ロシアの首都モスクワでこのほど、女性の胸部を大きく印刷した「広告トラック」があらわれ、話題になっている。「おっぱい」に気をとられた男性ドライバーたちが脇見運転をしてしまい、1日に500件以上の交通事故が起きたという。
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英デイリー・メールなどによると、この「おっぱいトラック」は広告代理店が企画した。トラックの荷台側面に、女性の胸部の巨大な写真がプリントされている。乳首にあたる部分は別の広告をかぶせて、見えないように隠したという。
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結局、トラックは地元警察により、走行禁止となった。なんともお騒がせなトラックだが、日本の繁華街などでも、広告トラックをよく見かける。日本では、今回のようなキワドイ広告を使うことに問題はないのだろうか。屋外広告の法律にくわしい平岡将人弁護士に聞いた。
「自動車や電車などの外面を利用した広告物は、条例によって規制されています」
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平岡弁護士はこう切り出した。どのような規制があるのだろうか。
「たとえば東京都の場合、乗用車と貨物自動車、電車などのカテゴリーにわけて、許可や登録の要否などが細かく規定されています。
それぞれに共通しているのは、『運転手の注意力を著しく低下させるおそれのある広告物』や『運転手をげん惑させるおそれのあるような、発光・蛍光素材が用いられたり、反射効果のある広告物』の表示・設置が認められていないことです。
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また、『景観や風致を害するおそれのある広告物』を表示・設置することもできません」
では、今回の「おっぱいトラック」の判断基準はどうなるのか。
「形式的には、モノを運ぶ貨物自動車の場合、その事業や営業の内容を表示するものであれば、許可を受けて走行することが可能です。
路線バスや電車、ハイヤーなどに限っては、許可を受けて第三者の広告を表示できますが、今回のトラックはいずれにも該当しないので、貨物自動車でない場合は、広告宣伝車の扱いとなります。広告宣伝用自動車としての登録が必要になるでしょう。
また、内容については、『運転手の注意力を著しく低下させる』あるいは『景観や風致を害する』と判断されれば、規制にかかるでしょう」
今回モスクワで起きた事故では、発生した損害について、広告代理店が一部を補償すると発表したという。もし日本で同じような事故が起きたら、その責任はどうなるのだろうか。
「その広告によって、運転手の脇見運転が誘発され事故が起きたという因果関係が認められれば、広告会社が賠償責任を負う可能性があります。
一方で、自動車の運転手には基本的に、高度な安全注意義務が課されています。誰もが見てしまうような広告物でない限り、因果関係が否定されて、広告会社が事故の賠償責任を負うことはないでしょう」
ただ、ロシアで500件もの事故を誘発したのだから、「おっぱいトラック」の場合は因果関係があるのではないか。
「誰もが見てしまうものかと言われると判断の分かれるところでしょうが、ロシアと同様に事故が本当に多発するのであれば、事故との因果関係があると認められる可能性もあるでしょうね」
もし「おっぱいトラック」が走っていたら、脇見せずに運転する自信はあるだろうか。さすがに、この広告のせいで事故を起こすのは勘弁してほしいところだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
平岡 将人(ひらおか・まさと)弁護士
中央大学法学部卒。平成26年8月より全国で7事務所を展開する弁護士法人サリュの代表弁護士に就任。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件であり、屋外広告看板業者の顧問なども手がける。
事務所名:弁護士法人サリュ大宮事務所
事務所URL:http://legalpro.jp/
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