「Xperia 10 VII」レビュー:「即撮りボタン」搭載のカメラや新デザインで“積極的に選べる”完成度に 不満点は?

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2025年11月10日 10:10  ITmedia Mobile

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ディスプレイは6.1型。ハイエンドモデルと比べると、上下のベゼルはやや太い印象

 10月9日に発売された、ソニーの「Xperia 10 VII」をレビューする。8万円以下で購入できるミドルレンジスマートフォンで、シリーズ初となる物理シャッターボタン「即撮りボタン」を搭載する。


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 本体は約168gの軽量設計で、マット仕上げの背面は上質な手触りだ。5000mAhバッテリーは公称通り2日間使用でき、実測では3時間程度の利用で40%残る余裕があった。


 試用期間を通じて感じたのは、妥協の産物ではなく積極的に選べる完成度の高さだった。即撮りボタンで確実に撮れる点、洗練されたデザイン、安定した動作は、ミドルレンジとして十分満足できる。


 ソニー公式のSIMフリーモデルとしての販売価格は7万4800円となる。キャリアではNTTドコモ、au、ソフトバンクが取り扱う。MVNOではIIJmio、mineo、QTモバイルなども扱う。


●ロゴは彫り込み、マット仕上げの上質な質感


 本体サイズは約72(幅)×153(高さ)×8.3(奥行き)mm、重量は約168g。軽いので片手でも楽に扱えるし、長時間持っていても疲れない。


 背面はさらさらとした質感で、指紋が目立たない。カメラ周りまできれいに処理され、背面と側面フレームの質感がそろった、まとまりのあるデザインだと感じた。背面カメラレンズは従来の縦配置から横レイアウトに変更されたため、机に置いたときに傾くことがなくなる


 右側面の電源キーには指紋センサーが統合されており、ロック解除はスムーズだった。その下にある即撮りボタンと合わせ、右手の親指が自然に届く位置に操作系がまとまっている。


 背面カメラ部のソニーロゴや、左側面のXperiaロゴは印刷ではなく彫り込みで、触ってもその質の高さが分かる。


 IPX5/IPX8の防水性能と、IP6Xの防塵(じん)性能を備え、ディスプレイガラスにはGorilla Glass Victus 2を採用している。おサイフケータイにも対応する。カラーはチャコールブラック、ホワイト、ターコイズの3色展開で、全てマット仕上げとなる。


●親指がちょうど届く位置にある即撮りボタン


 Xperia 10シリーズで初めて搭載された物理シャッターボタン「即撮りボタン」は、本体右側面の電源キー下に配置されている。縦持ちした際、右手の親指がちょうど触れる位置にあり、持ち替えずに操作できる。


 短押しでスクリーンショットが撮れるのがありがたい。従来は電源キーとボリュームキーの同時押しが必要で、片手操作時には本体を持ち替える必要があった。即撮りボタンならワンタッチで完結する。カメラ起動は長押しするだけとシンプルで、ロック画面からでも1秒以内に起動した。


 横向きでシャッターボタンとして使う場合、親指を少し伸ばす必要があるが、人差し指で押すとちょうどよい位置にある。


 半押しでAFロックする機能は搭載していないため、本格的な「シャッターボタン」というよりは、素早く撮ることを重視した作りといえる。


●ろうそくの炎までしっかり写るカメラ


 カメラはデュアル構成で、広角5000万画素(1/1.56型センサー)と超広角1300万画素(1/3型センサー)を搭載する。メインセンサーは前機種比1.6倍に大型化し、暗い場所でもよく写るようになった。


 超広角0.7倍から最大6倍まで多段階でズーム撮影でき、建物全景から屋根の装飾まで柔軟に撮れる。標準域での画質は十分だが、曇天下では撮影ごとにホワイトバランスが変わり、建物の黄色が濃くなったり淡くなったりする。最大6倍のデジタルズームでは、ディテールがやや甘くなるものの、記録用としては使える。


 紅葉で埋まった池を撮影した際は、水面への映り込みが鮮明に写り、曇天の空の白飛びを抑えつつ、暗部の落ち葉もしっかり再現された。HDR処理のバランスが良く、見た目に近い自然な仕上がりになった。


 ろうそく明かりだけの薄暗いレストランで撮影したところ、何度か試行錯誤したものの、炎の色や店内の雰囲気がきちんと写った。


 プレビュー画面では暗く見えるが、撮影すると複数枚を重ねてノイズを減らした明るい写真に仕上がる。ハイエンドモデルのようなリアルタイムプレビューはないが、結果的にはしっかり撮れる。


 明るい照明下では、パスタ料理の質感やチーズの削りかす、散らしたハーブの緑まで細かく再現できた。


 「ぼけ」モードは背景を自然にぼかせる。彫像と紅葉を撮影したところ、切り抜き感のない自然な仕上がりになった。被写体の認識精度が高く、境界部分の不自然さはほぼない。


●19.5:9に変更したディスプレイは功罪相半ば


 6.1型有機ELディスプレイは、アスペクト比が従来の21:9から19.5:9に変更された。これはXperia 10シリーズで初の採用となる。解像度はフルHD+(1080×2340ピクセル)、リフレッシュレートは前機種の90Hzから120Hzに向上した。


