社会的弱者を食い物にする「偽装質屋」の手口とは? 被害者弁護団の弁護士に聞く

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2013年12月02日 14:31  弁護士ドットコム

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「質草は何でもいい」。高齢者らにそう呼びかけて、価値のほとんどない時計やアクセサリ−を預かる代わりに、高い金利で金を貸し付ける「偽装質屋」が社会問題となっている。国民生活センターにも全国から相談が寄せられているようだ。


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その実態や手口はどんなものなのだろうか。また、被害に遭った場合は、どう対応すべきなのだろうか。この問題に取り組む「違法質屋被害者弁護団」の事務局長、河内美香弁護士に聞いた。



●偽装質屋の実態は暴利をむさぼる「貸金業者」


そもそもの話だが、質屋営業は、本来、期限までにお金を返せなかった場合、預けた品物が質屋に取られてしまう反面、お客はそれ以上お金を返さなくていいというシステムだ(質流れ)。これに対し、偽装質屋は価値のないものを質物して預かっており、この「質流れ」という質屋営業本来のシステムを予定していない、つまり実態は質屋ではないという。河内弁護士はこの点を踏まえ、次のように指摘する。



「偽装質屋の実態は、年金を担保にお金を貸付ける貸金業者です。



なぜ、わざわざ質屋としてお金を貸すのかというと、質屋には年109.5%という高い金利をとることが許されている(質屋営業法36条1項)からです。



貸金業者が年20%を超える金利をとることは、違法行為として処罰されます(出資法5条2項)。それと比較すれば、実質的には貸金業者である偽装質屋がいかに暴利を得ているか、おわかりになるかと思います」



●高齢者の「年金」が偽装質屋のターゲット


偽装質屋のもう一つの特徴が、高齢者の「年金」ターゲットにしていることだと、河内弁護士は強調する。



「お金の返済について、偽装質屋は、年金が支給される口座から自動引き落としされるよう仕組んでいます。引き落とし日も年金が支給される日に設定し、取りはぐれることなくお金が回収できるようにしています。



そうした年金受給者の多くは、年金のほとんどが偽装質屋の返済(元金および利息)に回されるため、生活費が足りなくなり、再び偽装質屋からお金を借りなければならなくなるという悪循環に陥ります。



偽装質屋はこうして、質屋営業を隠れ蓑に、年金受給者や生活保護受給者らの社会的弱者を食いものにしているのです」



こうした実態があれば、社会問題になるのは必然だったと言えよう。もし、自分自身や家族らが偽装質屋からお金を借りていることに気づいたら、どうすればいいのだろうか。河内弁護士は次のようなアドバイスを送っていた。



「偽装質屋の被害に遭われた方は、まずは、弁護士等の専門家に相談してください。業者に対して、不法行為に基づく損害賠償の請求をすれば、お金が戻ってくる可能性があります。



実際にどのくらいの額が戻ってくるかは、業者側の支払い能力の問題もあり、一概には言えませんが、弁護士等の専門家に相談するのが解決への第一歩です」



(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
河内 美香(かわち・みか)弁護士
平成16年より弁護士登録。福岡県弁護士会所属、消費者委員会副委員長。違法質屋被害者弁護団事務局長。その他、投資被害事件の弁護団として活動中。
事務所名:大濠総合法律事務所天神オフィス



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  • 日本政府のことですね。
    • イイネ!1
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