聴衆に手を振る自民党の小泉進次郎農林水産相=9日午前、千葉県船橋市 20日の参院選投開票に向け、与野党の「人気弁士」が全国をかけずり回っている。接戦が伝えられる候補者を当選ラインに押し上げようと、各地で精力的にマイクを握る。訴えに力が入るあまり、思わず「身内」批判が飛び出す場面もある。
「間違いなく逆風だが、最後は勝つと信じている」。自民党の小泉進次郎農林水産相は9日、千葉県船橋市で街頭に立ち、こう声を張り上げた。
小泉氏は5月下旬に農水相に就任。コメ価格抑制の陣頭指揮を執り、一躍「時の人」となった。演説では「農水省予算が一番低かったのは旧民主党政権時代」と野党批判もためらわない。
高市早苗前経済安全保障担当相、小林鷹之元経済安保担当相も自民の人気弁士。3人とも「次期リーダー候補」と目されており、次の総裁選に備えて足場固めを進める思惑もありそうだ。
一方、石破茂首相(自民総裁)は10日の岐阜での応援演説が取りやめに。党内からは「地元から応援入りを断られたのではないか」(関係者)との声も漏れる。
自民派閥裏金問題で表舞台から遠ざかった議員らも元派閥メンバーの応援に駆け回る。旧安倍派幹部だった萩生田光一元政調会長は7日、石川県内で演説し、「今の政権に頼っていては支持を得られない」と石破政権に矛先を向けた。
公明では引退する山口那津男元代表が連日、各地から引っ張りだこだ。党のトップを15年間務めた山口氏に支持者から熱い声援が飛ぶ。
立憲民主党は「旧民主党政権の顔」だったベテランが各地で声をからす。9日、青森市で演説した野田佳彦代表は難航する日米関税交渉を取り上げ、「農業を絶対に犠牲にしてはならない」と力説。一方、重鎮の小沢一郎衆院議員は同日、福島市の候補者事務所を訪れ、「もう一回政権を取らないといけない」と政権交代への執念をにじませた。
他の野党は看板を背負う党首が奮闘しているケースが多い。日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)、共産党の田村智子委員長、国民民主党の玉木雄一郎代表、れいわ新選組の山本太郎代表、参政党の神谷宗幣代表、社民党の福島瑞穂党首、日本保守党の百田尚樹代表らが各地を行脚する。
吉村氏は9日、札幌市で演説し、与党が掲げる国民1人2万〜4万円の現金給付を「買収だ」とこき下ろした。

街頭で訴える立憲民主党の野田佳彦代表=9日午前、青森市

街頭演説する日本維新の会の吉村洋文代表=9日午前、札幌市

有権者らと触れ合う公明党の山口那津男元代表=8日、神奈川県厚木市