佐々木朗希と菅野智之、どうして差がついたのか…“過保護な環境育ち”と“百戦錬磨のベテラン”で分かれた大きな明暗

4

2025年05月22日 08:50  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

©産経新聞
菅野智之(ボルチモア・オリオールズ)と佐々木朗希(ロサンゼルス・ドジャース)ーー年齢は一回り違うとはいえ、この二人がNPB時代に圧倒的な実績を残してきたのは、ご存じの通り。しかし、彼らが最高峰の舞台に立ったとき、結果と評価に大きな明暗が生じてしまった。いったいなぜなのか。
◆佐々木朗希と菅野智之の差はどこにある?

35歳でメジャー挑戦を果たした菅野は、フィジカルの全盛期は過ぎているものの、“熟練の投球術”をベースに安定感のある成績を残すことに成功。対して、160km/h超のストレートとフォークでNPBを支配してきた佐々木は、いまのところ適応に苦しんでいる印象だ。各所で“素材型”の限界が指摘されている。

移籍が決まったときの世間の評価は、「佐々木は活躍し、(年齢的に)菅野は厳しい」という声が多かった。しかし、現状はそうではない。その差はどこにあるのか。

◆菅野智之──“完成された技術”と“円熟の自己管理”

菅野は、2023年オフにMLBオリオールズと1年約20億円で契約。35歳という年齢にもかかわらず高評価を勝ち取った背景には、長年NPBで磨いてきた「完成された投球術」と「調整力」がある。

特筆すべきはフォークボールの進化だ。20代のころはスライダーを軸にしていたが、年齢とともに勢い任せで抑えることや、球威を維持するよりも“緩急”や“コマンド”に投球の比重を移行。特に昨年からフォークの精度が大きく向上しており、投球の幅が広がった。MLBでもフォークが冴え渡っている。

さらに、NPB時代から「ローテーションを守り続ける安定感」に定評があった。年間25試合以上を投げ続け、WBCやプレミア12などの国際大会でも頼もしい存在だった。

そのベースには、自己マネジメント能力の高さがある。球数制限、コンディション管理、投球プランニングまで自己完結する姿は、“ベテランの知性”を体現した存在といえよう。

最大の持ち味である総合力こそが、過密スケジュールやマウンド環境への対応力に直結し、メジャーでも通用する“実戦派”投手として高く評価されているのだ。

◆佐々木朗希──“怪物の原石”が抱える未熟さと課題

一方、佐々木は“素材としてのポテンシャル”はNPB史上でも屈指といえる。

・平均160km/h超のストレート
・打者を地面に叩きつけるような縦割れフォーク

この2つの球種だけでNPBで無双状態、完全試合を含む歴史的な記録を次々と打ち立ててきた。しかし、昨年から明らかにフォームが変化し、それまでのように相手打者を圧倒する場面が少なくなっていた。さらに、そもそも“直球とフォーク”が通用しにくくなっている。

MLBの打者は、高速フォーシームに慣れているせいか、フォークの見極め能力が非常に高い。日本で通用した“ボールになるフォーク”が見逃され、苦しいカウントに追い込まれることが多々ある。

また、散々指摘されている通り、佐々木はNPBでは規定投球回を一度もクリアしておらず、1年通してローテーションで投げた経験がない。慎重な登板間隔と投球制限が敷かれ、故障リスクを最小限に抑えるマネジメントのなかで登板していた。

有望株を“壊さない”プログラムだったわけだが、MLBの過酷なスケジュールに飛び込むには、いささか準備不足だったのではないか。中4日、長距離の移動、登板ペースの変化、プレッシャーといった総合的な負荷に、身体も精神も適応しきれていないように思える。2025年5月には「右肩インピンジメント症候群」で、長期離脱する可能性も取り沙汰された。

◆経験値と適応力の“差”がもたらす成果の違い

菅野は怪我や不調を乗り越えながら30歳を過ぎてからも進化を続け、「緩急・制球・ゲームメイク」の完成度を高めてからMLBに渡った。だが、佐々木の頼りは“スピードとフォーク”という身体能力型の武器のみだ。

ここに“成功の蓋然性”の差が表れる。

メジャーは「完成された選手」がしのぎを削る世界であり、NPBのように“育成しながら勝つ”余裕はない。佐々木が今後結果を残すには、かつての球威や強度の復活、通年でのコンディション維持能力、登板リズムへの適応、さらには自己管理力などを含めた投手としての完成度が必要不可欠である。

佐々木がメジャーで輝くには、「若さ」や「素材」にプラスして、完成された投手への進化が必要不可欠。ポテンシャルがあることは疑いようがない。いつの日か、前人未踏の「日米での完全試合」が見てみたい。

<TEXT/ゴジキ>

【ゴジキ】
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55

このニュースに関するつぶやき

  • どうしてって実績見たらわかるやん!菅野舐めすぎやろ、この記者は�פä��ä��ʴ�
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

ランキングスポーツ

前日のランキングへ

ニュース設定