GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ モンツァ戦のスタートシーン ポルシェ・モータースポーツの責任者であるトーマス・ローデンバッハは、GT3プラットフォームの将来について、SROモータースポーツ・グループの創設者兼CEOであり、このカテゴリーの生みの親のひとりでもあるステファン・ラテルが最近示したものと同様の懸念を表明した。彼はラテルの見解に「全面的に同意」しており、このカテゴリーがプロトタイプをベースとしたGTカーに変質してしまうのを防ぐために、主催者が「行動を起こす」必要があると述べている。
■「市販車からレースカーを派生させる。それがGT3の本質だ」
この種の懸念は、GT3のコスト高騰に加え、GR GT3や新型メルセデスAMG GT3エボといった、いくつかの新型モデルの登場を背景にしている。これらのモデルは、まずサーキットでの走行を前提に開発され、その後(または同時)に現行のGT3規定に適合させるための少量生産車が再設計される、というのものだ。
同様の考え方は、かつてのGT1時代や、より最近ではGTEクラスの一部ブランド(とりわけフォードGT)でも採用されていた。フォードGTの場合、2019年のル・マン24時間レースでの単発的な参戦を除けば、実質的にカスタマーチームへ供給されることもなかった。
「ステファンとは長時間電話で話し、彼の見解を全面的に共有している」と、ローデンバッハはロード・アメリカで開催されたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のイベントで一部の記者団に語った。
「我々は慎重になる必要があると思う。おそらく、我々は(規定の解釈において)門戸を広げすぎてしまったのだろう。本来、GTレースは手頃な価格で楽しめるものであるべきだからね」
「我々ポルシェの取り組みを見れば、GT3に対する非常に明確な哲学があることが分かると思う。価格設定についても、依然として適正なレベルにあると考えている」
「プロトタイプのようなマシンは見たくないし、逆のパターン(市販車がレースカーの派生型になること)も望んでいない」
「公道走行可能な市販車があり、そこからレースカーを派生させる。それがGT3の本質だ」
「あまり歓迎できない傾向が見受けられるね。だから、彼の見解──少なくともその大部分──に同意するし、彼が抱く懸念も共有している」
どのような対策が考えられるかと問われた際、ローデンバッハは、先日のスパ24時間の際にラテルが一部メディアに対して示した提案を挙げた。
さらに彼は個人的な見解として、各メーカーはホモロゲーション取得後最初の24カ月間で、単に最低20台の車両を製造するだけでなく、それ以上の台数を生産する必要があると考えている。この「最低20台」というルールは、かつてキャデラックATS-V.R GT3がファクトリーチームとしてピレリ・ワールド・チャレンジにのみ参戦していたことを受けて、FIAが導入したものである。
ラテルは、何をもってGT3にふさわしい「GTスポーツカー」とするかを判断する、何らかの仲裁役や審判が必要だと示唆している。
また、彼はGT3の成功を支える『4つの柱』が、必ずしも一様に尊重されていないと指摘。その柱とは、『市販車をベースとしたGT3マシンの使用』『高級ブランドの参画』『費用対効果』そして『メーカーによる強力なカスタマーサポート』である。
「彼は良い提案をしていた」とローデンバッハはラテルの提案について語った。
「容易なことではない。すでに門戸は開かれており、対策や基準を定義する必要があるが、他者をすでに受け入れてしまっている状況では難しい問題だからね」
「しかし、我々は行動を起こさなければならないと思う。GTプロトタイプのようなマシンがレースをするのは望ましくない。現状でもすでに多種多様なメーカーが参戦しているのだから」
「私はこの業界に長く身を置いてきたので、こうした状況が崩壊し得ることを知ってる。だからこそ、慎重にならなければいけない」
「彼の提案の中には、悪くないものもあると思う。私なら、カスタマーカーの(製造)要件をもっと厳しくするかもしれない。彼は確か『最低30台』と言っていたが、それ以上でもいいのではないだろうか?」
「中には、主に『カスタマー・スポーツだと言いつつ数台売るだけで、実態はファクトリー支援の車両が中心』という活動をしているメーカーもある」
「私に言わせれば、それはこのスポーツの本質ではない」
「(IMSAに目を向けると)そこにはファクトリーカーが存在しない。GTDプロクラスにはAOレーシングやマンタイが参戦しているが、マンタイは米国でのビジネス拡大を目指して参戦しているカスタマーチームであり、それは素晴らしいことだと思う」
「それが我々のやり方だ。GTカテゴリーに、メーカー主導の『ファクトリー・スポーツ』を持ち込みたくはないのだ」
「シリーズにとっても、GT3クラスにとっても、これは難しい問題だ。IMSAにおけるAO(AOレーシング)の活躍を見れば分かるが、素晴らしいレースが展開されている」
「そこではメーカーの参戦は必要ない。メーカーが競うべき舞台はGTPクラスなのだから」
[オートスポーツweb 2026年08月12日]