不明な点の多かった、人が顔を正しく認識するメカニズム
画像はプレスリリースより人の顔を認知する機能は、言語認知と同様に、社会生活を送るうえでとても重要な機能のひとつです。ところが、どうして人の顔を正しく認識できるのか、そのメカニズムの詳細はこれまで十分に解明されていませんでした。
そこで、自然科学研究機構生理学研究所の松吉大輔研究員、柿木隆介教授ら研究グループは、顔を認識している時の人間の脳の活動を詳細に調べる研究に取り組みました。
その結果、これまでの研究では、顔認知に重要ではないと思われていた脳内の活動が、じつは正しく顔を認知するのにとても大きな役割を果たしていることが判明。正常な顔認知には、顔認知に直接関連していない脳部位を抑制しつつ、顔認知に特化した脳部位だけを活動させるようにすることが必要だと、世界で初めて明らかになったのです。
顔認識の部位だけをうまく活動させられるかがカギ
人は物の認識が得意な動物です。明るさなど見え方が違ってもそれが何かという判断が容易につけられるため、少し遠くからでも人の顔や表情がわかります。しかし、逆さまの顔を見るとき、たとえば目や唇の形が奇妙になっていても判別できない、判別に時間がかかることがあります。
研究グループは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、なぜこのような現象が起こるのかを調べました。まず、ヒトの脳のどの場所が活動しているか、さらに信号の流れをモデル化することで、脳内で視覚情報がどのように繋がり、伝わっているかも明らかにしました。
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ヒトの脳は顔認識に関わる部位と、物体認識に関わる部位にわかれています。研究の結果、正位置の向きの顔の場合、物体認識に関わる部位の活動が抑えられるので「物ではなく顔」と分かりますが、逆向きになると抑制されないので顔を物として処理していることがわかりました。
また、このような抑制の一方で、顔認識を行う脳内の複数の領域間の繋がりが、認識能力のレベルを左右していることも判明。顔認識の部位だけをいかにうまく活動させるかが重要だということがわかったのです。
脳の部位間の抑制と繋がりが顔認識の鍵であるという同研究では、正常な顔認識ができにくいとされる相貌失認といった疾患の原因解明にも役立ちそうです。(笹田久美子)
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