押してくれるような曲もありますし、夜、ふと一人で落ち着きたいときには「Blueprint」のように、夜空を眺めながらしっとり聴ける曲も入っています。

もちろん、みんなで思いっきりはしゃげるパーティーソングもあるので、その日の気分やシチュエーションに合わせて楽しんでもらえたら嬉しいです。お出かけのときにも、おうちでのんびり過ごすときにも、ぜひ聴いてみてください!


■25周年イヤーを迎えて振り返る、忘れられない瞬間

――今年はアーティストデビュー25周年イヤーとなりますが、 これまでの活動を振り返り、とくに印象深い出来事を教えてください。

水樹:本当にたくさんありますが、やはり最初に思い浮かぶのは、2009年に初めて紅白歌合戦に出場したときですね。もう、とにかく震えました。

幼い頃に演歌歌手を目指していたこともあって、大晦日は家族みんなで紅白を観るのが恒例だったんです。「いつかこの舞台に立てたらいいね」と話していたステージに、まさか自分が立つ日が来るなんて……本当に夢のようで、決まったと聞いたときは信じられませんでした。

紅白出場の知らせを受けたのは、レコーディングのT.D(トラックダウン)作業をしている最中で、三嶋プロデューサーに個室に呼ばれて発表されたんです。でも、あまりに予想外すぎて、一瞬何が起こったのか理解できなくて(笑)。

本番もとにかく緊張しすぎて、気がついたら終わっていたような感覚でした。歌詞を間違えないように、音を外さないようにと、あれこれ考えているうちに、一瞬で終わってしまって。マイクを握る手が汗で滑り落ちそうになるくらい、ガチガチに緊張していました。

――声優アーティストとして初出場という、まさに歴史的な瞬間でしたよね。紅白以外にも、特別な思い出になっている出来事はありますか?

水樹:紅白出場と同じ年に西武ドームで開催した初めてのスタジアムライブ「LIVE DIAMOND」も忘れられません。まさか自分が野球場で歌う日が来るなんて……本当に信じられなくて、ずっとそわそわしていました。

普段はライブ直前までしっかりご飯を食べて、スタッフさんと何気ない話をしたりして、あえてリラックスさせるのですが、その日はもう座っていられなくて。何回もお手洗いに行ったりして、スタッフさん達にも「こんな奈々ちゃん見たことない!」って心配されるほど、落ち着きがなかったです(笑)。

でも、その公演が自分にとって大きな転機になり、それ以降は西武ドームだけでなく、東京ドームや阪神甲子園球場など、いろんなスタジアムでライブをさせていただくようになり、あのときの経験や感動が今につながっているんだなと改めて感じます。


■楽曲との出会いが導いたターニングポイント

――ここからは楽曲ベースのお話もお伺いできればと思います。水樹さんの中で「ターニングポイントになった」と感じる曲は?

水樹:かなり初期まで遡りますが、2002年にリリースした5枚目のシングル「POWER GATE」が、私にとって大きな転機になった曲です。この曲をレコーディングしたとき、「私は応援ソングを歌っていきたいんだ」と、はっきり自覚したんですよね。

それまでは、とにかく歌えることが嬉しくて、プロデューサーの方々が選んでくださった楽曲を歌えるだけで幸せだったんです。でも、ライブを重ねるうちに「私ってファンのみなさんに何を伝えたいんだろう?」と考えるようになって。ただ楽しく歌うだけではなく、自分がちゃんと発信したいメッセージを持たないとダメなんじゃないか、と感じるようになり、そんなときに出会ったのが「POWER GATE」でした。

この曲をきっかけに、楽曲制作にも積極的に関わるようになり、「どんなコンセプトで曲を作りたいか?」といったことを1から考えるようになりましたし、作詞にも挑戦するようになっていきました。今でもライブで歌い続けている曲ですが、本当に「POWER GATE」との出会いが、水樹奈々というアーティストとしての方向性を決めたターニングポイントだったなと感じています。

――運命の出会いだったんですね。また、アーティストとしての“進化”を実感した楽曲は?

