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生身の人間こそ行っていないものの、火星上では人間が送り込んだ探査車が日常的に様々な調査を遂行している。ただ動きまわって映像を撮るだけではない。物質の分析すら、その場でやってしまうのだ。
そんな火星探査車『キュリオシティ』があらたな調査結果を報告してきた。NASAのウェブサイトによれば、窒素化合物『硝酸塩(N03)』を発見したというのだ。これはなにを意味するのか。
生物にとって窒素は不可欠
硝酸塩は生物組織によく利用される形態の窒素を含んでいる化合物だ。これが発見されたということは、かつての火星は、生物が存在できる環境にあったということの裏付けになるという。
窒素は生命に欠かせない要素で、DNAやRNAを作ったり、髪や爪などの組織を形成したり、化学反応を促進したりする働きがある。
しかし、地球においても火星においても、大気中の窒素は、窒素ガス(N2)の形態で存在している。2つの窒素分子が結合した状態だ。これは、非常に強固な安定した結合なので、ほかの分子等とは容易には反応しない。生物に必要な反応を行わせるためには、窒素分子を分離させるか“窒素固定”させないといけない。
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地球上には、大気中の窒素ガスを窒素固定させることができる微生物がいて、生物の新陳代謝に必要な役割を担ってくれている。いっぽうで、落雷のような自然現象によっても、少量の窒素固定は起こる。今回火星上で見つかった硝酸塩(N03)というのは、まさにその窒素固定によってできる物質で、様々なほかの原子や分子を結合する性質を持っている。
![mars](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/03/mars-690x463.jpg)
この硝酸塩はどうやってできたのか?
この硝酸塩が生物の活動によって作られたものであるという証拠はない。現在の火星は、われわれが知っているような生物の存在に適した環境ではない。NASAの研究チームは、大昔の火星において、隕石の落下や落雷などの生物によらない現象によってできた硝酸塩だと考えている。
しかし、干上がった川底のような地形や、水が液体として存在していたことを示す鉱物の発見など、大昔の火星は現在よりも生物が存在しやすい環境だったことがわかってきている。さらにキュリオシティは、火星の『ゲール・クレーター(キュリオシティが活動している場所)』において、数十億年前に液体の水や有機物など、生物に必要なほかの要素が存在したことも発見している。
「生物によく使われる形態で窒素が発見されたということは、大昔の『ゲール・クレーター』は生物が存在しやすい環境だったという説をより補強してくれるものです」とNASAゴダード宇宙飛行センターの研究者Jennifer Stern氏はいう。
かつての火星に生命が存在したのかどうかはもちろん興味をひく話題だ。いっぽう、生命誕生のプロセスは地球上においてもまだ解明されていない。火星上で生命の痕跡が見つかれば、地球においても、どのようにして生命が誕生したのかを推測する大きな手がかりになる。
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われわれはいずれ火星を通して生命誕生の仕組みを知ることになるのかもしれない。