済美野球部「1年間の対外試合禁止」 いじめ被害者も試合できないのは不当ではないか

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2014年09月19日 16:31  弁護士ドットコム

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野球部員が下級生にカメムシを食べさせるなど、悪質な部内いじめが発覚した済美高校(愛媛県松山市)に対して、日本学生野球協会は9月上旬、「1年間の対外試合禁止」という重い処分を下した。この機会に、いじめを行った部員や見過ごした監督らは、二度とこのようなことが起きないよう、十分に反省するべきだろう。


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しかし、よくよく考えると、この処分によって、「いじめの被害にあった部員」も試合ができないことになる。いわば、いじめ加害者の責任を、いじめ被害者自身も連帯して取らされる形だ。これは、おかしくないだろうか。



高校野球部員として活動できるのは、実質的には2年半ほどに過ぎない。個人的に何も悪いことをしていない部員まで、1年もの間、対外試合を禁じられるという処分は、法的に見てどうなのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。



●「日本学生野球憲章」に基づく処分


「今回の対外試合禁止処分は、済美の野球部員が日本学生野球憲章に違反したことを理由に、日本学生野球協会が、その部員の所属する『野球部』に対してくだしたものです。



決定は憲章に基づいて、日本学生野球協会の審査室という組織が行っています。



済美高校は、処分に不服なら、協会に不服申立てができます。さらに、不服申立ての結果にも納得できないなら、日本スポーツ仲裁機構に対して仲裁の申立てができるとされています」



今回の「処分の性質」について、秋山弁護士はこのように説明する。被害者にまで悪影響が及ぶような処分は許されるのだろうか?



「今回は、所属部員に対する指導が行き届いていない、教育環境が整っていないなど、『野球部の責任』が問われているケースでしょうから、こうした『野球部』に対する処分は許されると思います。結果的に問題行為をしていない部員にも不利益が及ぶのは、処分の間接的な効果であり、やむを得ないでしょう」



そうだとしても、処分が重すぎないだろうか。



「違反行為に対してあまりに処分が重すぎるような場合には、処分の取消しや変更もあり得ます。ただ、どの程度の処分をくだすかについては、基本的に協会の『裁量』が広いと解釈されるでしょう。



また報道によると、今回のケースは、2年生が1年生の口にカメムシを入れたり、灯油を飲ませようとしたという事例です。さらには暴力が恒常的で、被害部員が19人にのぼるといい、かなり重大な事案であろうと思われます」



●いじめ被害者や無関係な部員は救済すべき


だが、被害にあった部員からすれば、一方的に暴行などを受けたあげく試合もできなくなるという、踏んだり蹴ったりの状況ではないだろうか。



「そうですね。一方的に被害を受けた部員や、関与していない部員にとっては、対外試合が1年間もできないというのは大きな不利益です。



憲章前文は、学生野球は教育活動の一環であり、他校との試合や大会への参加等を通じて一層普遍的な教育的意味を持つ、としています。また憲章には、『学生は、合理的理由なしに、部員として学生野球を行う機会を制限されることはない』との規定もあります。



そうした部員にとって不利益が大きすぎないか、対外試合禁止の期間が長すぎないかについては、議論の余地があるように思います」



そうした人たちを救済するルールは、ないのだろうか?



「たとえば、高野連の『大会参加者資格規定』では、転入生は、転入から満1年経過しないと大会への参加資格が得られないとされています。ただ、例外として、一家転住などによりやむを得ず転入したと認められ、高野連の承認を得た場合にはこの限りではないとされています。



もし、済美高校から、いじめ・暴力行為に一切関与していない生徒が他校に転入し、大会への参加を求めた場合には、この例外規定を柔軟に解釈して救済すべきではないかと思います」



秋山弁護士はこのように提案していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。原発事故・交通事故等の各種損害賠償請求、企業法務、債務整理、契約紛争、離婚・相続、不動産関連、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:たつき総合法律事務所
事務所URL:http://tatsuki-law.org/



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  • この連帯責任的な発想が隠蔽体質を生む。所属や従属に重きを置くのではなく、やらかした個人と指導者への罰則を強化すべき。己がやったことの責任は己にとらせるのが教育
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