“もう信じない”と“まだ信じる”の狭間で…宗教3世が語る本音。隠された傷と葛藤の記録

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2025年10月07日 09:20  日刊SPA!

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敬虔な信者である北島さんは、韓国での教団のボランティア活動にも熱心に取り組んでいる
 創価学会の勢いに陰りが見えるように、新宗教はどこも衰退傾向だ。そんな中「生まれながらの信者」宗教3世は信仰をどう捉えているのか。彼らの信仰への価値観を垣間見た。
◆生まれたときから信者=宗教3世の主張とは?

 ’22年、安倍晋三元首相が旧統一教会信者の母親を持つ山上徹也被告に殺害された事件を機に、注目された宗教2世。

 事件後、信仰心に疑問を持つ者が多く現れたとされ、新宗教の衰退の一因になった。そして今、新宗教の存続のカギを握るのが宗教3世と呼ばれる若者たちだ。

 宗教学者の島田裕巳氏は、宗教3世が多い団体に、創価学会と天理教の名を挙げる。

「歴史が長くて組織が大きい宗教団体に、自ずと宗教3世は多くなる。ただ、自ら積極的に入信した宗教1世が宗教に関わる動機が明確なのに対して、親が信者だから入信した2世、3世の信仰はどうしても薄くなってしまう」

 こうした宗教3世が脱会していけば、当然、新宗教の力は弱まっていく。創価学会会員の宗教3世のやまざき想太さん(仮名・30代半ば)も、“信じない”となった一人だ。

「幼い頃から、僕が何か失敗したり、悩んだりしていると、父は決まって『ご本尊に祈らないからだ!』と否定的な言葉を繰り返しました。『お題目をあげないからよくないことが起こる』という言葉は、僕にとって呪い同然でしたね」

◆家族の絆と信仰の自由が天秤にかけられてしまう

 成人して社会に出て、そして結婚してからも、父親の態度は変わらなかった。

「妻や子供を連れて実家に帰ると、父が学会に勧誘するんです。妻は宗教と無縁で、結婚する前に『私は入らないよ』と約束していたので、父に『やめてくれ!』と頼みましたが、何度も衝突して父と疎遠に。メンタルも病んでしまい、宗教活動から離れ、10年ほどは実家に寄りつかなくなりました」

 ただ、やまざきさんはまだ、信じてはいないが脱会はしていない。

「多くの宗教3世は、いい信者でいれば親子関係は良好だけど、そうでなければ関係は悪化する。子供の頃に熱心に信仰していたのも、振り返れば、親の愛情が欲しかったから。今は一切活動してないので脱けたいけど、脱会届を出せば引き留めてくるのは明らか。仮に脱会したら親子関係は完全に破綻する。怖くて、及び腰になってます」

◆新宗教に信者の悩みを解決する機能はない

 創価学会のような巨大宗教だけでなく、地方に根づく中規模の新宗教でも3世の葛藤は生まれている。兵庫県西宮市に本部を置く神道系の誠成公倫は、約3万8000人の信者を抱える。

 その一人だった田村慎介さん(仮名・24歳)は、大学4年のときに“信じられなくなり”決別した。

「人は誰しも先祖からの悪い因縁を持っており、浄化しなければいけない因縁浄滅が最大の教義。父祖への敬愛、つまり親孝行に努めろ、ともよく言われましたが、幼い頃から父はすぐ拳を上げるような人で、それでも孝行しなきゃいけないのは苦しかった」

 それでも高校生の頃までは純粋に信仰していたが、大学生になると宗教への疑問がいくつも生まれたという。

「前の持ち主の因縁があるから、古着や中古の家電は使ってはいけないんです。でも、住宅や自動車は中古でもOKだったり、納得いかないことが増えていった。そもそも自分の意思で入会したわけではなく、親が敷いたレールをただ歩んできた僕は、自分の人生を生きてないことに気づいたんです。父と不和になっても僕の責任という教義への怒りもあってやめました」

◆“創価エリート”が職員を辞めたワケ

 そして、教義や信仰は否定しないが、宗教活動をやめた宗教3世もいる。創価学会の実質ナンバーツーだった元理事長を父に持つ宗教3世で、創価大学卒の“創価エリート”正木伸城さん(44歳)は、こう話した。

「幼い頃から創価学会に疑問を感じていました。親は池田先生(池田大作名誉会長)の偉大さを語りますが、よく知らない人を『偉大だ』と言うことに抵抗があったのです。仮に、ガンジーやキング牧師より偉大だとして、根拠は何なのか。それを知りたいと思った。後にこれが学会活動のモチベーションになりました」

 大学卒業後、学会本部に就職してからも熱心に信仰していたが、徐々に疑問を抱くようになったという。

「公明党を手放しで応援できなくなっていったのです。’03年にイラクへの自衛隊派遣を容認したときは疑問がありつつも擁護しましたが、年々その方針についていけなくなった。でも、選挙になれば、本部職員で地元の幹部でもある私は、公明党の支援を会員に呼びかけなければなりません。ダブルバインドに苦しみ、職員を辞めました。ただ、それは私に適性がなかったから。創価学会の信仰に救われている人は多いし、多くの人に希望の火を灯し続けてきたのは事実です。社会的な役割は大きいし、現代においても力があると思ってます」

◆教団総裁逮捕の報道にも信仰は揺らがない

 一方、世間の逆風に晒されながらも、信仰が揺るがない宗教3世もいる。旧統一教会の宗教3世・北島陽一さん(仮名・27歳)は昨年、合同結婚式を挙げた敬虔な信者だ。

「教会の宗教2世には、祖父母や親族に信仰を反対されたり、大変だった人もいます。それに比べて、僕は祖父母も両親も応援してくれる。父は医師で多額の献金をしているようだけど、経済的に苦労したことはないし、恵まれてますね。信仰が幸せをもたらすことを知っているのに、生まれた子供が信仰を拒んだら、好きにしていいとは言えない。子供が自然と信仰を持てるように愛情を注いで育てたいと思っています」

◆「神様が愛してくれている実感がある」

 折しも韓鶴子総裁が韓国前大統領の側近や妻への不正な金品授与の容疑で逮捕され、日本でも旧統一教会への批判が再燃しそうな雲行きだ。

「僕も最近、Xで知りましたが、高額献金の問題を知らない人は多い。でも、強引な勧誘や献金なんて、そもそも必要ないんですよ。だって、世界平和に繋がらないじゃないですか。被害者は教会を批判しますが、彼らが頑張ってくれたから今の教会の基盤があると僕は思うし、彼らが幸せになるようにする責任が僕らにはある。批判的な報道が出ても、教会に不信感なんてない。自分たちが責任をもって社会にも認めてもらえる教会をつくっていきたいです。神様がお父様、お母様を通じて愛してくれている実感が僕にはありますから」

 新宗教の多くは、高度経済成長期に教勢を拡大してきた。祖父母、両親から代々受け継いだ信仰の心が、果たして現代においては“正しいもの”として受け取れるのか――。

 今を生きる宗教3世たちは、日々自分に向き合う。

取材・文/週刊SPA!編集部

―[宗教3世[もう信じない/まだ信じる]の肖像]―

このニュースに関するつぶやき

  • 政治家の統一教会との関係はあまりにしつこい彼の国特有のごり押しにボランティア兼国の関係性を考慮しての人と、直接的に私利私欲、又は太い窓口関係者とは違う。
    • イイネ!1
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