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台風22号が直撃した東京・伊豆諸島の八丈島に、台風23号が発達しながら接近している。大きな爪痕を残した災害からわずか3日。新たな脅威が迫るなか、島民の疲労と不安は色濃くなっている。
9日朝に伊豆諸島に最接近した台風22号で、八丈島は記録的な大雨に見舞われ、早朝に最大瞬間風速54・7メートルを観測した。島内で多数の建物の屋根や外壁がはがれ、車の横転も相次いだが、八丈町も被害の全容は把握できていない。土砂災害による建物や道路の被害も多数あり、一部地区では断水と停電が続いている。
「水が顔まで来たら死んでしまう」。島南東部の末吉地区で自然ガイドを務める杉田秀徳さん(51)は9日朝、避難先を襲った土砂災害の緊迫した場面を振り返った。
午前6時ごろ、避難していた「八丈島の海・山・暮らし館」のホールの窓ガラスを大きな岩が突き破り、流木や土砂がなだれ込んできた。わずか10〜20秒で茶色の泥水が腰の高さに。押し流されるのに逆らい、高齢女性を抱えて屋外を目指した。出入り口を流木がふさいでいたが、またいで外に逃げた。
施設に取り残された人が多数いた。暴風雨の中、他の避難者と協力して、残った高齢者をおんぶするなどして屋外に移動させた。土砂の急な流れに足を取られて転倒する人もいたが、避難者19人と職員4人全員が無事だった。
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約5時間後、ようやく町消防と連絡がついて全員救助され、他地区の避難所に移った。杉田さんの自宅は被災を免れたが、断水したままという。「家畜を残して家を離れられず、集落に残る住民もいるので、次の台風が心配だ」と不安そうに話した。
北東部の三根地区に住む女性(83)は12日、美容室を営む友人のもとで不安な日中を過ごした。島のあちこちに建物の屋根や壁が吹き飛び、骨組みだけの家もある。台風22号の時は木造の自宅が船に乗っているように揺れて「恐怖を感じた。移住して20年だがこんな経験は初めて」と驚く。
「新たな雨風によって大きな土砂災害が起きないか心配」。子ども3人と夫と一緒に暮らす女性(42)はそう話した。島は13日にかけて大荒れの天気が予想され、自宅敷地内に倒れそうな木もあるため、「どうか島の被害が最小限であってほしい」と願った。
島の生活は平時にほど遠く、ライフラインの復旧に地域差もある。時短営業のスーパーには長い列ができる。島内で商店を営む女性は、店頭にパンやインスタントラーメンを並べられないといい、「船も来ないので仕入れが全くできない」と声を落とす。
雨で店の天井が抜け落ちたという飲食店の男性は、営業再開に向けて復旧工事の打ち合わせを進めてきた。その中で迫る次の台風に「被害がこれ以上、広がらないでほしい」と祈るように話す。
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三根地区でゲストハウスを営む沖山理沙さん(46)は建物が雨漏りし、12日時点で断水が続く。3連休の観光の予約はキャンセルした。「仕事へのダメージは非常に大きい」。修繕は追いつかず、タライを準備して急場をしのぐ考えだ。【田中理知、渡辺諒、柿崎誠】
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