藤浪晋太郎選手 公式Instagramアカウントより マリナーズ傘下3Aのタコマは17日(日本時間18日)、所属する藤浪晋太郎を自由契約にしたと発表。31歳の剛腕がチームを離れることになった。
◆“制球難”が改善せず…
藤浪といえば、大阪桐蔭時代から同学年の大谷翔平とライバル関係にあり、鳴り物入りで阪神に入団。すると、高卒1年目から10勝を挙げ、デビューから3年連続2桁勝利の活躍を見せた。
ところが、4年目以降は制球に苦しむことが増え、半ば追われるように辿り着いたのがメジャーの地だった。
2022年オフに阪神を退団した藤浪は、アスレチックスとメジャー契約。制球難は阪神時代と変わらなかったが、シーズン途中に優勝争いを演じるオリオールズに加入。シーズンの防御率は7点台に上ったものの、契約の関係もあったか1年を通じてメジャー定着を果たした。
昨季はメッツとマイナー契約を結び、メジャー昇格を目指したがそれは叶わず。今季はマリナーズ傘下から再出発となったが、制球難が改善することはなく、メジャー昇格を勝ち取ることができなかった。
◆5月以降は防御率0.87
今季、3Aでの藤浪の成績を振り返ってみると、4月を終えた時点では、8回を投げ13四球、防御率12.38と、いつクビになってもおかしくない成績が並んでいた。
しかし5月に入ると、安打を許さない投球が続き、5月終了時点で防御率を7.36まで下げると、6月は4試合4イニング連続無失点の好投。5月以降は防御率0.87をマークし、SNSでは2年ぶりのメジャー昇格を推す声も聞かれるほどだった。
しかし、シーズンの折り返しを待つことなく、再び自由の身となった藤浪。注目されるのが、次の行き先だろう。5月以降は0点台の防御率をマークしたとはいえ、制球難が解消されたわけではなく、メジャー契約はもちろん、マイナー契約を結ぶことも厳しい立場だ。
◆ドジャース入団を望むファンもいるが…
SNSでは一部ファンから「ぜひドジャースに来てほしい!」など、同世代ライバルの大谷との共闘を支持する声も聞かれるが、いくらドジャース投手陣の台所事情が苦しいといえども、現実的ではない。
一方で、藤浪の代理人を務めるスコット・ボラス氏は、日本復帰の可能性にも言及しており、古巣・阪神への出戻りが最有力と考えるのが自然だろう。
阪神は今季からメジャーリーグでもプレーしたことがある藤川球児監督が就任。元投手でもあり、7連敗中という厳しいチーム事情も相まって、藤浪の獲得に動く可能性は十分ある。
◆日ハム・新庄監督との共通点
そして阪神以外にもう1球団、藤浪に興味を示しそうなのが、こちらも元メジャーリーガー新庄剛志監督が指揮を執る日本ハムである。
藤浪と新庄監督は、選手として、ともに阪神でブレイク。新庄監督はメジャーに溶け込み、4番を務めたこともあるが、一方でマイナー暮らしを経験したこともある。
奇しくも新庄監督は、渡米3年目に壁にぶち当たり帰国。新天地に選んだのは古巣の阪神ではなく、当時まだ不人気球団といわれた日本ハムであった。
しかし初のパ・リーグで北海道のファンを魅了。日本ハムを人気球団の一つに引き上げたのは、新庄監督の存在があったからだ。
◆新庄監督がラブコールを送ったことも
また、新庄監督は日本ハムの指揮官に就任した直後の2021年末に、当時まだ縦ジマのユニフォームを着ていた藤浪に熱烈ラブコールを送っている。
2021年の大みそかに公開されたYouTubeチャンネル「岩本勉チャンネル」の動画に出演した新庄監督は、「欲しい選手が1人いる」と発言。藤浪の名前を挙げたうえで、「俺の所に来たら化ける」とノーコンに苦しんでいた藤浪の一助になり得ると自信を見せたのだ。
当時FAでもない藤浪に対する発言に、一部では新庄監督に対するバッシングもあったが、自身と同じようにメジャーとマイナーの経験を積んだ今の藤浪にならオファーを出す可能性もありそうだ。
新庄監督は選手としての終着駅に北海道を選んだが、年齢的に藤浪の次の行き先が現役ラストチャンスになってもおかしくない。果たして藤浪の獲得に動く球団は現れるか。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。