
バレンタインデーが近づくと、デパートやショッピングモールのチョコレート売り場にはたくさんの人が集まります。贈る相手を思い浮かべながら「どのチョコが喜ばれるかな?」と悩む時間もまた、バレンタインならではの楽しさのうちのひとつです。そんなバレンタインのチョコ選びを題材にした漫画『バレンタインチョコ売り場の店員さん』を、漫画家の稲空穂さんがX(旧Twitter)に投稿し、注目を集めています。
同作の主人公は、長い時間チョコレート売り場で悩むひとりの中年男性です。見かねた女性店員が声をかけると、男性は奥さんへの贈り物だと話し出します。男性は奥さんの好きなものや趣味に合わせたチョコレートを選ぶために悩んでいることを、嬉しそうに話すのでした。そんな男性客がいたという話を女性店員は、帰宅後に母親に話します。
そんな話をしていると、「ただいま〜」という声とともに女性店員の父親も帰宅してきました。帰ってきた父親は、なんと先ほどチョコレート売り場で悩んでいた男性だったのです。つまり父親は、自分の娘が働くチョコレート売り場で母親に贈るチョコレートを選ぶ相談をしていたのでした。
母親と娘のいるリビングに現われた父親は「ハッピーバレンタイン〜」と言って、たくさんのチョコレートを母親にプレゼントします。どうやら父親は娘に相談したものの、贈るチョコレートをどれかひとつだけ選ぶことができず、全部買ってきたようです。その後、家族で父親が買ってきたたくさんのチョコレートを分け合って食べるのでした。
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同作を読んだ読者からは「かわいい家族のお話に癒されます」「なんて心温まるバレンタインなんだ…」などのコメントが多数寄せられ、多くの読者の心をほっこりと温めたことが伺えます。そんな同作について、作者である稲空穂さんに詳しく話を聞きました。
ーこのお話は、実体験やどなたかに伺ったエピソードが元になっているのでしょうか?
特に実際に体験したものではありませんが、バレンタインデーのチョコは色々な種類やラッピングがあるのに対して、ホワイトデーは「水色の印象が強いな〜」「ホワイトデーにチョコを探す方が大変そうだな〜」と自分自身がデパートやコンビニのチョコ売り場を見て思ったことをきっかけに描きました。
ーキャラクターを描く際に意識したポイントや、特にこだわったシーンはありますか?
父と娘の、チョコ売り場と家の中での表情の違いを意識して描きました。娘はチョコ売り場ではちょっとすました表情にしています!
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ーバレンタインはカップルや友人(友チョコ)、職場(義理チョコ)などがテーマになることが多い中、「家族」にスポットを当てられた理由を教えてください。
この作品は書籍『特別じゃない日』に入っているエピソードのひとつなので、「特別じゃない日」というテーマで作りました。バレンタインはそれ自体が特別であるため、テーマから外れてしまうのですが「家族」のバレンタインは年を重ねるごとに「特別」感がなくなって、定番行事化していく気がしました。
なのであえて「定番行事」があることへのあたたかさをバレンタインを通して表現できたらと思い描きました。
ー稲空穂さんの漫画はどれも心に温かく響く内容になっていますよね。制作する過程で大切にしていることはありますか?
ありがとうございます!『特別じゃない日』に関しては、読者の皆様の経験や、大切な人を思い出してくださって初めて作品として心に留めていただける漫画だと思っています。なので、沢山の方に共感していただけるよう、「ああ、こんなことがあったな」や「こういうことあるある!」をちりばめていくことを大切に描いております。少しでも読んでくださった方の琴線に触れるものがあればこの上なく幸せです。
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(海川 まこと/漫画収集家)