フォルクスワーゲンの電気自動車(EV)=2024年12月、ドイツ北部ハノーバー(AFP時事) 【ベルリン時事】欧州連合(EU)は、エンジン車の新車販売を2035年に事実上禁止する取り決めの見直しを検討する。電気自動車(EV)の普及が想定より進んでおらず、業績が悪化する自動車業界の不満の高まりから、ドイツ政府が議論を主導。EU内で合意すれば、野心的な温暖化対策からの大幅な軌道修正となる。
メルツ独首相は9日の記者会見で、EV普及を目指す方針は維持しつつも、エンジン車禁止の見直しに「全力を尽くす」と宣言した。プラグインハイブリッド車(PHV)や、「グリーンスチール」など製造時に二酸化炭素(CO2)排出を抑えた部品で造った車両などの販売を容認することを想定しているもようだ。
欧州の自動車業界は、中国EVメーカーとの激しい競争や米国の高関税政策といった逆風にさらされており、「35年の目標は非現実的で、柔軟性が必要だ」(独最大手フォルクスワーゲンのブルーメ最高経営責任者)といった見直し論が噴出していた。EUの行政機関に当たる欧州委員会の報道官は「(ドイツには)多くの興味深いアイデア」があると議論を歓迎した。
一方、EV開発の遅れや、環境推進派との妥協の産物として複雑な規制につながるとの懸念もある。ドイツはこれまでもエンジン車禁止の取り決めに際し、水素を原料に混ぜた合成燃料を使ったエンジン車を例外として認めさせたり、一定以上のエンジン車販売に罰金を科すルールを緩和させたりするなど、EUの自動車政策に強い影響力を行使してきた。