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『Ingress』は地域活性化に効果があったのか? 昨年、いち早く『Ingress』を観光地のPRに活用した岩手県庁Ingress活用研究会が報告書を発表した。
『Ingress』を地域活性化に活用
『Ingress』についてはご存じのひとも多いだろうが、念のために説明しておこう。Googleが運営しているスマートフォン用の無償ネットゲームだ。特徴的なのは、プレイヤーはゲーム内で“ポータル”として指定されている建物や名所旧跡などの場所に実際に足を運び、そこでアイテムを獲得、そこを頂点として陣取りを行うという点だ。つまり、プレイヤーは外出して“その場所”に行かないと遊べないのだ。
これを観光客誘致に活用しようと考えた自治体があらわれたが、岩手県庁はその先駆けだった。ポータルをめぐるイベントを行うとともに、県内の名所旧跡を積極的にポータル申請し、それが認められてポータルを数多く設置することに成功して、その後もイベント等を継続している。
![スクリーンショット 2015-03-31 20.22.45](http://nge.jp/wp-content/uploads/2015/03/d784630b30c36600b6a76c6f9b605d02.png)
報告書のなかでは、“イベントで得られたもの”として、ガイドがついた街歩きの人気の高さ、地元の面白そうなミッションへの関心の高さに手ごたえを得たとしている。また、地元プレイヤーによる独自企画や地元イベントにちなんだミッションへの集客効果も大きかったとしている。
いっぽうで、地元店舗等とのコラボは、企画商品が売れるという一定のメリットはあったようだが、「今後なお検証が必要」、「地元イベントとのコラボは地元イベント側に明確な効果があったかどうか不透明」といった記述もみられる。
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仮説は正しかった!
このプロジェクト、そもそもの仮説は
県内の観光地等をポータルにすることによって、ゲームプレイヤーや一般観光客にとって、岩手を訪れる楽しみが増え、また、より多くの観光地を訪れてもらうことができるのではないか?
というところからスタートしている。それに対する回答としては「YES,absolutely!」と明確に肯定している。
報告によれば、
(1)“観光”の創造性の拡張
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ゲームと訪ね歩くことの融合による新しい観光・交流が生まれる。
(2)地域の再発見
自分達の地域に、意外かつ貴重なお宝がある! と気付く。足を運ぶきっかけ。
(3)官民協働の促進
ゲームコミュニティなどとの連携が新しい協働スタイルを生む。
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(4)新たな情報発進、O2O(online to offline)
ネット世界と現実世界を繋ぐ『Ingress』、“Ingressを通じて岩手を広報している”ということ。絞り込んだ層へのダイレクトな発信。ひとりひとりを岩手のファンとして取り込めば、口コミ拡散が期待できる。『Ingress』もサブカル分野への進出のひとつ。
(5)地元への経済効果についてはいまだ未知数
現状はゲームにはまった人が中心。一般観光客ほどには消費は大きくない?
としている。岩手県では春シーズンに向けガイドブックの続編を登場させるなど、今後も取り組みは続けていくようだ。
筆者も地元で『Ingress』をやっていると、「あ、そういえばこんなところに地蔵があったんだ」などと再発見することがある。そのいっぽうで、『Ingress』に熱中するとポータルがなんであるかはどうでもよくなり、次のポータルへ急ぐようにもなる。そういう意味では、あまり『Ingress』に集中するよりも、歴史や地理の案内と融合させた企画イベントなどのほうが、名所旧跡のPRにはいいだろう。
また、たとえば東北は食べ物が非常においしい。最初は『Ingress』目的で訪れたとしても、食べ物のおいしさを知ったら、また行きたくなるというリピーター客を獲得できたりするかもしれない。
『Ingress』自体が外出し、移動して楽しむというユニークな特徴を持っているわけだが、これは現実世界のほかの企画と非常に親和性が高い。Ingressの人気がいつまで続くかはわからないが、今後またこのような特性を持ったゲームなどが登場するかもしれない。Ingressがゲームと現実を融合させたように、行政が民間と融合していくことでも、今後さらに楽しいローカルイベントが期待できる。