偽情報に苦慮=首相切り抜き動画も―SNS時代の選挙【25参院選】

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2025年07月16日 07:33  時事通信社

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時事通信社

参院選の街頭演説を聴く有権者ら=14日、福岡市
 参院選(20日投開票)では、与野党がSNSを活用した選挙運動に力を入れる一方、偽・誤情報対策に苦慮している。先の通常国会で対応を検討したものの、憲法が保障する「表現の自由」との兼ね合いもあり、議論は先送りされた。各党独自の取り組みや事業者の対応に委ねているのが実情だ。

 石破茂首相(自民党総裁)が1日に出演した日本テレビ番組を巡り、CM中にアナウンサーを「なめない方がいい」と「どう喝」したとの動画付きの誤情報がSNSで一時拡散された。切り抜き編集された動画が基となっており、日本ファクトチェックセンターは「誤り」と判定した。

 立憲民主党の現職候補は自身に関するユーチューブ動画について、SNSで「私が言ってもいないことを私の声に似せたAI(人工知能)の声で言わせている」と抗議した。

 各党は個別に対策を模索している。国民民主党はAIを活用して事実と異なる投稿を特定し、正しい情報をホームページで公開する取り組みを開始。公明党もAIによるファクトチェックを導入した。

 候補者を当選させないための虚偽情報の投稿を巡っては、公職選挙法の「虚偽事項公表罪」がある。悪質な投稿には刑法の名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪の適用もあり得る。村上誠一郎総務相は参院選を前に、SNSを運営する事業者に対し、偽・誤情報対策を要請した。

 ただ、選挙中は大量の情報が短期間にSNS上にあふれ、ファクトチェックや事業者による投稿削除などの対応は「いたちごっこ」になりかねない。自民関係者は「候補者に注意を促しているが、全てのSNSを監視するのは気が遠くなる」と漏らした。

 与野党は昨年11月の兵庫県知事選で偽・誤情報が流布されたことを問題視し、法規制強化に向けた議論に着手した。自民は今年2月、SNS事業者の責任を明確化する法改正を提案したが、「表現の自由」や「政治活動の自由」の観点から慎重論もあり、通常国会での法整備は見送られた。

 参院選の状況も踏まえ、与野党は秋に想定される臨時国会以降に改めて議論したい考え。ただ、SNSの積極活用で支持拡大を狙う政党もあり、規制を巡る各党の立場には温度差がある。 

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  • テレビの方が偽情報悪質なのだが。
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