なぜ若者まで「とりあえず赤星」と頼むのか テレビCMゼロでも10年で3.5倍に伸びた理由

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2026年06月14日 06:20  ITmedia ビジネスオンライン

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テレビCMを一度も流していないのに、なぜ人気?

 その昔、家でビールを飲むといえば瓶ビールだった。近所の酒屋に電話をすると、ケース単位で自宅まで届けてくれる。飲み終えた瓶は回収され、また新しいビールが届く。そんな光景を覚えている人も多いだろう。


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 しかし、その風景は大きく変わった。スーパー、量販店、コンビニが普及し、ビールは缶で買うものになった。瓶ビールは次第に家庭から姿を消し、飲食店で見かける存在になっていった。


 サッポロビールの「サッポロラガービール」(通称:赤星)も、その流れの影響を受けたブランドのひとつだ。1877年に誕生した日本最古のビールブランドで、現在では数少ない熱処理ビールとして知られる。同社の「黒ラベル」や「ヱビス」などが生ビールであるのに対し、赤星は昔ながらの製法を守り続けてきた。


 生ビール全盛の時代、その存在感は次第に薄れていく。


 ところが、2016年ごろから状況は一変した。2025年の出荷数量は、10年前の約3.5倍にまで伸びているのだ。それだけではない。特筆すべきは、市場全体が縮小する中で売り上げを伸ばしている点にある。


 サッポロの調べによると、2019年の販売数量を100とした場合、同ブランドは2025年に251まで増加した。一方、瓶ビール市場全体は64まで減少している。


 興味深いのは、その成長の中身だ。取扱店舗数は2016年比で約1.9倍に。また、1店舗当たりの販売数量も約2.6倍に伸びている。つまり、取扱店を増やしただけでなく、それぞれの店で売れる量も大きく増やしているのだ。


●売り上げが伸びている背景


 このような数字を目にすると「人気タレントを起用して、大量の広告を投下したのでは」と思われたかもしれないが、テレビCMは打っていない。そもそも発売以来、一度もテレビCMを流したことがないのだ。


 にもかかわらず、なぜ売り上げが伸びているのか。その背景には、3つの要因がある。


 1つめは「缶商品の投入」だ。赤星は長らく瓶ビールのみを販売していたが、2016年に数量限定で缶タイプを発売した。もともと「酒場で飲むビール」として親しまれてきたブランドである。そのため、缶商品を販売すれば、飲食店で飲む特別感が薄れるのではないかという懸念もあった。


 しかし、サッポロは缶をブランドの“入り口”と位置付けた。スーパーやコンビニで見かける→自宅で飲んでみる→飲食店で瓶を注文する。そんな流れが少しずつ生まれていったのだ。


 2つめは「口コミ」の広がりである。「赤星がある店は間違いない」「昔ながらの酒場なら赤星」――。そんな評判が常連客や飲食店オーナーの間で広がっていったという。


 もちろん、口コミが勝手に広がったわけではない。サッポロは営業担当者による飲食店への提案活動を続けてきたほか、「赤星★探偵団」といったオンラインコンテンツを通じて、同商品を提供する店や酒場文化を発信してきた。


 こうした地道な活動によってブランドと消費者の接点が増え、「飲んでみたい」「あの店に行ってみたい」という関心が高まった。その積み重ねが口コミの広がりにつながったのである。


 3つめが「酒場」そのものの変化である。ここ数年、ネオ大衆酒場や昭和レトロをテーマにした飲食店が増えている。焼き鳥、もつ焼き、煮込みを看板メニューにする酒場では、赤星が置かれていることも少なくない。


 若い世代にとっては、こうした酒場文化そのものが「新しい体験」として映っているようだ。かつては中高年の常連客が静かに飲むビールという印象が強かったが、いまでは若い客が「とりあえず赤星」と注文する姿も見られるようになった。


●店そのものが広告塔に


 見逃せないのは、こうした現象がビールだけに限らないことだ。例えば、焼酎を割って飲むホッピーも、大衆酒場ブームとともに若い世代へ広がったブランドとして知られている。また、飲食店向けとして親しまれてきたキンミヤ焼酎も、「酒場で飲んで知った」という人が少なくない。いずれもテレビCMに頼って成長したブランドではない。


 共通するのは、広告よりも飲食店での体験が認知拡大の起点になったことだ。店主に勧められ、友人に教えられ、気になって注文する。いわば、店そのものが広告塔となってブランドを育ててきたともいえる。


 このような話を紹介すると、「順風満帆だな」などと思われたかもしれないが、課題もある。認知度だ。サッポロの黒ラベルやヱビスと比べると、広く知られているとは言い難い。「であれば、テレビCMを打てばいいのではないか」という声もあるそうだが、同社にその予定はない。なぜか。


 マーケティング本部の桑村美里さんによると、同ブランドが大切にしているのは「人から人へ伝わる商品であり続けること」だという。


 「父親が飲んでいた」「上司に勧められた」「お気に入りの酒場で初めて飲んだ」――。このビールは、そんな誰かとの思い出と一緒に語られることが多い。「メーカーが一方的にメッセージを発信するのではなく、お客さま自身が語れる余白を残したい。そのほうが赤星らしいと思っているので、いまのところテレビCMは考えていません」(桑原さん)


●強力な“広告塔”がいた!?


 最後に、気になった情報をひとつ。地域別のシェアを見ると、関西エリアでの存在感が大きい。大衆酒場が多く、「ま、一杯どうぞ」と瓶ビールを注ぎ合う文化が根付いていることも背景にあるようだ。


 ただ、個人的には、もうひとつ気になる理由がある。関西には、阪神タイガースのファンが多い。野球好きであれば気付いた人もいるだろうが、阪神で活躍した赤星憲広さんと、ビールの「赤星」を結び付けて語られることが少なくない。


 もちろん、販売との関係を示すデータがあるわけではない。ただ、関西でこのビールの話題になると、「阪神の赤星」を連想する人が一定数いるのは確かである。


 真偽のほどは分からないが、赤星にはテレビCM以上に親しまれている“広告塔”がいるのかもしれない。


(土肥義則)


※下記の関連記事にある『【完全版】テレビCMゼロなのに10年で3.5倍 サッポロ「赤星」が伸びた3つの理由』では、配信していない豊富な写真とともに記事を閲覧できます。



このニュースに関するつぶやき

  • 自分の世代だと昔親が飲んでたから懐かしいというのはありますね。
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