教科書の書き換えレベル?生命誕生はアミノ酸と転移RNAの両方がカギ

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2015年06月17日 06:20  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

生命の起源の謎が解明されつつあるのかもしれない。地球のはじめにあった単純な元素がアミノ酸になり、これがやがて単細胞を作りだすタンパク質になった。そして単細胞は時間をかけて植物や動物への進化していった。これが私たちが学校で教わった生命誕生の壮大な物語だ。

近年の研究はどのように『原子スープ』がアミノ酸の基礎的要素を作りだしたかを明らかにしつつあり、また最初の単細胞が進化のルートを辿ったかについても科学的コンセンサスが広がっている。しかし依然として謎なのが、アミノ酸から最初の単細胞のタンパク質へのジャンプはなぜ起こったのか、ということだ。

このほど、ノースカロライナ大学の研究者Richard Wolfenden氏、Charles Carter氏のふたりは、4億年前に起こった基礎的要素から生命への移行に光を当てる新たな研究を発表。その成果は科学専門誌『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載され、大きな注目を集めている。

「RNAワールド」説の立場を取らない2人の研究者

原始地球での生命の誕生を説明する有力な仮説のひとつが『RNAワールド』説と呼ばれるもので、現在は情報の伝達、運搬、他の遺伝子の制御といった役割を持つこの核酸が、ペプチドを作るために原子スープの中からひとりでに生まれ、それが単細胞さらにはより複雑な生物へと進化したと考える説だ。

しかしWolfenden氏とCarter氏はRNAは単独では働かないと考えてきたという。新発見は数億年前に生命がどのように進化したかを説明するストーリーに新たなレイヤーを加えることになったようだ。

アミノ酸、転移RNAの両方からアプローチ

Wolfenden氏が進め、『PNAS』誌に掲載された最初の論文は、20のアミノ酸の極性とサイズを描きだした。この作業は、アミノ酸が折りたたまれたタンパク質の中でどのように振る舞い、4億年前の高温な地球でもこの関係が分解されなかったことを説明するために決定的に必要なことだという。

一方、同誌に載ったCarter氏の論文は、転移RNA(tRNA)に適合したアミノ酸を結合させる酵素「アミノアシルtRNA合成酵素」がどのようにtRNAを認識するかを研究。結果的に、tRNAの一方の側はアミノ酸のサイズや形によって対象を区分し、反対側は極性によって結合が可能になっていることが分かったという。つまり、tRNAはアミノ酸がタンパク質を作るための動きを指示していたと考えられるのだ。最初期のタンパク質は、必ずしも独自の形状に折りたたまれず、現在あるようなユニークな構造への進化は遅れて起こったようだ。

2人によると、核酸の塩基配列がタンパク質を構成するアミノ酸配列へと翻訳される際に、それぞれのアミノ酸に対応する塩基配列コドンの中間段階を調べることで、どのように単純な材料の中から複雑な生命が誕生したかを解明できるとしている。引き続き、どのような展開を見せるか注目が離せない分野だ。

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