水樹:進化の始まりは、やはり2005年にリリースした「ETERNAL BLAZE」ですね。それまでの楽曲は、バンド演奏をメインにしたシンプルな構成のものが多かったのですが、この曲でストリングスを取り入れた、シンフォニックロックという新しいスタイルに挑戦しました。今では“水樹奈々らしい”楽曲の王道になっていますが、そのキッカケとなったのが「ETERNAL BLAZE」だったんです。

この曲は転調やキメが多く、かなりトリッキーな動きがある楽曲なんです。以前、武田真治さんがライブでゲストとしてサックスを吹いてくださったことがあるのですが、「バンドメンバーに“転調手当”や“キメ手当”を出した方がいいんじゃない?」とおっしゃっていて(笑)。歌う側としても、ものすごく鍛えられました。

でも、「この曲をしっかり歌いこなせたら、絶対にかっこいい!」という気持ちで必死に挑みましたし、何より作品(テレビアニメ『魔法少女リリカルなのはA's』)との親和性が素晴らしくて、「絶対にこの曲を歌いたい!」という強い想いを持って臨んだ1曲でした。

――そうしたこれまでの挑戦が、今の水樹さんの表現につながっているんですね。

水樹:そうですね。今回のアルバムに収録されている楽曲も、デビュー初期の私では絶対に歌いこなせないと思います。音域もどんどん広がっていますし、テンポも速い、そして構成が特殊。その中でさまざまな表現を組み込んでいくのは本当に大変で……。でも、そうなってしまうのは私のせいなんです(笑)。

作家さんたちは、ちゃんと歌いやすいように考えて曲を作ってくださるのですが、「これまでに聴いたことのないインパクトのある曲にしたい!」とか「もっとドラマチックでパワフルにしたい!」と思ってしまって。

「歌いやすさも考えて、こういう構成にしたんですけど……」と作家さんが調整してくださっても、「いや、もっと攻めちゃって大丈夫です!」なんて、自分でどんどんハードモードにしてしまうんです(笑)。

でも挑戦し続けるからこそ、新しい表現が生まれる。だからこそ、今回のアルバムも今までにない化学反応が詰まった1枚になったと思います。

――ハードモードをクリアしたときの達成感は格別ですからね(笑)。

水樹:そうなんです! もう解放感というか、達成感といったらすごいですよね。だからこそ、自ら険しい道を選んで、ここまで来ているわけですが……(笑)。でも、その分成長させてもらえているなと実感します。

――ファンとしても新しい驚きがあったり、「また水樹さんが進化してる!」と感じられる喜びがあります。

水樹:そう感じていただけたら本当に嬉しいです。やっぱりそういう瞬間に、自分自身もグッとくるというか、「来た!」って熱くなるんですよね。まさにドーパミンが一気に放出されるような、エモーショナルな高まりを感じることができて。だからこそ、挑戦し続けることをやめられないのかもしれません。

――今後新たに挑戦してみたいことはありますか?

水樹:実は今、新たな挑戦に取り組んでいる最中で、それが春頃には発表できる予定です。25周年という節目だからこそ踏み出せた挑戦でもあるので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。

また、挑戦というわけではありませんが、今回のアルバムリリースにあたり、久しぶりにリリースイベントを開催することになりました。原点回帰ということで、アニメイトさんやゲーマーズさんにお邪魔してトークショーをさせていただきます。制作秘話などを近い距離で語り合う場は、これまでなかなか持てなかったので、すごく楽しみにしています。

そして、すでに発表されていますが、12月6日からツアーも開催します。ちょっと先になりますが、デビュー記念日に合わせて初日を設定しました。今回は、TOYOTA ARENA TOKYOやGLION ARENA KOBEなど、まだオープンしていない新しい会場での公演も予定しているので、どんな空間になるのかワクワクしています。

さらに、まだ確定ではないですが、そろそろ海外ツアーも再開したいと思っていて、現在企画を進めているところです。今年はファンのみなさんと直接会える機会がたくさんあると思うので、今からすごく楽しみです!


■25年の感謝を胸に、さらなる進化へ

――ファンのみなさんとの絆を強く感じる瞬間は?

