届くはずのコメが半分に? 返金を選ぶと追徴課税の可能性──吉備中央町ふるさと納税で起きたこと

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2025年04月24日 12:51  ITmedia NEWS

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令和6年吉備中央町産コシヒカリ(出典:ふるさとチョイス)

 岡山県吉備中央町のふるさと納税で、返礼品としてお米を受け取る予定だった人たちが、理不尽にもみえる二択を迫られて憤っている。15kgのお米が届く予定だったが「米価高騰のため」に8kgに減るという。


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 2024年度のふるさと納税で吉備中央町は、一口1万1000円の寄附で同町産コシヒカリ15kgを返礼品として送る予定だった。利用者は一度に複数口の申し込みも可能で、24年9月下旬から25年8月の間で配送を希望する月を選ぶこともできた。利用者にとっては、お得で利便性の高い寄附先といえる。


 しかし4月下旬、吉備中央町から【重要】と書かれた封筒が届く。内容は、昨今の米価高騰の影響で、ふるさと納税返礼品の返礼割合基準(返礼品の調達経費は寄附額の3割以下と地方税法で定めている)を満たせなくなってしまったというもの。このため利用者に対して、1)1口15kg→8kgに減量して発送するか、2)返金するの2択を求めた。


 返金を選んだ場合、ふるさと納税のワンストップ特例制度などで寄附金税額控除を受けていると修正申告が必要になる。返還される寄附金の一部が追徴課税となり、追加納税の必要もある。利用者は5月12日までにいずれかを選んで封書で返答しなければならない。


 この一方的な通達に利用者は反発。SNS上では「なぜ昨年の時点でお米を確保していなかったのか」「契約不履行には当たらないのか?」「計算して納税してるんだから、返金してもらいたいけどできないよ」など憤りの声が上がっている。


 また直前にこれまで通り、お米が届いた人たちも存在していたという話も広まっていて、「自分より申込日が遅かった人がもう既に通常通り届いているのも納得いかない」「口コミみたら自分より後に申し込みしている人は既に貰ってたり、順番通りでもなかった模様でやばすぎる自治体」といった投稿も見受けられる。


 なぜこのようなことが起きたのか。


●原因は米価高騰ではなく支援金?


 この騒動に先立つ4月8日、NHKが吉備中央町の返礼品調達費用が上限の3割を超えていると報じた。同町は生産者に対し、お米の代金の他に「支援金」を支払っており、これを加えると返礼品の調達費用は41%に上るという指摘だ。


 総務省が吉備中央町に説明を求めたところ、4月16日付で回答があった。これによると、支援金は「吉備中央町ふるさと米出荷農家奨励金」という名称で、前述の「米づくり農家応援事業」の一環として給付していたもので、吉備中央町としては「農家に対する様々な補助金項目の中の一つ」と位置づけ、ふるさと納税の寄附金事業とは切り離しているつもりだった。


 しかし支援金はふるさと納税の返礼品となる米を出荷する農家のみが対象で、金額は返礼品となる米の出荷量に応じて決めていた。今年2月には、岡山県から「誤解が生じることのないよう、米の買取方法について検討いただきたい」とクギを刺されたという。結局、吉備中央町は今年度の支援金を廃止している。


 総務省への回答は4月16日付、ふるさと納税を利用した人に吉備中央町が送った封書は17日付、総務省が回答を公開したのは18日。これらを踏まえると、なぜ昨年度中に確保していたはずの返礼品が半分になるのか、なぜ直前までは普通に発送されていたのかも推測できる。ふるさと納税の利用者は、米価高騰の影響というよりは、支援金を巡るゴタゴタの余波を受けたといえそうだ。


 総務省は、吉備中央町の回答を踏まえて対応を検討中。村上誠一郎総務大臣は22日の閣議後会見で「ふるさと納税制度は、公金を使用した公的な税制上の仕組みにほかならず、基準に違反して返礼品を調達・送付してまで寄附の募集が行われたとすれば、それは由々しき問題」と指摘。厳正な対処を検討していくとしている。



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  • たかが1万1000円の寄付で米15kgというのがそもそもおかしいと思わないのか? 返礼品の金額は寄付額の20%が上限だぞ?
    • イイネ!10
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