認知症やがんにも関係している!?「歯周病」が引き起こす恐ろしいリスクを医師が解説

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2025年07月09日 15:00  クックパッドニュース

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歯周病は虫歯や歯肉炎などを引き起こすものと認識している人が多いでしょうが、実はほかにもさまざまな病気に関連している可能性があると言われています。心房細動や認知症、糖尿病やがんにも影響しているとのこと。そこで、歯周病が引き起こすリスクについて、YouTubeチャンネルの登録者数が50万人を誇る、医師でヘルスコーチの石黒成治先生に教えてもらいました。

歯周病の原因菌は“心房細胞”も引き起こす!?

口の中の環境は、虫歯や歯肉炎、歯周病などだけではなく、実は心臓と脳にも影響を与え、全身の健康と深く関係しています。

歯周病の原因となるポルフィロモナス・ジンジバリスという細菌は、歯茎から血管内に侵入し、心臓の左心房に入り込み、心臓の電気信号の通り道を阻害して、心房細胞と呼ばれる不整脈のリスクを高めることが動物実験で示されています。

歯周病があることで、心房細動の発症リスクが30%くらい高まるという報告もあるほどです。

ポルフィロモナス・ジンジバリスは、心臓に炎症と瘢痕を引き起こして、不整脈が誘発されやすい状況を作る。 そして時間とともにダメージを蓄積していくことがマウスによる実験でわかっています。

人間でも、心房細動の患者68人の左心房の組織を分析したところ、重度の歯周病がある人ほど、心臓の組織内にポルフィロモナス・ジンジバリスが多く存在していることが報告されています。

ポルフィロモナス・ジンジバリスの侵入経路である歯周ポケットを塞ぐことによって、心房細動の予防や治療に大きく影響を与える可能性は高いです。

そのため、毎日丁寧にブラッシングやフロスをしたり、定期的に歯科を受診したりすることが、将来の心臓リスクを下げる上で非常に重要であると言えるでしょう。

歯周病は“認知症リスク”にも関連している

歯周病は心臓だけでなく、脳の健康や認知症のリスクにも影響を与えることもわかっています。

口腔内の細菌組成と高齢者の認知機能の関連を見た研究によると、口腔内に存在することで認知機能の維持ができる、善玉菌のナイセリアやヘモフィルスなどがたくさんある人は、記憶力や注意力が高く、唾液中の亜硝酸塩が高い傾向にあることがわかりました。

それがあることで、血流が良好で、歯茎の健康も保たれやすく、全身の健康も保たれやすいと言われています。

逆に、ポルフィロモナス・ジンジバリスなどの悪玉菌が多いと、認知症リスクが高くなると言われています。

アルツハイマー病のリスク因子である遺伝子異常のAPOE4を持つ人にプレボテラという菌が多いことも発見されているので、それらが相乗効果的に認知症の発症を上げている可能性があることもわかってきています。

“糖尿病”のリスクを上げる可能性もある

糖尿病になると歯周病になりやすいということは知られていましたが、最近はその逆で、歯周病が糖尿病のリスクを上げるということが認知されるようになってきました。

重度の歯周病や歯周炎にかかっている人は、将来、糖尿病になるリスクが4倍も高いということが報告されています。

歯周病などで歯茎に慢性の炎症が起こると、体の中の炎症性サイトカインが高くなり、自然とインスリンの働きが悪くなる。 血糖値のコントロールが乱れるので、長年、歯周病を患っている人はインスリン抵抗性の状態になり、糖尿病の発症リスクが高くなります。

糖尿病の患者は、免疫が低下しますし、傷の治りも悪くなるので、歯周病が重症化しやすいです。

歯周病を放置すると糖尿病になりやすく、糖尿病が悪化すると歯周病も悪化するという悪循環も起こってしまいます。

口の中の環境は“がんのリスク”にも関与する

歯周病菌のポルフィロモナス・ジンジバリスやフソバクテリウムなどは、消化管やその他の臓器のがんに関与する可能性も指摘されています。

歯周病菌を持つマウスは膵臓がんの発生や進展が明らかに早く、腫瘍が増大するスピードも早いことがわかりました。

また、健康的なマウスにポルフィロモナス・ジンジバリスを塗ると、しばらく経つと膵臓からその菌が出てきました。

膵臓に侵入したポルフィロモナス・ジンジバリスは、膵臓の細胞の中で生き残って、がん細胞を生み出すことも起こり得るのです。

さらに、歯周病菌の一種であるフソバクテリウムが、大腸がんの検体の中から高頻度で見つかったということも報告されています。

毎日の口腔ケアや定期的な歯科検診は、自分の将来の健康への投資になるので、しっかりと行うことが大切でしょう。

▼動画でもっと詳しく知る

画像提供:Adobe Stock

石黒成治先生


消化器外科医、ヘルスコーチ。
1973年、名古屋市生まれ。1997年、名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院で大腸癌外科治療のトレーニングを受ける。その後、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務する。2018年から予防医療を行うヘルスコーチとしての活動を開始。腸内環境の改善法、薬に頼らない健康法の普及を目的に、メールマガジン、YouTube、Instagram、Facebookなどで知識、情報を分かりやすく発信している。Dr Ishiguro YouTubeチャンネル登録者数は50万人超(2025年5月時点)。

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  • 米国で手術の準備するときに「歯を磨きましたか?」と聞かれた。歯磨きしていない状態で手術し体力が一時的に衰えると肺炎になる確率が高くなると言っていた。
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