水樹:やはりライブですね。直接ファンのみなさんの顔を見て、「この曲をこんなふうに楽しんでくれてるんだ」とか、「こんな風にペンライトを振ってくれるんだ」と感じられるのが、すごく嬉しくて。ペンライトの動きひとつひとつからも、“今この瞬間を共有している”という喜びが湧くんです。ライブのあの空間こそが、ファンのみなさんとのつながりを最も強く感じられる場所だと思っています。

だからこそ、私にとってライブは人生で一番楽しくて、一番幸せな場所です。これからも毎年欠かさず、続けていきたいですね。

それと、47都道府県をツアーで一気に回りたいという夢もあります。平日は声優の仕事があるのでロングツアーはなかなか難しいのですが、いつか実現できたら嬉しいです。

――ぜひ実現してほしいです。ちなみに、これまでファンの方からもらった言葉でとくに印象に残っているものはありますか?

水樹:ファンのみなさんからのメッセージにはいつも大きなパワーをもらっています。たとえば、「この曲を聴いて受験を頑張れました」「就職活動中に励まされました」「仕事で落ち込んでいるときに救われました」「結婚式で流しました」といった声をいただくことがあって。そんなふうに、私の楽曲が誰かの人生の大切なワンシーンに寄り添っているんだと思うと、本当に幸せな気持ちになります。アーティストとして、これ以上の喜びはありません。

音楽って、記憶とすごく結びついているじゃないですか。その曲が流れると、「あのとき、こんなことがあったな」と鮮明に思い出せる。だからこそ、みなさんの人生の大事な瞬間に自分の曲が一緒にあることが、本当に嬉しくてたまらないんです。

私自身にも、そうやって思い出と強く結びついている曲がたくさんあるので、ファンのみなさんにとっても、そんな特別な一曲になれていたら、こんなに幸せなことはありません。世の中にある無数の音楽の中から「これだ」と選んでそばに置いてくださることが、心からありがたいなと思います。

――アーティスト冥利に尽きますね。また、これからのライブや活動を通じて、どのような“エモーショナルな瞬間”をファンのみなさんと共有していきたいですか?

水樹:ライブでみなさんと思いっきりはしゃぐのは大前提として、そこに加えて、いろんなサプライズを仕掛けて「ドーパミンが一気に放出される瞬間」をたくさん作りたいですね(笑)。

水樹のライブといえば、ど派手な演出や、いい意味で予想を裏切る展開が恒例なので、「そう来たか!」と驚いてもらえるようなことを仕込んでいきたいです。時にはシンプルな構成で「え、今回はこう来るの?」と意表を突くこともあるかもしれませんし、「また変な乗り物に乗ってる!」とみなさんに笑ってもらえるような演出を考えるのも楽しみです(笑)。

もちろん、新たなチャレンジも色々としていきたいです。それから「晴天の甲子園でもう一度ライブをしたい!」という夢もありますし、20周年記念ライブでツアーファイナルを迎えるはずだった名古屋ドームでの公演もいつか必ずリベンジしたいという想いもあります。

ファンのみなさんと一緒に夢を叶えていく瞬間、新しい景色をともに見られる瞬間を、これからも作っていきたいですね。

――最後に、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

水樹:気づけば、もう25年。こんなにも長く歌い続けることができて、定期的にCDをリリースし、ライブを開催し続けられるなんて、本当に幸せなことです。それもすべて、ずっと応援してくださるみなさんがいてくれるからこそ。感謝してもしきれないほど、本当に心から「ありがとう」という気持ちでいっぱいです。でも、この想いは「ありがとう」だけでは伝えきれないんですよね。

だからこそ、この想いを形にするために、これからもみなさんがワクワクするような楽しいステージを届け、心に響く楽曲を生み出し続けていきたい。そして、「まだまだ進化し続ける水樹奈々」を全力でお見せできるように頑張ります!

“77”歳になるまで全力で攻め続けますので、これからも一緒に最高の時間を過ごしましょう!

(取材・文:吉野庫之介 写真:小川遼)

 水樹奈々ニューアルバム『CONTEMPORARY EMOTION』は、発売中。

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