「一律2万円」給付で「予算3兆円台」“国の借金”1442兆円の中で“バラマキ”の是非【Bizスクエア】

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2025年06月18日 06:30  TBS NEWS DIG

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7月の参院選にむけ石破総理が表明した「一律2万円」の現金給付。予算は「3兆円台半ば」というが、骨太の方針で示された「財政健全化」との矛盾は?

【写真で見る】国債の格付け、日本は今や「A1」にまで下落

現金給付と消費税減税「物価高対策」に有効なのは?

石破総理(13日):
「決してバラマキではなく、本当に困っている人に重点を置いた給付金を来たるべき参院選の公約に盛り込むよう検討するように指示をした」

給付額は【国民に一律2万円】で
▼子ども【1人2万円】
▼住⺠税非課税世帯【大人1人2万円】を追加で給付する考えだ。

予算規模と財源についてはー

石破総理
「予算規模は粗々の試算ではだいたい3兆円台半ば。税収動向を見極め適切に財源を確保し決して赤字国債に依存することがないよう、この点は強く指示している」

「バラマキではないことを信じたい」という『BNPパリバ証券』グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈さん。野党が公約に掲げる“消費税減税”よりは「給付金の方がベター」だと話す。

【各党の“物価高対策”】
▼自民⇒国民一律2万円給付(子どもと低所得者は4万円)
▼公明⇒1人数万円の現金給付
▼立憲⇒食料品の消費税率原則1年間ゼロ、一律2万円給付
▼維新⇒食品2年間 消費税率ゼロ
▼国民⇒消費税を時限的に一律5%引き下げ
▼共産⇒消費税廃止を目指し、5%に緊急減税
▼れいわ⇒消費税の廃止

『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「消費税の減税は、やってしまうと恒久的になってしまう。1年なら1年、2年なら2年で終わるのか。またテクニカルに減税をやれるのは1年半〜2年後になってしまい即効性はない。そう考えると、一時的に今の物価高に対策を取るのは理解はできる」

ーーこれまでの給付金は▼コロナ禍10万円▼岸田内閣の定額減税4万円なので規模感として少ない。さらに高所得の人にも2万円というのはどうなのか

中空さん:
「ポイントになる“困っている人”というのがきちんとわからないといけないが、わかる術が日本にはない。困っている人に行き届くためには、ありとあらゆるデータを共有化して誰が困っているのかを見つける必要があるが、その仕組みがコロナ後何年も経っているのにできていないことの方が問題」

骨太の方針「賃上げ起点の成長型経済へ」

また、石破内閣で初めてとなる経済財政運営の指針、いわゆる「骨太の方針」が13日に閣議決定された。

石破総理:
「成長と分配の好循環が動き始めた今こそデフレに後戻りせず、成⻑型経済への移行を確実なものとしていく。経済再生と財政健全化の両立を進め、“2040年頃に名目GDP1000兆円程度”の経済が視野に入るように取り組んでいく」

「賃上げを起点とした“成⻑型経済”の実現」と打ち出し
▼5年間で実質賃金 年1%程度の上昇
▼最低賃金を2020年代に全国平均1500円を目標に掲げる。

国と地方の基礎的財政収支▼プライマリーバランスの黒字化については、
2024年の骨太の方針では「2025年度中に達成」としていたが、それが「25年度から26年度を通じて」と時期を実質的に“後ろ倒し”にした。

経済財政諮問会議の民間議員も務める中空さんは、今回の骨太の方針のポイントは「成長型経済」だと話す。

『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「長い間日本は【コストカット型経済】で低金利・低賃金・低物価だったが、少しずつインフレにいくことによって成長していこうと、その起点には立っている。なのでそこを重視したということ。それから長い目標を持つということ、さらにはプライマリーバランスの黒字化を具体的に指し示すことができた。この辺は良いポイントとして見ることができる」

ーーただ、一律2万円給付で「3兆円台半ばの予算」が必要となると、2026度もプライマリーバランスの黒字化は危ういのでは

中空さん:
「かなり苦しいといえば苦しくなるが、骨太の方針では【債務残高対GDP比をコロナ前の水準に戻す】という目標もある。コロナ前に戻すとは、補正をそれほど打たないという意味。コロナ前の補正予算は大体3〜4兆円ぐらいなので、給付の予算がそのぐらいで収まれば実現可能だということ」

「GDP1000兆円」は実現できる?

