※画像はイメージです 鉄道を利用する際、本当はマナー違反だが、やってしまいがちなのが座席の上に荷物を置く行為。例えば、JR西日本の公式ホームページ内の『駅や車内でのマナー啓発』では、《荷物は座席の上に置かず、膝の上に置きましょう》と呼びかけている。
実際に車掌などに注意される場面はほとんどないが、新幹線や特急などクロスシートの車両では指定席・自由席を問わず、座席オン・ザ荷物をよく目にする。途中駅で乗車したら自分の座席の上に隣の乗客の荷物が……なんて経験を持つ人も多いはずだ。
◆申し訳なさそうな態度を取るどころかまさかの舌打ち
「よくあることですし、私自身これまで何度も体験しています。ほとんどの場合、声をかければすぐに荷物をどかしてくれますから。それに本当は褒められた行為ではないのでしょうけど、逆の立場で荷物を置く側だったこともあります(苦笑)」
そう話すのは物流メーカーの営業マンという仕事柄、日頃から出張で新幹線に乗る機会が多いという後藤光慶さん(仮名・37歳)。ただし、昨年秋のとある週末に乗車した新幹線のぞみ号の隣席の若者の態度は「あまりに目に余るものがあった」と話す。
「この日は出張ではなく従妹の結婚式に出席し、名古屋から自宅のある東京に戻る途中でした。私は通路を挟んで3席-2席となっている普通車指定席のうち、2席のほうの通路側の座席だったのですが、座席の上にはキャリー付きの大きめのリュック。もちろん、これでは座ることができないため、声をかけました」
ところが、窓側に座っていた20代半ばくらいの男性は、後藤さんのほうを一瞥すると「チッ!」と舌打ち。荷物はどかしてくれたが「すみません」などのお詫びの一言や申し訳なさそうに頭を下げることも一切なかった。
「とにかく態度が悪かったですね。こちらは何も悪いことをしていませんし、丁寧な言葉で話しかけました。それなのに何でここまで悪態をつかれなきゃならないんだろうって。これから約1時間半、彼の隣に座らなきゃいけないのが憂鬱でたまらなかったです(苦笑)」
◆荷物は足元に置き直したが、正直邪魔で仕方ない
なお、座席上の棚にはスペースに余裕があったが、窓側席の男性がキャリーリュックを置き直したのは自分の足元。だが、荷物の3分の1ほどは通路側席の後藤さんの足元スペースにはみ出ており、邪魔で仕方なかったそうだ。
「必然的に足は通路に向けて斜めに座る形になりました。足元に荷物を置くなら隣の人の邪魔にならないよう置くべきだし、そもそも面倒臭がらずに上の棚に置けばいいんです。
高齢者だと荷物の上げ下げは辛いですが、彼はまだ若かったですし、そのくらい苦も無くできるじゃないですか。気持ちを落ち着かせようと駅の売店で買った缶ビールを飲みましたが、イライラは募るばかりでした」
本当は「足元の荷物を何とかしてほしい」と言いたい気持ちはあったが、男性の態度を見るとキレてトラブルに発展する可能性もあった。そのため、我慢してやり過ごすしかなかったそうだ。
「真っすぐ座ると左足が荷物に触れてしまいますし、それでまた舌打ちされるのも文句を言われるのも嫌なので。こういう事はちゃんと言うべき、と主張する意見の方もいると思いますが、私は気の弱い小心者です。こちらが我慢することになってもトラブルに巻き込まれたくなかったんです。
このご時世、些細なことで暴力を振るわれる、あるいはそれだけじゃ済まない可能性だってありますから。でも、頭の中では注意されたことに激高し、手を出してきた彼を返り討ちにしてボコボコにするという妄想はしてましたけどね(笑)」
◆弱そうな見た目だったから舐められた?
後藤さん自身、新幹線や特急を利用する際、隣の席が空いていたら荷物を置いてしまうこともある。しかし、声をかけられても絶対に舌打ちはせず、「すみません」と言うようにしているそうだ。
「それに足元に荷物を置くのは自由ですけど、隣の乗客のスペースにはみ出るような大きな荷物を置くのはマナー違反。そういう荷物はちゃんと上の棚に置いてほしいですよね。
私がやせ型で弱そうな感じに見えたから舐められたのかなって。もし厳つい容姿をしていたら、あんな態度は取ってこなかったでしょうから」
隣の席が空いていると思い、荷物を置いてしまうことはあるが、ここは乗客の荷物置き場ではない。また、足元に置くにしても自分のスペースの範囲内というのが基本だ。
仮に虫の居所が悪かったとしても声をかけられて舌打ちなんてもってのほか。ほかの乗客の迷惑になるような真似はやめてほしいものだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。