【コラム】 「鬼太郎」を救った人々の愛

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2007年11月13日 11:11  よりミク

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よりミク

 「まんがの日」である11月3日、さわやかな秋晴れの空の下、東京都調布市にある天神通り商店街で「鬼太郎像復活」除幕式が催されました。幅5m足らずの狭い通りに市民やファン、関係者などがひしめき合う中、「ゲゲゲの鬼太郎」のテーマ曲とともにイベントは華々しくスタート。式の列席者が座る簡易テントの脇には、白いベールで覆われた鬼太郎像が、今か今かと「出番」を待ちわびています……。  なぜ「像復活」なのか。それは今年4月、天神通り商店街に設置されていた高さ約50cmの鬼太郎像が何者かに盗まれ、また、子泣き爺像には穴が開けられるという事件があったから(被害額は2体で120万円)。6月下旬に現場を訪れた際には、像が置かれていた台座にもぎ取られた痕が生々しく残っており、鬼太郎の絵とともに「僕を探して下さい!」というメッセージが貼られていました。子泣き爺像も撤去されてしまい、鬼太郎で盛り上がりを見せていた商店街に暗い影を落としたのです。
もぎ取られた痕が生々しい
もぎ取られた痕が生々しい
 そもそも天神通り商店街に鬼太郎像が設置されたのは、今から10年以上も前のこと。漫画「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木しげる先生が近くに事務所を構えている縁があり、町おこしの一環として鬼太郎2体と子泣き爺のほか、ねずみ男、一反木綿に乗るねこ娘の計5体が通りに並べられました。調布の街を悪い妖怪から守る「守り神」として、街の人々に愛され、調布で暮らす子供たちとともに育まれてきたのです。今回の盗難事件に商店街会長の土田衛さんは「このような悲しい出来事が二度と起こらないことを祈っています。鬼太郎像はファンだけのものではなく、みんなのものです。持ち去ることはやめてほしい」と切実に訴えます。土田さん自身、一度は再建を諦めたそうですが、全国から寄せられた数千件にも及ぶ激励の電話に後押しされ、募金を呼びかけることに。そして、事件から半年以上が経過した今、やっと像の復活が実現したのです。
子泣き爺像は塗り壁像にリニューアル
子泣き爺像は塗り壁像にリニューアル
左:会長の土田さんはアニメがきっかけで鬼太郎ファンに 右上:商店街からは募金への感謝が 右下:商店街の多くのお店が像復活を祝う
左:会長の土田さんはアニメがきっかけで鬼太郎ファンに 右上:商店街からは募金への感謝が 右下:商店街の多くのお店が像復活を祝う
 像再建の陣頭指揮をとったのは木村正明さん。水木先生の生まれ故郷、鳥取県境港市で1995年から鬼太郎グッズの製造事業に携わっている、いわば鬼太郎グッズのエキスパートです。木村さんは「新しい鬼太郎像は、鉄の棒で補強してあります。鬼太郎の頭の上にのっている目玉のおやじも、頭から下を鬼太郎の髪の毛に隠すようにして、もぎ取られないように工夫を施しました」と自信満々。また、このような困難を乗り越え、諦めないことが大事だと話します。「十数年前の鳥取県境港市は、商店街に観光客がほとんど訪れない街でした。でも、鬼太郎像を設置してから、観光客が増え始め、昨年は90万人弱であった観光客が、今年は130万人ぐらいにはなると見込まれています。これもすべて鬼太郎とその仲間たちのお陰なのです。調布の街も境港と共に、鬼太郎の街として発展をしてほしい」。
鬼太郎は子供にとっての「水戸黄門」と語る木村さん
左:鬼太郎は子供にとっての「水戸黄門」と語る木村さん 右上:盗まれにくいように胴体は髪の毛の中に 右下:この日は鬼太郎グッズの販売も
 調布市では、鬼太郎像だけでなく、鬼太郎をモチーフにした店舗「鬼太郎茶屋」、鬼太郎のキャラクターを描いたコミュニティーバス、プロサッカーチーム「FC東京」とのコラボレーションなど、様々なかたちで鬼太郎と関連した企画が推進され、街と鬼太郎との繋がりをアピールしています。今回の鬼太郎像盗難事件は忌まわしい出来事に違いありませんが、前向きに考えれば、街と鬼太郎の「絆」を深めるきっかけになった、と言えるかもしれません。  ちなみに、当の水木先生は、鬼太郎像の復活以上に、活気がなくなっている商店街の未来を気にかけているのだとか。何とも泣ける話じゃないですか。(編集/執筆:mixiニューススタッフ)
右は鬼太郎茶屋の壁面に描かれた鬼太郎とねずみ男
左上:バスの車体にも鬼太郎ファミリー 左下:FC東京では毎年鬼太郎デーを開催している 右:鬼太郎茶屋の壁面に描かれた鬼太郎とねずみ男

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