
日本社会の現状に、「遅れてる! 海外ではありえない!」なんて目くじらを立てている人もいますが……。いえいえ、他の国の皆さんも基本は一緒!「衝撃」「笑える」「トホホ」がキーワードの世界の下世話なニュースを、Xで圧倒的な人気を誇る「May_Roma」(めいろま)こと谷本真由美さんに紹介していただきます。高齢者、認知症当事者に対する日本と英国の圧倒的な違いとは……。
「ケア・クオリティ・コミッション」の存在
日本では、高齢者ドライバー問題が重要な社会課題となっていますが、イギリスでは70歳になると運転免許証の更新が強制的に必要となるので、それを機会に返納する人も多く、日本のような懸念はあまりありません。そのため、日本のように高齢者ドライバー問題にひもづく形で認知症が語られることは少ないのですが、介護という視点における認知症問題となると話は別。
そもそもイギリスは、日本のデイケアのような介護サービスが少なく、公的な支援も充実しているとは言い難いんですね。
まず、支援が必要かどうかを判断するのは「ケア・クオリティ・コミッション」という委員会。彼らは、病院、介護施設、介護サービスが必須基準を満たしているかどうかを査察することを業務とするのですが、利用者とその家族に対してもメスを入れます。介護サービスを利用したいと考えても、“資産額”などから支援の可否が下されます。
つまり、日本の介護保険制度のような、要介護度に応じた客観的な認定があるわけではなく、主観的な経済状況などに左右されるところが大きいというわけです。
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「認知症=ネガティブ」ではない
裕福ではないけど、持ち家はあるような、差し当たってお金に困っているわけではないといった中流階級の人々からすれば“家族かお金か”─どちらかを選ばされるようなものですから、まるでシェークスピアの戯曲のような選択に迫られるのです。
その一方で、イギリスでは支援団体による精神的なサポートや交流の場の提供は、日本よりも断然多いです。おそらくキリスト教の「友愛」の精神が根づいているからでしょう。介護する家族が抱えるメンタル面をケアしたり、必要なアドバイスを提供する民間の支援団体が数多く存在し、資金も寄付金などによって集められています。
例えば、認知症の方(とその家族)が集うカフェがあり、同じ境遇の人たち同士で情報交換ができたり、大手映画館が認知症の方を優先する映画上映会を実施するなど、認知症であっても楽しめるような工夫や配慮が施されたイベントが定期的に多数開催されているんですね。
公的なサービスが限られているからこそ、相互扶助が発展したともいえますが、認知症の当事者と家族が疲弊しないように支え合う考えが根本にあるからこそ、認知症=ネガティブとはあまり捉えられていません。オープンに語り合える場があることでふさぎ込まない。この発想は、私たち日本人も見習いたい考えですよね。
構成/我妻弘崇
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