<民法大改正>「約款」のルールを「明文化」 理不尽な消費者トラブルを防げるか?

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2015年02月20日 15:31  弁護士ドットコム

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1896年に民法が制定されて以来初めて、契約などのルールを定めた「債権」の規定が抜本的に見直されようとしている。法務大臣の諮問機関「法制審議会」の民法部会は2月10日、債権に関する規定の改正要綱案を取りまとめた。


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ポイントの1つが「約款」に関する項目だ。約款とは、保険や運送など大量の顧客と取り引きする際に結ばれる定型的な契約条項のことだ。インターネット通販などでは、消費者が「約款」の内容や存在を知らないために、企業とトラブルになるケースが相次いでいたが、民法には規定が存在しなかった。



今回の民法改正の要綱案で「約款」はどう定められたのだろうか。消費者にとって、どんな変化があるのか。大村真司弁護士に聞いた。



●定型的な約款の「有効性」が明文化された


「約款は今の社会に必要不可欠ですが、今の民法では、明文で規定されていませんでした。今回の改正は、約款の有効性を定めるとともに、一定の規制を置くものです」



大村弁護士はこのように切り出した。今回の改正要綱案には「定型約款」という項目が設けられ、そこでくわしい説明がされている。ポイントはどういった点だろうか。



「契約は当事者双方の合意によって成立するのが原則ですが、今回の民法改正では、『約款の内容確認を行えば、顧客が理解しているかいないかにかかわらず有効』としました。これが改正の1つ目のポイントです。



この点は、一見すると、顧客に不利なように思えるかもしれません。ただ、現在も法解釈によって、約款は基本的に『有効な合意』として扱われています。遅ればせながら、約款の有効性を明文で規定したことになります。



さらに、今回の改正で『内容確認の機会』を与える必要を明示したことには意味があるでしょう」



●「非常識な約款」を作りにくくなる


ただ、どんな内容の約款でも有効としてしまうと、業者のやりたい放題になってしまうのではないだろうか。



「そこで、今回の改正では『そもそも顧客の利益を一方的に害する条項は、約款としての拘束力がない』としました。これが改正の2つ目のポイントです。



また、『約款の一方的な変更は、顧客の利益になるか、契約の目的に反しない場合に限って許される』などの制約を課した点もポイントです」



今回の改正で、消費者トラブルを防ぐことはできるのだろうか。



「基本的には、現在の常識的な運用を明文化したもので、積極的に顧客を保護しようという改正ではありません。



ただ、明文化により、業者に注意を促す効果はあり、常識から外れた約款が作りにくくなったとはいえるでしょう」



大村弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
広島弁護士会所属。日弁連消費者問題対策委員会委員、広島弁護士会消費者委員会委員、弁護士業務改革委員会副委員長、国際交流委員会副委員長、子どもの権利委員会委員
事務所名:大村法律事務所
事務所URL:http://hiroshima-lawyer.com



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