 操作時の速度差はあまり感じないが、XやBlueskyなどSNSをスクロールする際は滑らかだった。ミッドレンジで120Hz駆動が増えており、本機も今どきの標準仕様を満たした。


 新しいアスペクト比によって、16:9コンテンツを表示する際、従来より左右の余白が減った。映像のほとんどは16:9なので、動画視聴では改善といえる。一方で変化が大きいのはマルチタスクで、縦に2つのアプリを並べた際のスペースが減った。


 アスペクト比変更の影響は、マルチタスクで顕著に出る。YouTubeの動画を再生しながらX(旧Twitter)を開いてキーボードを表示すると、余白がほぼなくなる。Xperiaの特徴だった縦長マルチタスクの使いやすさが損なわれた点は惜しい。


●横持ちでもふさがないフロントステレオスピーカー


 フロントステレオスピーカーは左右均等に配置され、音質は非常にクリアだと感じた。横持ちしたとき両手で包むように持ってもスピーカーをふさがないため、ベッドで映像配信を見る際に役立つ。


 本体の振動を減らす新しい構造で、低音域から中低音域に厚みが出た。Bluetooth送信出力は前機種比2倍で、AAC接続時のアダプティブビットレート対応により、接続が不安定な際も音質を調整して接続を優先する。


 3.5mmイヤフォンジャックを引き続き搭載しているのもうれしい。最近のスマートフォンでは省略されることが多いが、Xperiaシリーズは有線イヤフォンユーザーに配慮した設計を続けている。


●バッテリーは実測3時間で40%残る、公称通りの2日持ち


 5000mAhバッテリーは公称通り2日間使用できた。実際の利用データを見ると、2日間で約60%消費し、実際に使った時間は3時間程度で40%残っている。カメラを1時間以上使っても余裕があるのは心強い。


 バッテリー使用の内訳は、カメラが54%(利用時間1時間3分)、YouTubeが13%(40分)、Blueskyが8%(28分)だった。ライトな使用なら確かに2日持ちは達成できる。「いたわり充電」機能で、4年経過してもバッテリーが劣化しにくい。


 充電はUSB Type-C PD-PPS対応で、充電時間は約115分だった。ワイヤレス充電には非対応となっている。


●日常使いでもたつきは感じない性能


 プロセッサにはSnapdragon 6 Gen 3(オクタコア、2.4GHz + 1.8GHz)、メモリは8GBを搭載する。Geekbench 6のスコアはシングルコア1010、マルチコア2634だった。Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxyを備えるGalaxy S24 Ultraと比較すると、シングルコアで半分以下、マルチコアでは3分の1程度の数値になる。


 3DMark Wild Lifeでは3245点、平均フレームレートは19.43fpsだった。全デバイス中36%の位置で、高負荷なゲームには向かない。ただしテスト中のバッテリー消費は1%(70%→69%)、温度上昇は28度から30度と低く抑えられ、発熱制御は良好だっだ。


 ただし実際の使用感は、数値ほどの差を感じない。SNSのタイムライン閲覧、ブラウザでの記事読み、ChatGPTとの対話といった日常操作で、もたつきやストレスは感じなかった。アプリの切り替えは上位機種と比べると多少遅いが、本機だけ使っていて気になる程度ではない。


 カメラは即撮りボタンを長押しして1秒以内に起動する。日常操作でもたつきを感じる場面はなく、ミドルレンジとして十分な性能といえる。ストレージは128GBで、microSDXCメモリカードで最大2TBまで拡張できる。


 発売時のOSはAndroid 15で、最大4回のOSバージョンアップと最大6年間のセキュリティアップデート(2031年8月まで)が保証されている。長く使えることを前提とした作りだ。


 なお、ソフトバンク版は日本で最初にVoNR(5Gでの音声通話)に対応していることにも触れたい。現行のVoLTEのように、LTEネットワークへの切り替えが不要になるので、よりスピーディーに通話を開始できる。現状ではVoLTEで支障はないが、長く使う上で4G回線の縮小を考えると、歓迎したい機能といえる。


●妥協ではなく、積極的に選べる完成度


 Xperia 10 VIIは、即撮りボタンの搭載により撮影のしやすさが格段に向上した。縦持ちでの操作性、スクリーンショットの撮りやすさは、日常使いで明確なメリットになる。大きくなったカメラセンサーで、ろうそくの炎や夜間の紅葉もしっかり写る。


 全体的なプロポーションのよさ、背面の質感とディスプレイベゼルの均等性、標準域におけるカメラの画質、動作の安定感など、ミドルレンジとしては上出来だ。デザインの満足度も高く、アウトカメラ部のソニーロゴや左側面のXperiaロゴを彫り込みにした細部へのこだわりが、上質さを生んでいる。


 縦長マルチタスクの使いやすさが損なわれたのは惜しいが、妥協の産物ではなく積極的に選べる完成度を持つ。7万4800円という価格で、2日持ちバッテリー、4年長寿命設計、6年間のセキュリティアップデート対応という長く使える作りは魅力的だ。Xperia 10 VIIは、「これでいい」ではなく「これがいい」といえる選択肢になった。


(製品協力:ソフトバンク)



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