そして石破総理が掲げた「2040年に名目GDP1000兆円の経済」だが、これはつまり【16年間ずっと実質成長を1%続ける】ということ。

2024年度の名目GDPが「617兆円」なので、成長率1.03かける16乗だと、15年後には約1000兆円になる。<617兆円×(成長率1.03) ¹⁶=990兆円>

中空さん:
「名目GDP1000兆円実現のためには2つ条件がある。【1】賃金がきちんと上がっていく【2】正しい設備投資や正しい投資が進んでいくこと。それにより実質GDP1%成長をやり遂げるということができれば可能な数字」

ーーそうした中で、財政再建と経済成長を両立してやっていくべきだと

中空さん:
「財政が先なのか経済が先なのかという二項対立みたいな話になってしまうが、やはりどちらもやらないといけない。実質GDP1%成長は結構な数字なので、頑張って成長するところに投資をしなければいけない。日本は無駄遣いが結構あるのでそれをやめて、成長分野にお金を投下していくことができるかどうか。課題はあるが可能だと思うし期待したい」

国債の格付け下落は「日本全体のリスク」

また今回の骨太の方針では「国債の今後」について懸念する表現も目立ったが、日本の国債の格付けは今や「A1」にまで落ちている。

【国債の格付け】(米・ムーディーズ)
▼Aaa:ノルウェー・スウェーデン・カナダ・ドイツ・オーストラリアなど
▼Aa1:アメリカ・フィンランド・オーストラリア
▼Aa2:韓国・カタール
▼Aa3:ベルギー・イギリス・フランス・台湾など
▼A1:日本・中国・アイスランド・エストニア・クウェート
▼A2:ポーランド・チリなど
▼A3:ポルトガル・マレーシアなど

格付けが低いと信用リスクが低いことから金利が高くなる。中空さんも危機感を口にする。

『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「格付けは私達の生活に関係がないように見えるが、例えば日本が資金を調達する時にも金利に跳ね返って調達コストに影響する。結局回り回って競争力になってくる。投資家の目線でも格付けが高い方が投資しやすいし、世界から資金調達をしやすい面もある。これ以上下落し、併せて日本の企業の格付けも下がるようなことになれば、日本全体のリスクになる」

「将来にツケを回さず有事に備える」必要

経済界や有識者の有志でつくる民間の政策提言組織「令和国民会議」(令和臨調)。中空さんは共同座長を務めているが、10日に「財政健全化に向け規律ある財政運営を求める」提言を行った。

キーワードは<将来世代にツケを回さず、有事にも備える>

国と地方を合わせた“国の借金”【政府債務残高】は
▼2023年度末で1442兆円。【対GDP比237%】に上り「次の世代に負担を先送りしている」と指摘
▼債務残高対GDP比は【アメリカ121%】【イギリス101%】【ドイツ64%】で、日本の237%は「G7の中でも突出している」と警鐘をならしている。

その上で、政府債務残高の対GDP比を「10年以内に現状から25〜30%引き下げるべき」とし、そのためにプライマリーバランスの「一定水準での基調的な黒字化」を求めている。

『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「<毎年の所得>と<積み上がった債務>は、どちらかが崩れると両方とも崩れていく。少なくとも毎年ベースのプライマリーバランスの黒字化を達成し、そのお金で債務を減らしていくということをやらないと無理が出る。なので一緒にやっていこうと。債務残高対GDP比の引き下げが達成できれば国債の格上げも視野に入ってくる」

「災害への備え」にも国債格上げが必要

そして、令和臨調が掲げるもう1つのキーワードが【災害への備え】だ。

土木学会は11日、「南海トラフ地震発災後から20年あまりで経済被害が推計で1466兆円に上る」とする報告書を公表。

令和臨調の提言では
▼有事に際して必要となる大規模な財政出動への余力を蓄えておく
▼財政健全化により信用を高め国債の格付けを引き上げることが必要だとしている。

中空さん:
「日本企業の格付けが下がるのを避けるためにも、国債はせめて今のランクA1を維持しなければならいが、地震や災害に備えるためにも格付けを上げておくことが大事」

(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年6月14日放送より)

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